2024年03月29日( 金 )

AERA「銀行の寿命はあと7年」を検証する

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 週刊誌「AERA」は、1月22日発売号で「銀行の寿命はあと7年」と題した特集を組んだ。「このまま勤めていて大丈夫なのか」「あまりにも非効率」「硬直した社内体制に未来はない」……。解説記事や若手行員による座談会で、メガバンク、都市銀行、地方銀行が危機に直面していると報じている。
 そこで今回は、数字の面から「銀行の寿命」について検証してみたい。

都道府県ごとの人口推移

 全国の2017年10月1日現在の推計人口は1億2,675万人。2015年の国勢調査は1億2,709万人であり、2年間で約34万人減少。高齢化が進んでおり、今後さらに加速度的に人口が減少していくものと予想されている。

これらの表から見えるもの

 地区別で見ると、関東は4,328万人(28万9,000人増)となっているが、うち東京都が22万7,000人増加。東京オリンピックが2020年7月24日から8月9日までの17日間の日程で開催される予定になっており、東京一極集中はさらに進むものと見られる。同じ関東でも周辺の茨城県、栃木県、群馬県の人口は減少しており、地域間格差も生んでいるようだ。

 関東以外の近畿、東海、九州・沖縄、東北、信越・北陸、中国、北海道、四国の8地方は減少。47都道府県のうち39府県の人口が減少していることになる。
 人口が増加しているのは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、福岡県、沖縄県、滋賀県(40人増)の1都7県しかない状況となっている。

 このなかでとくに目を引くのは福岡県で、8,782人増の511万338人。それは膨張を続ける福岡市の人口増によるもの。【表2】から見えるように、政令指定都市の福岡市の人口は15年10月1日の国勢調査では153万8,681人。17年10月1日現在の人口は156万7,189人で国勢調査比2万8,508人(前年比1万3,411人)増加している。その後も人口の増加は続き、19年1月1日現在157万485人(前年比1万4,116人)となっている。一方同じ福岡県にある政令指定都市の北九州市の人口は▲1万640人で最下位の20位となっており、衰退が著しいことがわかる。

地方における地銀分布図

この表から見えるもの

 第一地銀は64行。第二地銀は41行。全国に地銀は105行あり、日本の人口1億2,675万人に対して1行あたりの人口は約120万人となる。地域別で見ると120万人を超えているのは関東、北海道、近畿、東海の4地域となっているものの、うち東海地域は125万人でかろうじて超えているのが現実だ。
 120万人以下は中国(81万人)、九州・沖縄(68万人)、信越・北陸(67万人)、東北(58万人)、四国(47万人)の5地域となっており、この地方の金融統合は『待ったなし』といえそうだ。
経営統合の先陣を切ったのが九州だった。

この表から見えるもの

 ふくおかFGと十八銀行が経営統合を表明したが、AERA(18年1月22日付)報道の通り、公正取引委員会の反対で無期延期となっているが、実質的に破談となった。一方信越・北陸地域では新潟県の第一地銀同士である第四銀行(新潟市)と信越銀行(長岡市)との経営統合は半年延期となったものの、10月1日(予定)で認められることになったのだ。

 その明暗を分けたのは以下の数字であった。長崎県において十八銀行と親和銀行が合併すると、その比率は預貸金で90%前後。経常利益・当期純利益は95%前後となり、ほぼ独占状態となるのがわかる。一方第四銀行と信越銀行の合併の場合は70%台が多いのが目につく。現在1県1行の銀行は都市部を中心に8県あるが、この数値の差が、公正取引委員会が承認するかどうかの基準となったことで、経営統合を予定している銀行にとっては朗報であり、今後はその基準を取り払うことも視野に入るのではないだろうか。

経営統合のひな型に

 2020年春をメドに第四銀行と北越銀行が出資して共同持株会社「第四北越フィナンシャルグループ」を新設し、その傘下に両行が子会社として収まる。その後、両行を合併させ、経営効率を高める計画。持株会社の本店は長岡市とし、主な本社機能は新潟市に置く。会長に北越銀行の荒城哲頭取、社長には第四銀行の並木富士雄頭取が就く。出資比率などは両行で今後協議するとしているが、これが「ひな型」となり、県内銀行同士の経営統合による合併が急ピッチで進むことになりそうだ。

 AERAは「銀行の寿命はあと7年」と報じている。すべての地方銀行はなくなることはないものの、経営統合や合併によりその数が大幅に減少していくことは間違いないようだ。

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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