2024年05月02日( 木 )

ポスト黒田日銀総裁~一強の安倍政権で再選?

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 日銀総裁のポストは、第22代の佐々木直氏以来、日銀OBと旧大蔵省OBとが交互に就く「たすき掛け人事」となっていたが、1997年に改正された日銀法で廃止され、速水優氏、福井俊彦氏と2代続けて日銀OBが総裁に就任(【表1】)。

 そのため巻き返しを図る旧大蔵省は武藤敏郎・元事務次官を副総裁に送り込み、そこから総裁に「内部昇格」させようとしたが、民主党(当時)の反対で国会承認されず、副総裁に就任していた日銀OBの白川方明氏が2008年4月9日、3代続けて日銀総裁に就任。旧大蔵省は日銀総裁の座を取り戻すことに失敗していたのだ。

 12年12月26日、自民党が政権に復帰して第2次安倍晋三内閣が発足。安倍首相は、「アベノミクス」、「三本の矢」を掲げ、経済回復を最優先課題とする方針を表明。

 リベンジに燃える旧大蔵省は、安倍首相の「経済政策」を積極的に推進するには、日銀OBではなく、人心一新のためにも旧大蔵省OBの黒田東彦 (はるひこ) 氏を総裁にすることを組織を挙げて要請。安倍首相も黒田氏を総裁にすれば、旧大蔵省人脈と日銀の両方をコントロールできると踏んだのだろう。ついに旧大蔵省は1998年3月に退任した松下康雄氏以来、実に15年振りに日銀総裁の椅子を奪回したのだ。

 黒田氏が日銀総裁に就任したのは13年3月20日。5年の任期は18年4月8日に終了する。安倍総理が掲げる2%の物価上昇目標を目指した黒田総裁だったが、ついに昨年暮れ、達成時期を「2018年度ごろ」に先送りし、事実上18年4月の任期内の実現を断念。

 しかし、自民党内で一強となった安倍総理は総裁任期延長で21年まで政権が続く可能性が高く、日銀総裁の人選は首相の意向が大きく影響するとみられている。

 再選を意識したのかどうかはわからないが、SankeiBizは以下のように報じている。

 黒田総裁は5月16日、都内で行われた対談で、異次元の金融緩和を縮小する出口戦略について、「日銀は十分な手段を持っていると自負している」と発言した。市場では出口の局面で金利が上昇し、日銀に口座を持つ金融機関への利払いが大きく増えるなど副作用を指摘する発言が相次いでおり、こうした不安を払拭するのが狙いとみられる。
 最近の日銀総裁は原則として5年の任期で交代してきたが、初期のアベノミクスに貢献した黒田氏については、再任が決定的との見方もあった。しかし「消費増税の必要性を強く訴え、追加緩和に消極的になった黒田氏と首相の間には距離も開いている」(市場関係者)との声も出てきたのだ。

 また藤代宏一氏(第一生命経済研究所主任エコノミスト)は、ポスト黒田の就任確率を以下のように予想している。

 黒田総裁は昨年1月29日、「マイナス金利政策」を発表した。その影響を受けて都銀を始め各金融機関の17年3月期決算は大幅な減益となったところが多く、18年3月期決算はさらに大きな減益予想となっている。各金融機関のトップは金融庁検査や日銀考査もあり、日銀の金利政策に口を挟むことはできないが、心の中では黒田総裁に「もう辞めてほしい」というのが本音ではないだろうか。

 もし73歳の黒田総裁が来年3月に再選され、任期までの5年間その座にいることになれば、在任期間は3,650日を超え、18代総裁だった一萬田尚登氏の3,115日間を抜いて歴代最長となる。残り1年を切った日銀総裁のポスト争い。日銀OBと旧大蔵省との綱引きもこれから激化することが予想されている。はたして誰が32代日銀総裁の座を射止めることになるのだろうか。

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

※クリックで拡大

 

 

関連記事