「バイトなんよ」。サラリーマンの哀音
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帰宅時、偶然電車で乗り合わせたサラリーマン風の男性の口から洩れたのは、「バイトなんよ」の一言。時刻は午後8時。盗み聞きする気はなかったのだが、気になってしばらく聞き耳を立てていた。そこから分かった内容は、その男性は午後9時からバイトに出なければならないということ。その結果、約束通り家に帰ることが出来ないということ。約束の相手は、左手薬指に指輪が光っていたことから、おそらく奥さんではないかと思われる。年の頃30後半~40前半と思われるサラリーマン男性。ひと昔前なら、兼業などせずとも十分家族を養えていた年齢かもしれない。
現代の成果主義に照らし合わせれば、単純に兼業せねばならない彼自身の能力不足と、切って捨てることも可能だ。しかし、いわゆる「デフレ世代(幼少期から青春時代にかけて、失われた20年にすっぽり当てはまっている世代)」と呼ばれる筆者は、どうしてもそういう気持ちにはなれない。むろん、何でも時代や社会の所為にするつもりはないし、してはいけないとも思っている。ただ、所帯を持ち、かつ家族と一緒に過ごすということが、これからもっと難しくなっていくのだろうなと、何となく寂しく感じた夜だった。
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