• このエントリーをはてなブックマークに追加
2016年04月11日 16:14

目前に迫る「2025年問題」~介護保険が維持できなければ「日本沈没」(前)

 介護保険制度について調べると、まず介護費用が膨れ上がっていくスピードに驚かされる。制度が始まった2000年度は3.6兆円だったが、09年に7.4兆円と10年足らずで2倍超となった。16年度予算では10.4兆円と3倍以上だ。一般会計歳出総額は96兆7,218億円となっており、介護給付費だけで実に1割強を占める。福岡県の担当者も「社会保障費の増大は財政を圧迫している」として、このままの状況が続けば破たんしてしまうと危機感を露わにした。

 介護給付費が増大している理由が少子高齢化であることは言うまでもないが、高齢者が増えるといっても、それはなだらかな上昇曲線を描くというわけではない。年代別人口比率も考え合わせる必要がある。つまりある年代に人口が集中していれば、一気に膨れ上がるインフレーション現象が起こってしまう。代表的なのが団塊の世代。彼ら全員が75歳に達する2025年には総人口の4人に1人が後期高齢者となり、社会保障費が急増すると懸念されている。いわゆる「2025年問題」だ。

20160411_010 「2025年問題」に対する行政側の危機感は強い。人が年を取るのは避けられないことだけに、社会保障費を減らすことは不可能だからだ。なるべく要介護認定を受けないように、健康を維持させるという消極的対処に出ざるを得ないのもやむをえない。一方、15年には介護保険の費用負担が見直された。「負担を重くしたというより、公平性の維持を図ったという内容」と県の担当者は説明する。利用者負担の原則1割は変わらないが、一定以上の所得がある人は2割に引き上げられた。お金を持っている人はもっと利用料を払ってください、ということだ。低所得であれば1割は維持されるので、全体で負担が上がったということはできない。

 福岡市の65歳以上人口は16年1月末現在で30万5,910人。高齢化率は20.4%で、4人に1人が年金受給者ということになる。国の推計では15年の全国高齢化率は26.8%となっており、それに比べれば低いとは言えるものの、だからといって喜んでいられる状況ではない。福岡市の要介護認定者は6万2,277人で認定率は20.4%。つまり高齢者の4人に1人、単純に計算すると全体の8人に1人が介護サービスを利用していることになるのだ。これは決して遠い距離ではない。「2025年問題」を待つことなく、介護はより身近に迫りつつあるのだ。

 介護給付費のうち、施設の利用費はどうしても高額になる。そこで国は施設から在宅介護に主流を変えようと動き出した。しかし老老介護の問題はまだ解決されないまま、担い手は現役世代に移ろうとしている。

 そこで新たに浮上したのが介護離職だ。国も2016年度予算のポイントのトップに「介護離職ゼロ」を掲げている。一億総活躍社会の実現をうたっているが、裏返せば事態はそれほどまでに深刻だということを示す結果となった。福岡市でも今夏には介護サポートセンターを設置し働く人の介護を支援することにしているが、抜本的な解決方法とはとても言い難い。

 一般的に高齢者の親を抱えることになるのは40代以上。企業にとっては主力、または中核となる年代である。最も活躍しなければならない人たちが親の介護のために職場を離れるということは、企業にとっても大きな損失である。行政に不満をぶつけるばかりではなく、自らも身を切る努力をしなければ、この社会は持たなくなる時代を迎えたのだ。

(つづく)

【平古場 豪】

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年01月25日 17:59

【立憲民主党/稲富修二】選挙で国民の支持を得るために何が必要かNEW!

 福岡2区選出で立憲民主党の稲富修二衆議院議員(50)が23日、データ・マックス本社でインタビューに応じ、次期総選挙に向けた抱負を語った...

2021年01月25日 16:30

【2/14】「令和」の考案者、中西進氏講演会を開催~太宰府市史跡指定100年記念

 太宰府市の大宰府跡、水城跡が国からの史跡指定を受けて本年で100周年を迎える。同市はそれを記念して、2月14に「令和」の考案者とされる中西進氏を招いて講演会を開催す...

2021年01月25日 16:16

自民党厚生労働部会が健康保険の法改正案を審査~後期高齢者給付を1,880億円削減

 自民党厚生労働部会は1月21日、全世代対応型の社会保障制度を構築するため、健康保険法などの一部を改正する法案の審査について議論を行った。給付は高齢者中心、負担は現役...

2021年01月25日 15:44

【基山町】トラスト不動産開発と連携し、子育て世代の移住・定住を促進。保育施設を完備したマンションを建設

 佐賀県基山町は25日、トラスト不動産開発(株)と「まちづくりに関する協定」を締結した。トラスト不動産が基山町において18年ぶりとなる分譲マンションを建築することを契...

2021年01月25日 15:06

【特別インタビュー】再分配機能の強化で貧困をなくす コロナ禍で「小さな政府」は終焉(前)

 『前の安倍政権も菅政権も、コロナ対応に関して失政続きだったと思います。冬になれば感染が拡大するのが明らかだったにも関わらず、ほとんど準備をしていなかったことなど、両...

2021年01月25日 15:00

ネットバブルの寵児、折口雅博氏の自伝『アイアンハート』を読む~逃避先の米国で、あのトランプ前大統領の知遇を得て再起!!(1)

 ネットバブルの寵児が戻ってきた。人材派遣大手グッドウィル・グループ(株)元会長・折口雅博氏が自伝『アイアンハート』を出版した。副題は「ゼロから12年で年商7,700...

2021年01月25日 14:00

シェア争いが激しい韓国フードデリバリー市場(前)

 韓国人の日常生活は、コロナ禍で変化を余儀なくされている。そのなかでも、飲食店利用の減少と在宅時間の増加により、食生活に大きな変化が起こり、フードデリバリーアプリ市場...

2021年01月25日 13:34

【特集】これでいいのか産廃処理(2) 「正直者が馬鹿を見る」中間処理業界

  安定型処分場で埋立できる産業廃棄物(産廃)は、“安定型5品目”と呼ばれる、「廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず、がれき類」など。廃...

2021年01月25日 13:00

【長期連載】ベスト電器消滅への道(7)

 ベストはなぜ負けたか。ヤマダ電機、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、コジマ、エディオンなどの競合量販店が九州に食指を伸ばした、デフレと不況で消費者の購買意欲が薄れた、そ...

菅義偉首相の致命的欠陥とは

 1月21日、英紙タイムズ電子版が、ある与党関係者の話として、政府が非公式に新型コロナウイルスの影響で東京五輪の開催を中止にする必要があると結論付けたと報じた。これに...

pagetop