2024年05月13日( 月 )

アジアの未来を切り開く国土計画の海外展開~「国土計画シンポジウム」開催

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 近年、アジア各国を中心として、急速な経済成長にともなう無秩序な国土の開発や都市の拡大が大きな課題となっている。2016年10月に開催された「第3回国連人間居住会議(ハビタットⅢ)」でも、深刻化する都市化に対応し、これを成長のエンジンとして生かしていくための国際的な取り組み方針「New Urban Agenda(ニュー・アーバン・アジェンダ)」を採択。適切な国土計画や地域計画に基づく国づくり・地域づくりへの関心が高まっている。
 過去に同様の課題を解決してきた我が国には豊富な知識・経験があり、それらを生かした一層の国際貢献が求められている。そうした背景を受けて2月28日、福岡市のアクロス福岡・国際会議場で「国土計画シンポジウム」が開催された。
 同シンポジウムは、国際社会の動向や日本のまちづくりの海外展開の現状などを紹介するとともに、今後、国土計画などの海外展開を推進するため、国づくり・地域づくりの国際連携のあり方について、考えていくもの。主催は、(一財)国土計画協会。

 同シンポジウムの開催にあたっては、まず国土計画協会会長の伊藤滋氏が主催者として挨拶。次いで、国土交通省挨拶として国土交通省国土交通審議官の花岡洋文氏、来賓挨拶として福岡県知事・小川洋氏、福岡市副市長・貞刈厚仁氏、九州経済連合会会長・麻生泰氏がそれぞれ、開会にあたっての同シンポジウムへの期待を述べた。

 シンポジウムは、国土交通省大臣官房審議官の大内秀彦氏による「世界の課題と我が国の国土政策」についての報告で幕を開けた。大内氏は資料を交えながら、これまで7回行われた国土計画の変遷やアジア諸国を中心とした国土計画策定のニーズについて解説。今後の人口減少・高齢化に対応した国土計画のキーワードとして「コンパクト+ネットワーク」を提示し、質の高いサービスを効率的に提供することと、新たな価値創造が重要だとした。また、「国際プラットフォーム」の構築を唱えるとともに、日本の成長センター「ゲートウェイ九州」の重要性などを訴えていた。
 続いて西南学院大学教授の野田順康氏が、「国土計画の海外展開に向けて」というテーマで基調講演。海外展開に向けた2つの論点として「日本の国土計画の国際化」と「日本の国土計画の普及・啓発」を提示し、それぞれの論点についての解説を行った。

 シンポジウム後半では、パネルディスカッションも開催。東京大学大学院教授の出口敦氏をコーディネーターに、パネリストとして西南大・野田教授、国連ハビタット福岡本部本部長の深澤良信氏、福岡市の貞刈副市長、UR都市機構・海外総括役民間等海外展開支援室長の吉村弘之氏、西日本鉄道(株)取締役専務執行役員の高崎繁行氏がそれぞれ登壇。ディスカッションに先立ってそれぞれがプレゼンテーションを行った後、「アジアの未来を切り開く国土計画の海外展開」をテーマにディスカッションへと移った。ディスカッションでは、海外展開の課題と、プラットフォームおよび国連ハビタット福岡本部に対する期待についてそれぞれが意見を述べた後、コーディネーターの出口氏が全体のまとめを行い、今回のシンポジウムを締めくくった。

【坂田 憲治】

 

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