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2016年06月08日 09:07

舛添都知事の「第三者調査」への疑問(前)

 予想通り。東京都の舛添要一都知事による政治資金「公私混同疑惑」について、第三者とされる弁護士の調査結果に落胆した人も多かったに違いない。ネット上では不満の声が飛び交い、都議会の代表質問に登壇した議員からは「せこすぎる」と非難する言葉まで飛び出した。記者会見ではついに聞かれなかった「辞任」の二文字。調査結果の評価を「有権者のご判断にお任せしたい」とするなら、速やかに辞任して都民に信を問うのが筋ではないか。政治資金の使途は「不適切なものもあったが、違法ではない」との結論ならば、舛添氏の経歴に傷はつかない。このまま押し切り、記憶が薄れた頃に知らぬ顔の半兵衛で再選。その先にはおいしい蜜であふれる東京オリンピックが待っている――。

totyou そもそも第三者による厳しい目という舛添氏の説明を、真面目に受け止めた人はどれくらいいたのだろうか。ニューヨークヤンキースのイチロー外野手は記者の質問を「第三者の厳しい目で」と冗談でかわした。遠くアメリカにいるイチローでさえ信じていなかったというのはギャグでしかない。このような火中の栗を拾うような仕事を引き受ける弁護士がいるのかと早くから不信の目が向けられていたが、会見でも舛添氏はなかなか引き受け手が現れなかったことを認めた。調査に当たった弁護士の名前を公表しなかったのは、調査に専念したいと弁護士側から要請があったためだという。確かに名前が明らかになればマスコミは総力を挙げて取材し、調査内容のスクープ合戦を始めたに違いない。しかし名前は調査内容の信頼性に対する担保でもある。難しい判断ではあるが、すでに都民からの信頼を失っていることを舛添氏本人も理解している以上、より透明性の高い方法を選ぶべきであった。

 第三者調査を依頼されたのは佐々木善三弁護士と森本哲也弁護士の2人。佐々木弁護士は東京地検特捜部副部長や京都地検検事正を歴任し、リクルート事件などの捜査を担当。2013年に弁護士に転じ、政治資金規正法違反容疑で告発されたみんなの党(解党)の渡辺喜美元代表=不起訴=の代理人や小渕優子・元経済産業相の政治資金問題の調査、現金受領問題が発覚した猪瀬直樹前都知事の弁護を担当している。森本弁護士も東京地検特捜部などに勤務し、現在は佐々木弁護士と同じ法律事務所に所属している。東京オリンピック・パラリンピックの旧エンブレム問題では、選考過程を調べる外部有識者による調査委員会のメンバーを務めた。

 記者との質疑応答で、佐々木弁護士が記者に対して”逆ギレ”した様子がネットで話題になっている。NHKの記者がヒアリングを行った関係者について質問すると、佐々木弁護士は次第にヒートアップ。「関係者と言うのは関係者」「そういうヒアリングを行うことに意味はあるのか」「あなたは事実認定を知らない」「全てヒアリングしなければならないというものではない」などと、声のトーンを上げ、早口でまくしたて始めた。佐々木弁護士は自らの発言の意味を理解しているのだろうか。調査対象から直接聞き取りを行なわず、その是非を判断することができるわけがない。これでは裁判で証拠調べもまともに行わないまま、被告からの話だけで裁判官に信じろと強弁しているようなものだ。不適切と判断した千葉県のリゾートホテルへの支出についても、会議に出席したとされる出版社の社長に会わないまま調査をしたことを明らかにしている。これには驚きだ。周辺に確認して事実と認定したというが、直接本人に聞いていないのでは、本当に会議があったのかすら疑わしくなってくる。

 調査内容もどこかピントが外れていた。舛添政治経済研究所に家賃を支払っていたことが調査対象となったのも、政治資金を還流させて自分の個人的収入にしている疑いがあったからだ。しかし、佐々木弁護士が調べたのは金額の多寡であった。家賃の金額が相場と比べて高いか低いかというのは関係ない。それが勘違いであっても、結果として問題をすり替えることになった。都民だけではなく、全国民が注目している調査である。もっと慎重に進めるべきではなかったのか。舛添氏の趣味である書が政治活動に役立ったというに至っては話にならない。確かに趣味を仕事に生かす人はいる。それは趣味を仕事にしたという意味だ。「字が書きやすいから」と舛添氏がシルクの中国服を政治資金で購入することが認められるなら、車好きの人が「早く目的地に着けるから」と高級な外国製スポーツカーを経費で落としても構わないという屁理屈と同じだ。佐々木弁護士は「中国服が墨汁で汚れていることは確認できた」としているが、それが本当に政治活動によるものかどうかを判断するために根拠になるはずがない。「スポーツカーのガソリンの残量が減っていた」から仕事に使ったとみなせるのか。

(つづく)
【平古場 豪】

 
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