2024年04月19日( 金 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~若手の経験

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 今年のプロ野球は、開幕時点で5人の新人選手が出場した。久々に、こんなにも多くの選手が出てきたということは、セ・パ共に選手が入れ替わりのタイミングなのであろうか。
 各チームのなかで、多くの若い選手がこれからどんな経験を積むのか、そしてその場面に出会えるのかを考えてみると、楽しみになる。

baseball 経験の少ない若手選手に、開幕からのこの時期に訪れるのが、15試合が終わると一通り他チームと当たり、相手に自分のデータが伝わる――ということではないだろうか。今までは、相手スコアラーからの映像や見た目だけのデータだった。ところが今度は、実戦で相手捕手、対戦投手に対し、「どんなかたちで打ってくるのか?」「どこを狙ってきているのか?」「初球からくるタイプか?待つタイプか?」「走者を置いた場面ではどうか?」――など、いろいろなポイントを晒さなくてはならない場面を経験する。そうしたなかで、自分の得意なボールができてきて、苦手なボールも見られるようになり、相手にデータを与えることになる。また反対に、相手のデータも多く入ってくる。まず投手のボールの出てくる角度、変化球の曲がり方、落ち方、ストレートのタイミングの取り方、初球の入り方、勝負球。そして捕手の傾向。捕手には1人ひとり癖がある。同じ投手でも、同じ配給でリードすることはない。このようなところが、試合のなかで経験できる。
 これは、投手にも言えることで、得意なタイプの打者が生まれるかと思えば、苦手なタイプが出てきて、頭を痛めることになる。そうした経験で、相手打者をしっかりと見ることができ、研究することで、自分の成長を助ける時間を持つことができるということだ。

 そんな若手を探してみると、一番多く感じるのが阪神で、開幕から1番打者として活躍している高山選手。文句のつけようのない活躍だ。ただ、大学時代は春と秋のシーズンだったのが、プロになると春から秋まで毎日のようにある試合に、どこまで身体が持つか――。
 最近、先発を離れたが、横田選手、江越選手も期待が大きい。そして陽川選手が近日中に1軍に来るようだ。これだけの野手が一度に上がって来ると、昨年まで試合に出ていた選手たちにも良い刺激になるだろう。問題は、ここからどこまで1軍に止まることができるかだ。
 前田投手の流出で心配された広島にも、ドラフト1位の岡田投手、もう勝ち星を挙げた横山投手、オスカル投手、そして野手では1番に定着しそうな田中選手。今は2軍に行ったが、西川選手は期待が大きいだけに、試練を受けることだろう。
 巨人では、3年目を迎える小林捕手がどこまで頑張れるか。阿部選手が復帰してからが勝負になるだろう。昨年頑張った立岡選手も、1年間戦うという経験をすることになるだろう。2年目の戸根投手が真価を問われる年になりそうで、田口投手、今村投手とここは入れ替えの時期が見える。期待の櫻井投手が早くも故障に見舞われているが、どう対処するか――。
 スタートダッシュに失敗したDenaには、今永投手、戸柱捕手のバッテリー、期待の石田投手、開幕戦から3塁を任された白崎選手がいる。
 中日では、福投手が山本投手の後を継げるか――。また、開幕試合で3番に抜擢された遠藤選手もいる。
 ヤクルトの原樹理投手からも、目が離せない。

 パ・リーグでも、楽天のオコエ選手はキャンプやオープン戦では良い活躍を見せたが、さすがに公式戦では苦しんでいる。焦ることはない。しっかりと自分のスタイルを探せば良い。その楽天には茂木選手がいて、この選手はバリバリと活躍しているが、これからが勝負になるだろう。
 オリックスの吉田選手も挙げておきたい。素晴らしいスイングスピードを持っている選手で、今後が楽しみな選手ではあるが、この先、このスピードをどう使うか。これからだろう。このチームには、西野選手、大城選手という若手にもチャンスがあるだけに楽しみである。
 ロッテでは、期待の大砲井上選手がどこまで頑張るか――。
 日本ハムでは、期待の加藤投手が先日勝利投手になり、これからの活躍が楽しみになってきたが、どうだろうか。故障したが、有原投手も大きな可能性を秘めた投手であるだけに、いつ出てくるか。
 また、西武の森選手、外崎選手も頑張れるか。

 さすがに、昨年のチャンピオン・ソフトバンクには若手が入る余地がないようで、次のチャンスを2軍で待っていることだと思われる。

 これらの選手が、技術的にも精神的にも、怪我や故障にも、どこまで自分と戦うことができるか。そして、それを支えるのが体力である。どれだけ素晴らしい技術を持っていても、身体が動かなければ使えないということで、最大の敵は故障である。アマチュア時代ではシーズンが短いのだが、プロ野球では準備に2カ月、勝負が7カ月という長いシーズンを戦わなくてはいけない。それを乗り越えるだけの頑丈な身体が欲しいということだ。

 プロ野球は、毎日の「勝った」「負けた」の勝負も楽しいが、若い選手がいろいろな経験をして、どう成長していくかをじっくりと眺めるのも、また楽しいものである。

 

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