自然がおかしくなっている

福島自然環境研究室 千葉茂樹

 岩手の家にメンテナンスにきています。家の周囲の状況から、自然がおかしくなっていると感じます。家の庭は、父が死ぬ前に「草取りが面倒」とコンクリートにしました。このコンクリートも経年劣化で縦横にひび割れができています。このひび割れに、アリが巣をつくり、スギナが生え、対策をしても、アリはそのまま。スギナは出てくるという状態でした。

 ところが、今夏はアリがまったくいなくなり、スギナも枯れていました。おそらく高温のためと思います。

 家の北側にも小さなアリがいて、一昨年は脱皮したばかりのセミに集団で襲いかかり、生きたままのセミを食料にしていました。そのアリもまったくいません。その代わりに、カマドウマが増えて、高温で死んだミミズや昆虫を食べています。

 余談ですが、脱皮したばかりのセミの最大の弱点は「翅(はね)の付け根」です。折りたたまれた翅に血液が流れて伸びていきますが、根元の血管が食いちぎられると翅はそれ以上大きくなりません(セミの血液は、青緑色です)。アリはここを狙って攻撃し、肉団子にします。

 30年ほど前、日中に脱皮したセミがハチに攻撃されたのを見ました。ハチを追い払いましたが、セミの翅は伸びず、次の日見たら、多分、鳥に食べられて翅だけ残っていました。

 話は戻って、家の周辺では、人間のつくった人工物(コンクリート、トタン屋根など)が太陽によって高温になります(樹木や草原は高温にはなりません)。毎日、散水します。基本的に焼け石に水ですが、しないよりはましです。都市部が、異常に高温になるのは、このためです。そのうち、高温になりすぎて、都市部に住めなくなるかもしれません。

 千葉の本家は、昨年4月末に住人(私のいとこ)が出ていき、5月から東京からの移住者が住んでいます。本当の山奥(北上川の近く)です(岩手サファリパークの近く)。江戸時代には水運が主体でしたので、当時は住みやすい場所でした。しかし今は、川のほとりで交通の便が悪く、住みにくいところです。

 昨年春に本家の見納めで、数日、周辺を歩きましたが、野生動物がたくさん住んでいる痕跡がありました。屋敷の敷地に、タヌキの「タメグソ」がありました(野生動物は、縄張りのためにふんをモニュメントにする場合があります。私は山のなかで、クマのふんの集積を見ました。よく見ると獣道の交差点でした)。

 現状の高温気候が続いた場合、10年後には「この東京からの移住者の選択が正しかった」ということになりかねません。なお、私の子どものころは、真夏でも30℃になることはまれで、30℃以上の日はひと夏で1~3日程度でした。ところが今は、家の周りがコンクリートなので(父が、草取りが面倒とコンクリートにした)、連日35℃程度になっています。家のなかでも33℃程度です。

 毎年こんな高温になっていますので、自然がおかしくなっても不思議ではありません。それから、昨日、栗原市の親戚の家に行きましたが、周辺の水路の水位がかなり低下していました。米に影響が出ないとよいのですが。


<プロフィール>
千葉茂樹
(ちば・しげき)
千葉茂樹氏(福島自然環境研究室)福島自然環境研究室代表。1958年生まれ、岩手県一関市出身、福島県猪苗代町在住。専門は火山地質学。2011年の福島原発事故発生により放射性物質汚染の調査を開始。11年、原子力災害現地対策本部アドバイザー。23年、環境放射能除染学会功労賞。論文などは、京都大学名誉教授吉田英生氏のHPに掲載されている。
原発事故関係の論⽂
磐梯⼭関係の論⽂
ほか、「富士山、可視北端の福島県からの姿」など論文多数。

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