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2016年11月01日 17:02

建築関連法規を無視する日建設計-豊洲新市場

 東京の豊洲新市場の構造上の安全性について、10月25 日に市場問題プロジェクトチームの2回目の会合が行われ、会合の内容が報道されました。日建設計による説明の結論は、「豊洲市場の建物は、法令を遵守するとともに、東京都が求める安全性能を満たしています」というものでした。豊洲市場の構造上の問題点(構造計算の偽装!)については、先日指摘した通りです。以下(1)(2)は、先日の「日建設計は観念すべき!豊洲新市場の構造計算に疑義あり」からの再掲となります。


(1)保有水平耐力計算のおける構造特性係数(Ds値)の偽装
 水産仲卸売場棟の柱は、鉄骨の周囲を鉄筋コンクリートで囲む形状となっており、柱に関してはSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)と認識でき、1階の柱脚(柱の最下部)は地下部分に埋め込まれていない「ピン柱脚」(設計者が計算書にピン柱脚とのコメントを明確に記入)となっています。SRC造のピン柱脚の場合、ベースプレートの下部に鉄骨が存在しないので、これより下部の層についてはRC造として計算するよう、「2007 年版 建築物の構造関係技術基準解説書(国土交通省監修)」において規定されています。つまり、SRC造の場合だけの特例である「0.05」のDs値の低減が適用されず、結果的に、1階のDs値(構造特性係数)は上階よりも「0.05」高い厳しい数値としなければなりません。この点だけを取り上げても、約15%の耐力偽装となっています。要するに、この項目だけで、最下階の柱の強度が15%も偽装されているという事です。
 日建設計は「耐震強度は東京都が定める1.25 を上回る1.34 なので安全」と説明していますが、1階のDs値を適切にした(SRC 造の低減を採用しない)場合、1.34×(0.3/0.35)=1.14 < 1.25 ※耐震強度が1.25 を下回り「NG」です。
 日建設計は、「耐震強度不足」という重大な事実を隠し、根拠である構造計算書を提出もせず、一方的に「安全」と説明しているのです。

(2)柱脚の鉄量が必要鉄量の規定を全く満足していない(44%不足)
 「建築物の構造規定」(日本建築センター刊、建設省監修)によれば、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の1階鉄骨柱の柱脚がピン柱脚である場合、柱脚の鉄量(鉄筋とアンカーボルトの断面積の合計)が、柱頭の鉄量(鉄骨と鉄筋の断面積の合計)と等量以上にしなければならないと定められています。しかし、実際には、柱脚の鉄量は、柱頭の56%しか無いので44%も不足した状態となっています。 最も重要な最下階の柱脚に必要とされる鉄量(鉄筋量)の56%の強度しか存在しないのです。
 1階の鉄量が極端に少なく、前述の1階の保有水平耐力不足と複合的考えれば、最も強くあるべき肝心の1階が最も弱い建物となっており、いくら上部が強くても、足元が弱く、安全性が確保できない危険な建物となっています。

 上記の2点について、会議に出席した構造の専門家からの指摘はありませんでした。

(3)層間変形角、階数の偽装
 会議に出席していた構造の専門家は、構造計算における層間変形角が法定の1/200 を超えていることや、構造計算上の階数の設定が不適切であることを指摘していましたが、日建設計に煙に巻かれていたような印象を受けました。地下ピットを階数に含めるべきという指摘に対して、日建設計は、「基礎ピットは十分頑丈に設計しているため、5階建とみなす必要はありません。地震で安全性が低減するということもありません。」と、意味不明の主観的な説明していました。
 階として認識すべき構造であれば、剛強であろうが無かろうが、構造階に含めて構造計算をすべきです。日建設計の説明は工学的な裏づけを説明していませんが、図面を客観的に見た限りでは、地下部分を構造階に含めて構造計算をすることが適切であると思います。
 報道によれば、建築構造の専門家である委員が日建設計の主張に対し、「設計の責任を負うという立場で安全性を宣言されている。私も同意します」と語り、他の委員からも異論が出ず、プロジェクトチーム内での総意が確認されたとされています。
 「建築構造の専門家である委員」の役割は何なのか?構造に関する専門知識に基づき、是は是、非は非として、法的・工学的安全性を追求すべきだったのではないでしょうか?結局、官である東京都と日建設計に丸め込まれただけであり、形式だけの指摘に終わっています。
 官であれば、法令規準を無視できるのでしょうか? 豊洲市場は、建築確認ではなく計画通知という制度により計画が認可されています。民間では厳格な建築確認が運用されています。計画通知も建築確認も同じく厳格であるべきです。計画通知であれば法律も規準も関係ないのでしょうか? これは、建築確認制度の否定ではないのでしょうか。
 これらの事について、私は、某経済週刊誌から3時間もの取材を受け、豊洲の構造の問題点を説明しましたが、掲載された記事は骨抜きにされていました。官に遠慮したからだと思われますが、インターネットを100%活用して、自ら発信していくしかないと痛感しています。

(4)総括
 元々の構造計算書は、耐震強度に1%の余力もない(保有耐力比=1.25=公共建築物の最低ライン)結果となっていました。それが、床コンクリートの厚みの誤りを指摘されると、日建設計は、「ミスでした。しかし、安全基準の1.25 に対して1.36 であり安全です」と説明しています。そもそも、実質の耐震強度が1.0(1.25)と、超低空飛行である構造計算データを、固定荷重を増やして(荷重が大きくなる)入力し直して、耐震強度が低くなることはあっても、耐震強度が高くなることはあり得ません。日建設計の説明に納得できないのは私だけでしょうか?
 私が指摘している柱脚の構造特性係数(Ds値)を正しく適用した場合、更に、耐震強度が低下することは火を見るより明らかです。100回の苦しい説明を繰り返すよりも、修正した構造計算書を提出すれば良いのです。構造計算書を提出できないのであれば、如何なる理由により提出できないのか、説明する必要があります。プロジェクトチームの次回会議において、日建設計が、どのような理由付け、釈明をするのか、見守りたいと思います。

協同組合建築構造調査機構
代表理事 仲盛 昭二

 
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