2024年05月16日( 木 )

日本人の心遣いと精巧さが表れたハンドメイド鎧、SNSで人気~(有)スタッフ

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 レストランで注文する料理や買い物などで、消費者が「写真映えするもの」をわざわざ選択するほど高まっているSNS人気。口コミなどでヒットし、一挙に知名度を上げる商品や観光地は少なくない。福岡市南区にある(有)スタッフ(本社:福岡市南区、木村英司社長)は、非常に軽い素材で精巧な戦国武将の鎧兜を作成。製造する帽子やボトルカバー、人用、ペット用の鎧は、観光庁主催の「おみやげグランプリ」などを受賞している。これらの商品がいま、SNSで日本国内だけでなくアメリカをはじめとした諸外国からに人気を得ている。商品の人気の秘密を、代表取締役社長の木村英司社長に聞いた。

(聞き手:中尾 眞幸)

 ――早速ですが、御社ではどのような商品をつくられているのでしょうか。

 木村社長(以下、木村) 弊社では、戦国武将の鎧や甲冑をモチーフとした帽子やボトルカバー、人用と犬猫用の鎧をオールハンドメイドで制作・販売しております。見た目が重厚ですので扱いづらいと思われがちですが、実際は発泡樹脂を素材とした非常に軽く柔らかい商品で、お子様やペットにも安心してご着用いただけます。商品は弊社ホームページでの通販のほか、大阪城や成田国際空港、その他観光地などでご購入いただけます。

 ――会社の設立当時からこちらの商品を手掛けていらっしゃるのですか。

 木村 いいえ。弊社は元来、シルクスクリーンに特化した印刷会社で、広告代理業などを主要業務としてまいりました。会社を設立したのは1984年、私が29歳のときで、10年近く働いていた印刷会社から独立し、友人たち3名と起業したのが始まりです。以来、約20年営業してまいりましたが、パソコンの普及などで個人での印刷が容易になり、このままでは危ういと感じるようになりました。これまで培ってきた技術を生かしながら新しい事業を始めたいと考え、4.5年ほど前からこの事業に着手し始めました。

 ――なぜ、甲冑を作るという発想に至ったのでしょうか。

 木村 大学時代の友人で、博多人形師の中村信喬氏に新しい事業について相談したことがきっかけです。話をするなかで、今後必ず外国人観光客が増加するだろうという予測しました。観光客が増えるのであれば、土産品が必要になる。相手が外国人であれば、日本らしいものが良い。さらに持ち帰りが容易となるよう、堅くなく・重たくなく・コンパクトなものでなければなりません。そこでたどり着いたのが、戦国武将の兜をかたどった「兜キャップ」です。この商品は野球帽に、柔らかくて非常に軽い素材でできたパーツをあしらっており、どこでも誰でも簡単に武将気分を味わえる商品です。パーツは外せるようになっていて、持ち運びにも邪魔になりません。これは2013年9月に発表し、翌年2014年1月に観光庁主催の「第10回 魅力ある日本のおみやげコンテスト」で入選を果たしました。

 ――発表されてすぐの入選とは、すごいですね。

 木村 応募時は、力試しくらいの気持ちだったのですが(笑)。入選したことでメディアにも取り上げていただき、知名度を上げることができました。元は外国人観光客を狙った商品でしたが、これにより日本全国の歴史ファンの方々からお問合せやご注文をいただくようになりました。最初は兜だけでしたが、現在は面頬もつけることでさらに本格的な商品となっています。

 ――ほかにもいろいろな商品がありますが、どのような経過を辿られてきたのでしょう。

 木村 兜ばかりでは商品の幅が広がりませんので、人用の鎧などに着手するようになりました。兜キャップが入選した2014年はちょうどNHK大河ドラマで黒田官兵衛が取り上げられ、福岡の官兵衛ブームと重なりました。西日本シティ銀行さんからお声がけいただき、この年の博多どんたくのパレード用に黒田官兵衛と黒田二十四騎の甲冑・兜を作成致しました。しかし、コストや制作時間など鑑みて、まだまだこの時点では人用鎧は商品化には程遠いものでした。人用は難しいが、そのミニチュアを作ってはどうかという発想から、「ボトルカバーサムライ鎧」が完成するに至りました。こちらは「おみやげグランプリ2015」でアイデア賞を受賞することができました。また、同年8月に“世界にまだ知られていない、日本が誇るべきすぐれた地方産品500商材”である「The Wonder 500TM」にも認定されました。その翌年には、お客さまがより手に取りやすいように低価格・軽量化を図った「兜キャップLite」の販売を開始いたしました。そして今年1月、「おみやげグランプリ2017」でエンターテイメント賞を受賞したのが猫・小型犬用の「ペット鎧」です。

 ――こちらはSNSで有名だそうですね。

 木村 はい。驚いたのは日本国内だけでなく、アメリカを中心とした諸外国でも拡散され、人気を得ているということです。特に今年5月後半からの伸びは顕著で、サイト閲覧数が1カ月で100万を越え、同時に外国からのご注文・お問合せが増えました。元来外国人客用にと制作を開始した商品でしたので、外国の方々から認めていただけたことは非常に嬉しいですね。同時にこれからはSNSの時代であるということ痛感し、Face book、Twitter、Instagramの重要性を再認識しました。

 ――オーダーメイドは制作が大変そうですが、既製品ではいけないのでしょうか。

 木村 お客様のご要望に寄り沿うために、オーダーメイド式にしています。とくにペット用は、犬・猫といっても、種類・雄・雌・瘦せ型・肥満型など、1体1体体つきが異なります。少し型が違っても無理やり着せることは出来ますが、壊れやすくなるうえに、体に合わないものを動物は嫌がります。体に合っていて、邪魔にならないものであれば、最初着せたときは怪訝な顔をしても慣れれば着たまま行動してくれます。私も猫を飼っていて、いつも着衣実験させてもらっています(笑)。子どもや犬猫にとっては、邪魔にならない安全なものであることが第一条件になるのです。弊社ではご注文をいただく際にオーダーシートにペットの胴回りなどのサイズをご記入、お写真をお送りいただいた上で、その子の体に合うものを作成していきます。ペットだけでなく、人間用の鎧についても大柄の方などご要望があればオーダーメイドでお造りいたします。これらに関してはお届けまで2カ月以上お時間いただくことになります。

 ――こだわりを持って作成されているのですね。

 木村 はい。長年培ってきたシルクスクリーン印刷技術がとても生きていて、「一見しただけだと皮素材のようだ」というお声もよくいただきます。我々は社員数5名で少人数ということもあり、作成に時間が掛かりますが、同様の方法を他社に委託するとかなりのコスト高となり、現在と同じ価格でお客様にお届けすることができなくなってしまいます。自社ですべて完成できるからこそ、このクオリティを現在の価格でお客様にお届けすることができているのです。そして、やはり自分たちで考案した商品を、自分たちの手で完成させたいという想いから、今後も外部委託はせずに自社でできる範囲の商品を考案していきたいと考えています。

 また、自社で受注を受けてから最後まで制作することで、お客様のご意見を拾いやすいという利点もあります。いただくご要望のなかには、我々だけでは気づくことができなかった貴重なご意見も多くあり、商品は随時改良しています。例えば、子ども用鎧の草摺(くさずり、腰下の垂れ下がるパーツ)は取り外し可能で、お子様が急にお手洗いに行きたくなった時にそのパーツだけ外せば対応することができます。

 手間はかかりますが、だからこそ他ではマネできない商品に仕上げることができているのです。以前大手玩具メーカーさんに、商品を買い取りたいとお声掛けいただいたことがありましたが、量産型となるため、中国製でクオリティの低下が避けられない。我々のこだわりはあくまでハンドメイドであり、日本が伝わる商品を日本人の手で造るということでありますので、この件についてはお断りしました。

 ――今後はどういった展開を検討されているのでしょうか。

 木村 モデルになる武将の増加や、既存商品の改良は随時行っていきます。また、新商品も生み出していくべきだと考えています。また、他企業さんとのコラボレーション企画なども進めていきたいですね。
 「日本に来られる方に日本の良さを届けられるものを」という思いから始めた商品開発ですので、日本人の丁寧さ・精密さが伝わる商品を作り続けていきたいですね。

 ――木村社長のこだわりと、消費者への心遣いがよくわかるお話でした。本日はお忙しいなか、本当にありがとうございました。

【中尾 眞幸】

<COMPANY INFORMATION>
(有)スタッフ
代表者:木村 英司
設 立:1984年
所在地:福岡県福岡市南区大楠2-4-23
URL:https://www.samurai-age.jp/

 

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