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2016年08月04日 11:40

発達障害にそう病が拍車か~相模原障害者施設殺傷事件(前) 博多21の会 

医療法人 井口野間病院副理事長 岡田 勢聿 氏

 神奈川県相模原市の知的障害者施設で7月26日、元職員の男が入所者19名を殺害する凶悪な事件が起こった。植松聖容疑者(26)は今年2月に措置入院となり、精神科医が精神に障がいがあると診断していたことがわかっている。精神に病を抱えていたから、戦後最悪の事件を引き起こしたのか。発達障害の専門家である医療法人 井口野間病院(福岡市南区寺塚)の岡田勢聿副理事長(56)は「発達障害にそう病の症状が重なった、植松容疑者のような人物は大変まれ」と語る。

脳の機能障がいにそう病重なる

 ――植松容疑者は、精神に障がいを抱えていたのでしょうか。

医療法人 井口野間病院 岡田 勢聿 副理事長<

医療法人 井口野間病院 岡田 勢聿 副理事長

 岡田 他人との関わりに問題を起こしていることから、私は発達障害と見ています。発達障害は精神障がいではなく、脳が損傷を受けたことによる機能障がいです。脳には成長の過程において器質的に発達する部位と、発達しない部位が現れてきます。それはおおよそ遺伝によって決まり、後天的な環境からの刺激にも大きく影響を受ける。遺伝と環境の相互作用により、脳は発達するということです。神経学的な発達は9歳~11歳で終わる。つまり発達障害であっても、9歳から11歳までなら是正しやすい。その後は発達のスピードが鈍ります。いったん固まってしまったものを変えることはできません。

 ――植松容疑者はどうでしょうか。

 岡田 26歳という年齢から、脳が固まってしまっているので、改善は難しいでしょう。措置入院で精神保健指定医は診断基準に照らして精神状態を診断したはずですが、私は発達障害によって脳のバランスが崩れていたところに、そう病が重なったと考えます。そう病はうつ病の逆で、気分が異常に高揚し、支離滅裂な言動などが見られる病気です。そうとうつの状態が交互に現れる双極性障害が一般的ですが、植松容疑者のように、脳のバランス障がいにそう状態が被っている症例は多くありません。

職場への逆恨みが事件の引き金か

 ――植松容疑者の障がいが事件を引き起こした原因ということでしょうか。

 岡田 植松容疑者は稀有な存在です。同じような病気を抱えている人間が、必ずこのような凶悪事件を起こすということではありません。彼は「ヒトラーの思想が降りてきた」と話したそうです。ヒトラーは、精神障害者や知的障害者を「生きるに値しない命」として「安楽死」させる計画を実行しました。植松容疑者は本を読むなどして、この歴史的事実を知ったと思われます。これに直接影響されたのではなく、おそらく事件を起こした元職場に対し恨みがあったはず。元もとの性格的傾向に、ヒトラーの考え方が入り込み、そう病が行動に拍車を掛けてしまったというのが、事件に至った流れだったと考えています。

 ――植松容疑者が事件を起こしたのは、性格や個人的資質に重大な問題を抱えていたことにも原因があったと言えますね。

 岡田 他人に対して優しい人ではありませんね。施設に務める前から知的障害者を見下していて、彼らの世話をするという仕事に引っ掛かりを感じていたのでしょう。そうした恨みが少しずつ積み重なっていき、加えて職場の人間関係も良好ではなかった。退職になり、自分という人間を受け入れてもらえなかったというトラウマから、元の職場を事件現場に選んだのでしょう。

(つづく)
【聞き手・文・平古場 豪】

<プロフィール>
okada_pr岡田 勢聿(おかだ・せいいち)
1960年福岡市生まれ。東福岡高校、福岡大学商学部卒業。麻生商事(株)入社。退職後、川崎医科大学付属リハビリテーション学院作業療法学部入学。卒業後、医療法人白十字会で作業療法部主任。退職し、発達障害児施設 知徳学園を福岡市で開設、園長を務める。その後、NPO法人理事長を経て、現在は医療法人井口野間病院と医療法人周友会の副理事長。また、九州大学医学部第一内科教室でリエゾン精神医学を専門習得生として研究中。

 
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