2024年05月02日( 木 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~真夏の戦い

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 南米大陸での初めてのオリンピックがブラジルで開催され、無事に最終日を迎えられたことは本当におめでたいことだと思う。開催前には何かと不安ごとが多く、心配されることがあっただけに、大きなトラブルもなく、多少の揉めごとはあったが大きくならなくて良かったと思う。

sora-min 今回のオリンピックでは、次回開催が東京に決定しているだけに、関係者の方々にとっては競技の成績は当然だが、競技の進行や、選手村をはじめ宿泊、食事、選手のトレーニング場所、体のメンテナンス場所、リラックスできる設備――考えれば考えるほど多くのことが気になったのではないだろうか。
 現地まで応援に行かれた方々も、日本でテレビの前で応援していた方々も、選手がどんな頑張りを見せるか、メダルはいくつ取れるのか、大きな関心を持っての3週間であったことだろう。
 弾けんばかりの笑顔になれた選手、涙が抑えられなかった選手、呆然として今の自分が信じられないと感じている選手、悔しさに包まれている選手、多くの表情をスポーツは見せてくれるが、これが現実である。笑顔になれる選手は一握りの選手であり、多くの選手は悔しさに包まれていると思う。4年間に費やした多くの時間をこの瞬間に表現できなかったから、そんな自分が悔しくて、いつか自分も弾ける笑顔に包まれると信じて、明日からまた練習に入ることだろう。その頑張りこそがスポーツの良さであり、素晴らしさである。

 そんなシーンを連日見ている間に日本のプロ野球では、パ・リーグの日本ハムがものすごい追い上げで、今年も独走で優勝すると思っていたソフトバンクに追いつきそうな勢いを見せ、実際に追いつくところまで来ている。問題は、ここからの仕上げを9月にできるのか、それともソフトバンクが自力を見せるのか――。勝負がわからないところまで来ている。

 そしてセ・リーグでは、「大丈夫かな?」「大丈夫かな?」と心配されているカープが8ゲームほどの差をつけて逃げている。追いかけるチームが、今年はことごとく息切れしてしまい、心配しているこちらが拍子抜けする展開が続いている。
 そしてとうとう8月に、マジックが点灯した。25年ぶりのカープのマジックである。「20」という数字が8月に灯ったのだ。だいたいマジック点灯は、9月になってからが多い。それが普通である。ところが、今年のカープは8月である。「強いチーム」である。これでまず間違いなく、セ・リーグで優勝するだろう。

 今の状況を見ていると、追いかけるチームは巨人だが、今の巨人に逆転するだけのチーム力は残っていない。ときどきヨロヨロとした姿を見せ、心配させることがあるカープだが、今年の戦い方は強い。
 野村投手が頑張り、少し疲れがくるとジョンソン投手が頑張り、苦しいときにはこうして「頑張るのだ!」という投球を黒田投手がマウンドで見せてくれ、若手の投手を叱咤してくれる。福井投手も本来の力はまだ出せていないが頑張り、ヘーゲンス投手が甲子園の高校野球を見ながら刺激を受けて頑張り、中継ぎの投手、抑えの中崎投手、打てない試合で敗戦を喫することはあるが、投手陣が崩れていない点は、試合を終えた後で安堵感が何度もあった。カープは、投手がしっかりとしているところが強さの源泉である。ここがしっかりしているということは、安心できると思う。
 だが、マジックが出たから優勝が「決まった」のではない。これから仕上げの苦しさが待っているのであり、ここからが始まりであるということを忘れないでほしい。

 打線も、試合開始と同時に相手投手に襲いかかるべき1番の田中選手、2番の菊池選手、3番の丸選手が、試合を休むことなくここまで頑張ってきたところが大きい。
 他の5球団にはない姿を、今年はカープだけが実現している。巨人軍も阪神もヤクルトも、DeNAも中日も、打線の組み替えで苦労してきた。いまだに固定できないチームがある。
 ところがカープには、このような苦労はない。選手1人ひとりがしっかりとした体と心のメンテナンスをして故障を防ぎ、調子の波を乗り越えて戦ってきた。監督も選手を信頼して、選手も信頼に応えてここまで来たのだから、もうひと頑張り。「優勝決定」まで気を抜かずに、油断せずにその日を迎えてほしいと思う。

 

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