2024年05月17日( 金 )

オバマ大統領が27日に広島訪問~高まる核廃絶への期待

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オバマ大統領<

オバマ大統領

 あす5月27日、オバマ米大統領が広島を訪問する。原爆を投下した国の現役大統領が被爆地を訪れるのは初めてであり、歴史的な日として記憶されることになるだろう。広島市の松井一實市長と長崎市の田上富久市長はオバマ大統領の英断を歓迎する意を表明。”ヒロシマ”に触れたオバマ大統領から、「核兵器のない世界の実現」に向けたメッセージが発せられることへの期待が高まっている。

 米国では広島・長崎への原爆投下が第二次世界大戦を終結させたとの見方が強く、戦争の長期化、とりわけ米軍の日本本土上陸作戦による兵士の戦死を未然に防いだとして肯定的に捉えられている。しかし原爆投下により多くの民間人が殺傷されたことから戦闘行為ではなく戦争犯罪ではないかとする意見もあり、歴史的な評価は70年以上経っても定まっていない。ただ米国では原爆の惨禍が一般に広く知られることに強い拒否感を示す。スミソニアン原爆展論争がその象徴的な出来事だ。

 1995年、米ワシントンの国立スミソニアン航空宇宙博物館は終戦50年を記念し、広島に原爆を投下したB29爆撃機「エノラ・ゲイ号」の特別展示を企画し、広島や長崎の原爆の惨状を写した写真や資料などもあわせて展示することにした。しかし、全米退役軍人協会などが猛反対して全米的な議論に発展。展示内容は縮小され、事実上の「中止」に追い込まれた。反対派の主張は「原爆が投下されるまでの経緯を説明しない一方的な内容」であるというものだったが、米国民が被爆の惨状に触れて核兵器に拒否感を示すようになれば、米国の世界戦略が真っ向から否定されることになりかねない。軍事力で世界の超大国として君臨してきた米国としては、核の戦略的価値こそ重要であり、そこで人道的問題は置き去りにされてきた。

広島の原爆死没者慰霊碑<

広島の原爆死没者慰霊碑

 日本側の関係者には、まだスミソニアン原爆展論争に対するわだかまりを抱えている人も少なくない。しかし、これまでありえないと思われていた米の現職大統領の被爆地訪問がオバマ大統領の「核なき世界の実現」演説で一気に現実味を帯びたことで、状況も変化した。謝罪は感情論でしかないと割り切り、まずは核保有国の元首に被爆の実相を知ってもらうことを優先する。そこが核廃絶への第一歩であるとの意識に切り替えたのだ。原爆が落とされた事実は変えようがない。世界で唯一、この悲惨な体験をした広島と長崎の使命は核廃絶のメッセージを発信することであり、オバマ大統領にはその思いを受け止めてもらいたい。

【平古場 豪】

 

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