2024年04月23日( 火 )

【名門・筑女の異変】不可解な不動産取引、阿蘇の研修施設を安値で売却?(後)

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もう1つの研修施設「楽山荘」

楽山荘<

楽山荘

 本稿執筆に際して、筑紫女学園の研修施設「楽山荘」(福岡市早良区)を訪れた。現在は閉鎖されており、人の気配はしなかったが、敷地は雑草が生い茂っていることもなく、定期的に手入れされている様子がうかがえた。近くを流れる川の音が涼しさを感じさせる静寂に包まれた環境は、人間教育の場としてふさわしい立地であることを感じさせる。「楽山荘」を設置したのは創設者の想いを直に受け継いだ筑紫女学校2代目校長の水月文英氏。場所の選定にも、きっと深い考えがあったことのように思える。

 「楽山荘」は、前出の15年3月9日時点における遊休資産リストには入っていないが、「福岡歴史の町」跡地取得の事業計画では、「老朽化が進んでおり利用頻度も少ない」とされ、また、笠前理事長が16年3月25日の評議員会で、「光雲荘と楽山荘の代わりの研修施設を建てる」などと発言していることから、新しい研修施設の取得とともに「光雲荘」と同様に処分されることが考えられる。

 この時の評議員会では、「福岡歴史の町」跡地の取得について、中学・高校の評議員全員が反対であると理事長に伝えられている。反対理由は、(1)中学・高校がある福岡市中央区警固から離れており利便性が悪いことと(2)夕方5時に暗くなる山道を帰る際の生徒の安全性などである。加えて、現場の意見を具申しても、ビジョン・問題点・見通しが示されずに計画が進んでいくことに強い疑念があるとした。中学・高校の教職員の反対意見の根底には、たくさんの生徒たちの思い出がある「楽山荘」との比較も反映されているはずだ。

 中学・高校の笠前理事長の不信任理由には、「福岡歴史の町」跡地取得が不可解な土地問題としてあがっており、当時の理事のなかにも、理事会では取得には賛成したが、笠前理事長がその説明を適切に行っていないことを解任理由にあげる声もあった。

混乱の果ての長谷川新体制

 評議員のなかに強い反対意見があるなかで「福岡歴史の町」跡地を取得したことは、筑紫女学園の寄附行為に抵触する可能性がある。寄附行為第23条は、借入金および重要な資産の処分に関する事項について評議員会への諮問事項としている。もちろん、ただ意見を聞けばいい(聞き流す)というものではなく、評議員に反対意見に対してはきちんと説明責任を果たさなければならないはずだ。重要な資産の処分について説明が不足し、理解を得られぬまま物事を押し進めた笠前理事長に、学校運営上の疑問や不安が生じるのは当然のことのように感じる。

 「笠前理事長は、この『不可解な土地問題』でも見られる強引な学校運営で、過去2度の学長選任で教職員との間にできた溝を極めて深刻なものにした。ついには、教職員だけでなく理事会内でも問題視する理事が増えていき、笠前理事長を支持する理事の数も理事会内の半数を下回った」(学校関係者)。

 3月25日の理事会では理事長解任が議題に上げられ、笠前理事長の政権はまさに風前の灯となっていた。既報の通り、この際、脱出しようとした笠前理事長が運転する車が、引き返させるべく留めようとした評議員を轢き倒す事故が発生。予算や事業計画などの重要事項の決議を優先し、動揺する笠前理事長をテーブルに着かせるために解任議案を引き下げた。

 かろうじて政権を延命した笠理事長が仕掛けたのが、反対派理事を駆逐する逆クーデターだ。笠前理事長は6月10日に任期満了で退任。同日の理事会で賛否同数の状況を作り、議長決裁権を行使し、反対派の理事・評議員を外す新人事案を通した。そして、笠前理事長の後を継ぎ、6月22日付で新理事長に就任したのが長谷川裕一氏だ。長谷川氏は、前理事長の意思を継ぐ学校運営を行うものと思われており、建学以来の異常事態に、内外の関係者は長谷川新体制の動向を注視している。

(了)
【山下 康太】

<INFORMATION>
学校法人 筑紫女学園
代 表:長谷川 裕一
所在地:福岡県太宰府市石坂2-12-1
創 立:1907年
設 立:1945年
総資産:210億8,442万円
帰属収入:(15/3)40億2,259万円

 
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