2024年04月20日( 土 )

アサツーディ・ケイが筆頭株主の英WPPの排除に成功(前)

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 国内広告代理店3位のアサツーディ・ケイ(ADK)と筆頭株主で世界広告最大手の英WPPとの壮絶バトルが決着した。ADKがホワイトナイト(白馬の騎士)に招いた米投資ファンドのベインキャピタルがWPPを撃退。ADK=ベイン側の劣勢が伝えられていたが、土壇場での大逆転劇となった。

ベインによるTOBが成立し、ADKは非上場化へ

 米投資会社ベインキャピタルは12月7日、アサツーディ・ケイ(ADK)株のTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。発行済み株式数の87.05%に相当する3,623万株の応募があった。取得額は1,326億円。TOBの応募期間は12月6日に2回延長した。

 ベインは残りの株式を買い付ける方針。ADKは臨時株主総会での決議を経て上場廃止になる。ベインはADKの収益力を高めたうえで、数年後にADKを再上場させ、投資金を回収するシナリオだ。

 ADKのTOBによる非上場化は、筆頭株主の英WPPを排除することが最大の目的だった。ADK=ベイン陣営がWPPに完勝した。両社の抗争を振り返ってみよう。

筆頭株主と2位株主がTOBに反対

 ADKは10月2日、同社株式の24.96%を保有するWPPとの資本提携関係の解消と、ベインキャピタルの買収提案を受け入れると発表した。ベインはADK株のTOBを実施。1株あたり3,660円で買い付ける。総額は最大1,517億円。

 これにWPPは猛反発。続いて、17.11%を保有する第2位株主の英資金運用会社、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは、ベインによるADK買収に反対すると表明。ベインが提示したTOB価格が著しく安いと主張し、対抗的買収の提案を呼びかけた。さらに、香港を拠点とするヘッジファンドのオアシス・マネジメントカンパニーも、買い付け価格が低すぎるとして、TOBに反対する考えを表明した。

 TOBの成立には50.1%以上の株主の応募が必要。株式市場では、TOBの成立は難しいという見方が支配的だった。

 WPPは追い打ちをかける。ADKからTOBにともない、提携と持ち合い解消について通知をうけた後、WPPは「解約通知は無効だ」として日本商事仲裁協会に仲裁を申し立て。株式売却請求権を行使しないように求める仮処分を東京地裁に申請した。

 ADKは「TOBの結果に関わらず、WPPとの提携関係を解消させる」意向を表明。WPPはTOBが不成立に終わった場合には、もっと多くのADK株を保有する意向を示した。ADKとWPPの応酬は、終わりの見えないドロ試合の様を呈していた。

(つづく)
【森村 和男】

 
(後)

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