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2017年03月27日 07:02

ロックフェラー後の世界秩序を握る人物(3) SNSI中田安彦レポート 

SNSI・副島国家戦略研究所 中田安彦

 ヒラリー・クリントンとジョン・マケインという二人の政治家は民主党、共和党と所属する政党は違うもののネオコン派の残党である。このネオコン派は、イラク戦争を仕掛けた。すでにイラクの泥沼化で、アメリカを中東政策にかかりきりにさせ、その間に世界は中国の台頭やBRICSの登場など多極化の方向に向かっていった。さらに、ネオコン派は人道軍事介入主義者の顔をして、CIAや国務省に潜り込んで、中東でアラブの春の民主化政策を推しすすめることで、リビアやシリアを欧米諸国のような国にしようと言う計画を立てて、ヒラリー・クリントン国務長官の時代にそれを実行した。その中で起きた悲劇がリビアのベンガジ領事館襲撃事件だった。

 トランプが「ヒラリーとオバマはISISを生み出した」と気が狂ったとしか思えないことを選挙期間中言い続けたのは、「俺はお前たちCIAや国務省がいかに悪さをしてきたか全部知っている」というメッセージを分かる人にはわかるように発信していたのである。

 ロックフェラーは、単純化して言えば、グローバリストとして世界経済のアメリカ化を目指していた人物であり、それはかつて2000年に日本長期信用銀行を米投資ファンドが買収して生まれた、我が国の新生銀行の社外取締役にロックフェラーが突如就任したことでもよく分かる。この頃はウィルバー・ロス現商務長官なども日本の企業買収に熱心だった。ハゲタカファンド批判が沸き起こったのもこの頃だ。

 ところが、同時に、ロックフェラーは、中国とロシアを世界経済に組み込んでいくということによって、世界大戦レベルの戦争を防ぐという経済人として当然の発想を持っていた。それは超大国どうしの戦争がアメリカにとって命取りだと知っているからだ。2つの世界大戦では世界の覇権がイギリスからアメリカに移動して行ったからだ。自分のレガシーをどのようにして残すか。ロックフェラー個人の意志が働いたかはよくわからないが、その直臣であったキッシンジャーは、危険なヒラリーよりはトランプのほうがマシと判断したフシがある。「彼にチャンスを与えよう」とキッシンジャーは当選後に雑誌のインタビューで語っていた。

 トランプ大統領は、ジャレッド・クシュナーやイヴァンカ・トランプのようなニューヨーク社交界を通じて、大銀行や巨大投資ファンドなどの金融資本主流派につながっているグループや、保守系思想を明確にしてトランプを共和党の候補者として応援してきた金融関係者たち、それから共和党の政財界人などに支持されている。当たり前だがメディアがクローズアップしたアメリカ中西部の経済発展から取り残された「ラストベルト」の貧困地域の有権者だけが支持しているわけではない。

 クシュナーらに連なる国際協調派としては、エクソンモービルCEOだったレックス・ティラーソン国務長官やロックフェラーとも親しかったウィルバー・ロス商務長官であり、加えてホワイトハウス経済司令塔の元ゴールドマン・サックス社長のゲイリー・コーン国家経済議長の名前が挙げられる。保守系思想グループとしては、主席戦略官のスティーブ・バノンや、バノンが所属していた保守系メディア「ブライトバート」の主要株主と最近暴露されたヘッジファンド経営者のロバート・マーサー(メルセル)や、その娘で保守系のヘリテイジ財団(トランプ政権の政策を作っている)の理事であるレベッカ・メルセルたち。そして共和党の現在の主流は、マイク・ペンス副大統領やラインス・プリーバス首席補佐官たちであると言ってよい。これらは、ロシアとの関係を緊張させたくない政治勢力だ。

 これに対して、反トランプ派は、民主党全部に加えて共和党のネオコン派たちである。マイケル・フリン補佐官がロシア大使との就任前の事前交渉を明かさなかったことを理由に首になったが、今現在もトランプとロシアの選挙期間中の接触や、ロシアのトランプに対する側面支援が反トランプのメディアによってやり玉に挙がっている。しかし、これはトランプによって国家予算面で干上がらせられることを恐れたヒラリー時代の国務省やCIAがマケイン議員を頭目に立てて行っている、反ロシア・キャンペーンに過ぎない。来年度予算でトランプは国防予算を増やす一方で、国務省関連の予算を大幅に減らした。これは国務省がCIAと結託して、世界の民主化運動に資金を提供していたことが、中東の混乱に拍車をかけたことに対する反省がある。

 元祖国際主義のロックフェラー派の流れにあるニューヨーク金融財界のクシュナーやコーンと、反グローバリスト・ネオコン派のスティーブ・バノンが呉越同舟しているのがトランプ政権である。それは、「敵の敵は味方」という原理で、彼らが「反ネオコン」でまとまっているからだ。ロシアを敵視してNATOを強化すればするほど、ネオコン派は喜ぶが、アメリカの国際的な地位が低下するし、ロシアや中国は更に台頭する。ロシアとのウクライナ紛争がこじれれば世界戦争も起きかねないという危機感がキッシンジャーの原動力であり、「親露派」だろうが、何だろうが反プーチン派を弱体化させる必要があったわけだ。

(つづく)

<プロフィール>
nakata中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

 

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