2024年05月03日( 金 )

富士通、レノボとパソコン事業を統合~国産機時代は終結へ

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さらに巨大化する世界最大のPCメーカー

pc_img 富士通が世界最大手のパソコンメーカー・レノボとの間でパソコン(以下PC)事業を統合することがわかった。富士通が2016年2月に設立したPC事業子会社にレノボが出資するか、合弁会社を設立するかで調整中といわれている。

 レノボは1980年代に中国で創業され、2004年に米IBMのPC部門を買収したことで一躍世界に名を知られることになった。その後14年にはGoogle傘下の携帯電話会社モトローラを買収。古参モバイル企業であるモトローラを傘下に収めたことで、関連する多くの特許も手中にした。

 レノボの日本法人レノボ・ジャパン(株)(本社:東京都千代田区)は11年にNECとの間でパソコン事業を統合。さらに今回の富士通との統合で、レノボグループは世界最大のPC企業という立場をより強固にした。国内でもその存在感は当然巨大なものになる。15年の国内クライアントPC出荷台数を見ると、1位がNEC・レノボグループ(26.3%、277万台)、2位が富士通(16.7%、176万台)、3位が東芝(12.3%、129万台)となっている。この1位と2位が統合されることで、国内PC市場では40%以上のシェアをレノボが握るわけだ。

 富士通が育ててきたPCブランド「FMV」や国内の2つの工場は今後も維持される見通しだが、かつてNECがPC-98シリーズで市場の90%を制覇した頃の国産PCメーカーの栄華は、遠い過去のものになってしまった。

過適応で柔軟性をなくし、シェアを失った国産メーカー

 なぜ国産PCメーカーは競争力を失ったのか。先述のPC-98が国内を席巻している間に、日本以外の多くの国ではIBM-PC/AT互換機(DOS/V)が幅広いシェアを獲得していた。そしてマイクロソフトが1995年に市場に投入したWindows95がデファクトスタンダードになったことが、独自規格だったPC-98に大打撃を与えることになる。WindowsはPC/AT機上で動作するOSであり、PC-98には適合しない。このためPC-98の存在を前提にしていた国内のPC市場、PCソフト市場は根本的な変革を迫られることになった。Windows95の登場以降は、国産メーカーは独自規格を捨てWindows搭載を前提としたPC生産にシフトする。

 さらに、白物家電でもよく見られた国産メーカーの製品と需要との乖離は、PC市場でも起こっていた。高価格高付加価値を追求する国産メーカーの製品は価格面での競争力を失い、海外新興メーカーに市場を明け渡すことになる。PC市場では、国産メーカーは「独自の新機能」や「豊富な内蔵ソフト」を売りのひとつにしていたが、これは市場のニーズを満たすものではなかった。多くのユーザーは、高品質かつ安価で、用途に応じてカスタマイズできるPCを求めていた。「全部盛り」であらゆる用途を実現できるPCを求めるユーザーはほとんどいなかったのである。

 現在、PCはぜいたく品ではなく日常の仕事や家庭で使う道具である。普段使いの道具に求められるのは多機能性や華美な装飾ではなく、堅実な性能と使い減りのしない丈夫さ、そして使い勝手の良さ。白物家電やPCで繰り返されたガラパゴス的失敗を繰り返さないためにも、他業界の方々も他山の石とすべき案件であろう。

【深水 央】

 

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