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2017年05月23日 07:02

一般メディアが語る「中国」はわかりやすすぎる!(3)

東京大学大学院総合文化研究科 川島 真 教授

中国には様々なヒト、モノ、カネが流入している

 ――中国人がアフリカへ進出して行く一方で、本書には、アフリカ人が中国にやってくる今までメディアではほとんど報じられていない事実「広州のアフリカ人街」の話が載っています。

 川島 中国と世界の関係を見る時、中国の世界進出ということだけが大きな話題となります。しかし、一方で世界の様々な企業や、世界各地の人々が中国に入って行き、中国に移住することが同時に進行しています。世界の目線が中国に集まり、中国情報が世界に溢れていくとも意味します。

 中国には100万人を超える台湾ビジネスマンが働いており、上海の外国人ビジネスマンは増加の一途を辿り、珠江デルタ地域では東南アジアからの労働者が増えています。また中国の各大学に集まる外国人留学生も増え続けています。つまり、世界進出と同時に、中国には様々な「ヒト」、「モノ」、「カネ(資本)」が流入しています。

 2010年頃から中国への中東、あるいはアフリカの人々の流入という現象が注目されています。今回、私は2010年に広東省広州市、11年には浙江省義烏市で調査を行いました。
広州市あるいは珠江デルタ地域には、多くのアフリカ人が移住しています。合法、非合法滞在を合せると、人口にして調査当時は2万とされていましたが、時には5万とも10万とも言われていました。昨今では、不法滞在者の摘発を試みる警察の手を逃れるために、アフリカ人たちも、郊外に分散しつつあります。

“チャイナドリーム”のイメージを世界に広げる

 実際に、広州市のアフリカ人街として最も大きな小北路エリアを歩いてみました。小北路は市の中心部、越秀公園の東側に位置する通りで、その小北路と環市中路との交差点の西南角に天秀大廈があります。その環市中路を渡ると登峰賓館があり、そこからかなりの奥行でアフリカ人街が広がっており、「チョコレート城」とも言われていました。

 そのコミュニティでは構成員の多くが男性で、珠江デルタ地域で生産される品物を買付け、アフリカに送付している小貿易商、あるいは運送業者でした。2010年当時は、ナイジェリア、マリ、ギニア、カメルーンといった国々の出身者が多い印象を受けています。中国経済の発展は、中国人の世界進出だけでなく、さまざまな“チャイナドリーム”のイメージを世界に対して広げることになり、多くの人々が中国を目指してやって来ていました。

中国・ナイジェリア両国の不法移民摘発の応酬

 アフリカに進出する大国中国は、一方で中国の国内に流入するアフリカ人との間に様々な問題を抱えていました。多くの外国人が、自らの社会の一員になって行くことについては、まだ十分な用意ができていなかったのです。

 2009年7月に、三元里(広州市街の北側)に近い、広園西路に面した砿泉派出所に、100名を超えるアフリカ人(その大半がナイジェリア人)が抗議デモで押し寄せ、警察官が発砲大けがを負う事件がありました。2008年の北京オリンピックに際して、中国当局がビザの更新に制限加えたためと言われています。ナイジェリアは、アンゴラなどと並んで中国の主要石油輸入先であり、両国の関係は極めて緊密です。

 ところが、この事件はナイジェリアの旧首都ラゴスにある「チャイナキャッスル(中国商城)」まで飛び火しました。同年10月には、ナイジェリアのラゴス税関が国家安全局の官員とともに、チャイナキャッスルのビルの抜き打ち検査を行い、その際、数十の中国系企業も捜査対象になり、会社の責任者や従業員10数名が逮捕されました。その後も、しばらくは両国で、不法移民摘発の応酬は続きました。

 中国人のフロンティアは中国政府の一歩先、二歩先を進んでいます。そのため、逆に中国に入ってくる外国人についても、相手国政府はもとより、中国政府もまた対応に苦慮しています。

中国製品の粗悪性や中国人商人の資質も問題にする

 ――中国人のアフリカ進出関連で、雑誌『非洲』に関して教えて頂けますか。

 川島 非洲とはアフリカのことで、雑誌『非洲』は中国政府肝いりのPR誌で、2009年9月に創刊されました。中国の対アフリカ政策を、わかりやすく紹介し、中国人の期待するアフリカ像を提示しつつも、投資意欲をかき立てるようなメディアになっています。また、中国のアフリカ援助もこの雑誌の主要テーマとなっています。全国人民対外友好協会が主管し、中国非洲人民友好協会が業務を担う形態をとっています。

 この雑誌で興味深いのは、積極的なアフリカへの投資意欲をかき立てつつも、中国製品の粗悪性や中国人商人の資質を問題にしている点です。特に偽物問題は深刻であると記事は伝えています。中国の人々にアフリカとの関わり方を指南し、何が問題になっているかということについての啓蒙的な雑誌だと言えます。問題があるということを当局は理解している、ということでもあります。

 2009年は、第1回の中国・アフリカ協力フォーラム開催(2000年10月)からちょうど10周年を迎え、中国の対アフリカ対策の仕切り直しが行われた年です。同年には、この他に、アフリカ人読者向けの『ChinAfrica/中国与非洲(中国とアフリカ)』という英文・中国語月刊誌がルニューアル、再刊行され、『人民日報海外版 非洲週刊(週刊アフリカ)』が創刊されています。アフリカ人向けですから、パブリック・ディプロマシーの一環だということにもなるでしょう。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
川島 真(かわしま・しん)
 1968年神奈川県横浜市生まれ。1997年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程、単位取得退学、博士(文学)。現在、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻教授(国際関係史)、専攻は中国近現代史、アジア政治外交史。世界平和研究所上席研究員、nippon.com企画編集委員長、内閣府国家安全保障局顧問などを兼任。
 著書として『中国近代外交の形成』(名古屋大学出版会、サントリー学芸賞)、『近代国家への模索 1894‐1925』(岩波新書)、『中国のフロンティア』(岩波新書)、『21世紀の「中華」』(中央公論新社)他多数。編著として、『東アジア国際政治史』(共編、名古屋大学出版会)、『チャイナ・リスク』(岩波書店)他多数。

 
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