2024年04月29日( 月 )

日立エレベーター、安全宣言も 工事中断でゼネコン悲鳴

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 12月19日、(株)日立製作所はエレベーターに係る国土交通大臣認定の不適合とともに、安全確認および是正措置を発表した。いわば「安全宣言」ともとれる発表だったが、何事もなく終わるというわけにはいかないようだ。すべての不適合が確認された後、日立エレベーターの工事が一時中断、完了検査もストップした。その期間は約2週間。一部のゼネコンは、事態の詳細を知らされることなく、工事中断を余儀なくされていたことがわかった。工期の遅れが今後の補償問題に発展する可能性もあり、当事者らは不安を抱えたまま年末を迎えることになる。

納期に間に合うか 一部のゼネコンから焦り

 日立製作所は19日、国交省大臣認定に適合していないエレベーター約1万2,000台を設置していたと発表した。指定性能評価機関により、すべてのエレベーターで安全性は確認されている。不適合を是正し、新たに大臣認定を取得したため、設置済み・着工済みのエレベーターは現在の仕様のままで利用できるという「安全宣言」だ。

 「過去に不適合はあったものの、是正したので、ご安心ください」という発表に見て取れるが、まだまだ安心できない立場の人もいる。悲痛な叫びが届いたのは、福岡市内のゼネコン社員からだった。「12月初めから日立エレベーターの工事が中断、施工完了後の検査も受けられず、建物引き渡しに影響が出ている。日立の営業担当に尋ねても、明確な中断理由が出てこなかった」――ゼネコンの不安を掻き立てたのは、工事中断の理由がわからないことだった。いつ再開できるのか、そのめども立たないまま、納期だけが近づいてくる。現場担当者の焦りは容易に想像がつく。

工事中断は不適合によるもの

 日立ビルシステムの広報担当者は、工事中断について、今回の不適合に起因するものと認めた。不適合が発覚した経緯は以下だ。最初に不適合が発覚したのは今年8月末。新製品の開発時に、大臣認定のスペックを用い、試験を行ったが、実際にはじき出された数値と理論値に大きな食い違いが生じた。速度監視装置のプログラムを見直したところ、不適合が発覚。以降、すべての大臣認定を確認し終え、不適合全9件がわかったのは11月28日だったという。

中断決定も公表はなし

 日立ビルシステムは12月4日に工事の一時中断を決定、社内に通知したというが、対外的な公表(ニュースリリース)は行っていない。以降、日立の営業担当者から施工業者へ工事中断が通知されたが、その理由の詳細は明らかにされていない。工事中断を公表しなかったことについて、同広報は「個別に事情が異なるため、コメントは差し控えますが、担当者によって、対応が異なっている可能性もあるので、迷惑をかけたかもしれません」と話した。

工事再開も納期に間に合うか

 12月4日から19日まで事実上工事が中断され、検査も進められなかったことになる。ゼネコン社員の話からも、工期が遅れ、引き渡しに支障が出ているのは間違いないようだ。年始は引き渡しを予定している物件が多い時期だけに、補償問題へ発展する可能性もある。同広報は「実際にそのような事態になれば、真摯に対応する。個別案件なので、そのような問い合わせが来ているかどうかも含め、答えられない」としている。

 20日以降、工事は再開されているはずだが、2週間という時間を取り戻すのは楽な話ではない。なかには、納期を守るため年末年始、休み返上という施工業者もいるだろう。発覚した事実を隠蔽せず、公表したことは評価できるが、施工業者への説明不足は否めない。全国のゼネコンにとっては、なんとも後味の悪いニュースリリースとなってしまった。

【東城 洋平】

▼関連リンク
・エレベーターの戸開走行保護装置(UCMP)における国土交通大臣認定に対する不適合について

 

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