2024年04月29日( 月 )

富士フイルムHD 米ゼロックス買収計画頓挫は凶報か

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 米事務機器大手のゼロックスは13日、富士フイルムホールディングス(HD)による買収契約を終了することを発表した。
 態度を二転三転させたゼロックス経営陣は、最後にカール・アイカーン氏ら「物いう株主」側についた。

 富士フイルムHDの古森重隆会長は当初、買収計画について25億ドルの特別配当を実施することで「物いう株主」を納得させることに自信を示していた。しかし、アイカーン氏ら大株主は富士フイルムHDが自己資金を拠出しない特殊な買収スキームを用いることや特別配当がゼロックスからなされることを批判。裁判所に差し止めを求める訴訟を提起し、ニューヨーク裁判所は4月27日に差し止めを認める仮処分を下した。ゼロックス経営陣は5月1日に大株主と和解するが、3日に和解案が失効し、4日仮処分決定を不当として上訴した。富士フイルムHDに同調したと見られていたが、再度大株主と和解し富士フイルムHDとの買収合意を終了した。富士フイルムHDはゼロックスには「一方的に契約を終了する権利がない」とするコメントを発表。14日時点で訴訟や損害賠償の可能性を示唆し、買収再編への意欲を失っていない。
 特殊な買収スキームが「物いう株主」の標的とされることは、当初から懸念されており、買収計画のとん挫はある面で予想通りの展開だ。
 もともと、今回の買収は北米市場のペーパーレス化で苦戦するゼロックスを富士フイルムが救済するという色合いをもっていた。さらなるペーパーレス化が必至のなかでの買収には賛否あった。

 近年、富士フイルムHDは、「診断」から「予防」そして「治療」分野へと業容を拡大し「総合ヘルスケア企業」として評価を高め、同分野へM&A同事業を含めた投資を積極的に行ってきた。富士フイルムHDが安定的な収益を上げる富士ゼロックスを傘下にもっていたことで、新事業への投資資金を確保できたのは事実だが、ゼロックスを統合したとして事務機器部門が今後どれほどの期間、安定的に収益を上げるかは不透明だ。
 今回の買収計画頓挫は、事務機器の買収再編に見切りをつけ、ヘルスケアのイノベーションに注力する契機となり得るのではないか。市場が巨大な同分野で目覚ましい実績を上げてきた同社がさらなる飛躍を遂げるチャンスだ。
 ゼロックスの買収合意破棄は富士フイルムHDにとって吉報にできる可能性がある。

 

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