2024年04月16日( 火 )

中国の進める現代版シルクロード戦略「一帯一路」サミットの行方

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、4月28日付の記事を紹介する。

 来る5月14、15の両日、北京で「一帯一路」サミットが開催される。この会議にはロシアのプーチン大統領はじめ28カ国の首脳が参加する予定である。日本からは自民党の二階幹事長が出席し、安倍総理から習近平国家主席宛の親書を持参する方向で検討中だ。北朝鮮が核・ミサイル開発を強行するなか、ピョンヤンに強い影響力をもつ中国との関係を重視していることをアピールする狙いも込められているに違いない。

 30年余りの改革開放政策の結果、GDPで世界第2の経済大国となった中国。習近平主席の肝いりでアジア・インフラ投資銀行(AIIB)等を立ち上げ、新興国を中心にインフラ整備に力を入れ、グローバルなスケールでの「仲間作り」に成果を上げ、存在感はゆるぎないものになっている。そして、今では現代版シルクロードと呼ばれる「一帯一路計画」を掲げ、アジアとヨーロッパを結ぶ新たな物流インフラの建設に余念がない。この計画には国連はじめ、100を越える政府や国際機関が協力文書に既に署名をしている。

 先に1,500人のお供を連れて日本を訪問したサウジアラビアのサルマン国王だが、東京から北京に移動。中国との間では日本以上に経済、軍事の両面にわたる協力関係の強化に努めたようだ。特に、新疆ウイグル自治区などにイスラム教徒を多数抱える中国にとってはサウジアラビアの持つ情報と影響力は是が非でも手に入れたいもの。既にテロ対策を専門にする特殊部隊の合同演習も始まった。現代版シルクロードの成功には周辺の治安維持が欠かせないからだ。

 また、日本以上に石油を輸入してくれる中国はサウジにとっては大事なお得意様に違いない。脱石油社会への変革を模索するサウジは「サウジ・ビジョン2030」を打ち出している。実は、この中期・長期計画にとって、習近平の「一帯一路」は補完効果が期待できるため、両国は50を越える協力プロジェクトに合意したのである。中国企業はすでに145億ドルの投資を行っている。

 欧米諸国から人権問題に絡んでの批判を受けても、習近平は「どこ吹く風」と言わんばかりで、ユーモアたっぷりに切り返す。曰く「靴が合っているかどうかは、靴を履いている本人しか分からない」。厳しい批判にも、中国式の知恵を絡めた自信と迫力で対応する。

 独裁的な王室体制には内外から懸念の声も上がっているサウジとは共通点も多く、サルマン国王は習近平主席との間では日本で見せた以上の笑顔を振りまいていた。

 安倍晋三総理との短時間の会見の際には、不機嫌そうな顔を見せることの多い習近平主席だが、サルマン国王とは大いに意気投合したようだ。トランプ大統領の下で、「アメリカ第一主義」と銘打った孤立主義に走りそうなアメリカと対照的にサウジアラビアも中国もこの「一帯一路」と「サウジ・ビジョン2030」を合体させることで、より開かれた通商貿易体制をアピールしようと試みているようだ。

 5月に北京で開催される「一帯一路」サミットを成功させ、アジアとヨーロッパをつなぐ新たな経済圏を構築しようと目論む中国である。習近平指導部はこのイベントを本年最大の外交イベントと位置付け、準備に余念がないようだ。日本からは経団連の榊原会長も二階氏に同行する形で参加するという。これまで日本企業はこの一帯一路計画には関心は寄せてきたものの、具体的な関与については「様子見」状態であった。今回のサミットをきっかけに流れが変わることになるのかどうか、大いに見ものである。

※続きは4月28日のメルマガ版「世界最新トレンドとビジネスチャンス」第63回「中国の進める現代版シルクロード戦略『一帯一路』サミットの行方(前編)」で。


著者:浜田和幸
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