2024年04月28日( 日 )

50代はツライよ ビジネス人生は

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 いつも明るく冗談が好きなA部長の顔色が冴えない。マスク姿だ。つい先日、訪問した時のことだった。最初に出てきた言葉が、「50代って複雑だよ」。どうしたA部長。いつものように、オチがあると思っていたが、続いたのは回避し難い組織の事情だった。

 全国大手の地方支店で部長職。本社の意向が絶対だ。支店内ではある程度の裁量があり、複数の部下もいる。複雑な事情の始まりは部下の勤務態度への注意だった。全体ミーティング中に、明らかにたるんでいた若い部下が目について仕方なかった。部長は全体の士気に関わると、部下を別室に呼び出し、注意を促した。これまで自分が培ってきた仕事観では当然だと思った。

 しばらくして、本社から思いもかけない通達が来た。「部下への行き過ぎた指導があったのではないか」というもの。注意した部下が恐怖を感じたことで、精神的に追い詰められたという訴えがあがってきているという。本社には、「そんなことはない。常識の範囲内で、これまで私が教えられてきたことだ」と、意見したが、取り合ってもらえない。「その前に、まず謝罪しなさい」と本社の弁。

 社員による内部事情の暴露がネットで出回る昨今だ。社内的には、不満分子は抑え込みたい。A部長が謝まり、和解することが会社にとって最善策だと言えるのだろう。それでもA部長は納得いかない。引けば、自分のビジネス人生が否定される。結局、A部長が部署異動で責任を取らされる形で始末がついた。

 会社を飛び出すまでは考えなかったが、会社に貢献しようという気持ちは大きく削がれた。会社よりも自分の下につく後輩社員の5年後10年後のために、力を注ぎたい。そう言って、マスクを外した部長。すっきりしたのか、それからいつもより長く冗談話が続いた。

 

 

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