2024年04月27日( 土 )

収まらない余震。国からの支援を求めていく~熊本県(4)

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激甚災害に指定国庫補助は最大で9割

minamiaso3 内閣府は5月23日、熊本地震による住宅や道路、電気などインフラ関連の被害総額が、熊本、大分両県で計約2.4~4.6兆円に上るとの試算を発表した。額に幅があるのは余震が続いているためである。内訳は住宅、工場、学校など1.6~3.1兆円、道路、港湾、空港など0.4~0.7兆円、電気、ガス、水道など0.1兆円、農林業など1.8~3.8兆円。県別では熊本県が1.8~3.8兆円、大分県が0.5~0.8兆円となっており、両県のインフラ関連資産が計63兆円であることから、被害は全体の4~7%となった。最大被害額で見ると、新潟県中越地震の3億円を上回り、東日本大震災の16.9兆円、阪神・淡路大差震災の9.9兆円に次ぐ規模である。

 熊本地震は4月25日に激甚災害法に基づく激甚災害に指定された。これにより、熊本県などの自治体が実施する復旧事業への国庫補助は1~2割程度かさ上げされる。補助率は最大で9割。つまり1割が地元負担になる。とはいえ、被害額が最大で3.8兆円に達する熊本県にとっては、それでも財政的に厳しい。県職員が被災地支援や被害の把握に追われる一方、国の災害復旧事業に向けた測量も進んでいる。国土交通省の職員が現地入りし、被害の査定がかなり簡素化された。「それだけでも助かる」というのが今の熊本県が置かれている立場だ。

国が難工事を代行高度な技術で復旧進める

 政府は5月10日、熊本地震を大規模災害復興法に基づく「非常災害」に指定。同法は13年に公布され、適用は熊本地震が初めてになる。重要なポイントは、本来地方公共団体が実施する復旧事業を国が代行できるようになること。原田課長補佐は「被害の規模が大きすぎると、県の持つ技術力だけで復旧するのは難しい。そこに国が持つ高度な技術力が投下されるようになることで、復旧事業が速やかに進むようになる」と意義を語る。しかし初めてということは今後のモデルにもなるわけであり、国に要望する案件の基準は慎重に判断しなければならない。そこに全国の注目が集まっている。
 熊本県で代行事業に選ばれたのは、熊本高森線、南阿蘇村道栃の木~立野線、農地海岸の早期復旧。このうち栃の木~立野線は栃木温泉河陽から立野で国道57号線に接続する約3kmの村道で、途中の阿蘇長陽大橋で橋台の沈下と損傷が確認された。阿蘇大橋の崩落地点からもそれほど離れておらず、斜面崩落の危険性が高い地域でもある。深刻な被害が広域にわたるうえ、工事の実施に危険がともなうとあっては、とても県の手には負えない。大規模災害復興法はもともと東日本大震災を受けて制定されたものだが、国が地方の現状と向き合う仕組みが作られた点で意義は大きい。
 阿蘇大橋を押し流した崩壊斜面の安定化は、国の直轄事業とされた。工事が難しく費用がかかるときは国が工事を実施するとした砂防法を根拠とし、国は5月5日に緊急対策の準備工事に着手した。また阿蘇大橋の復旧を熊本県は直轄権限代行事業として国に要望した結果、国施工工事として実施することが決定された。阿蘇大橋は県管理の国道325号線であり、道路法に基づく直轄権限代行が適用されている。阿蘇大橋の復旧に当たっては活断層対策などの高度な技術が必要と認められた。現場の斜面が地震によって緩んでしまったことから、別の場所での架け替えや特殊な工事などが想定されているという。

地震という恐怖の中で復旧進める

 土木インフラの復旧に早く道筋をつけることが、熊本県の課題である。しかし、最大震度7の前震と本震が立て続けに起こったということが、トラウマになってしまっているという。余震の回数はピーク時に比べて落ち着いているとはいえ、完全に終息する見通しは立っていない。この状況下で「前よりももっと大きな地震が来るのではないか」という恐怖が精神的なブレーキをかけてしまっている。加えて、震源が移動していることも大きくのしかかった。前震と本震の震源は熊本地方だったが、本震の後になって阿蘇地方を震源とする地震が急増した。震源となっている日奈久断層帯や布田川断層帯は従来考えられていたよりもさらに伸びるとみられており、さらに地下なので断層がどのように変形したのかもわからない。大きな地震がさらに発生する可能性が残されている以上、慎重な対応を取らざるを得ず、難しい判断を迫られている。

(了)
【平古場 豪】

※写真は熊本県提供

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