博多駅から徒歩圏内や天神エリアでは、ホテル開発用地の売買において、坪2,000万円を超える取引が今年に入ってから複数確認されており、感覚的には1年前と比べて2~3割は高騰している印象もある。地価調査は取引事例も影響するが、毎年7月1日時点の評価という点を踏まえると、現在の中心部の地価は実態よりも低く評価されている可能性がある。この点について、不動産鑑定士の扇幸一郎氏は次のように話す。
「地価公示や地価調査で公表されるのは、あくまで『正常な価格』です。売主や買主の個別事情によって変動する実勢価格とは乖離する場合もあります。また、実勢価格は徐々に評価に反映されていきますが、『正常な価格』として評価するためには、一定の期間と複数の事例が必要であるため、地価に反映されるまでには時間がかかるのです」。
不動産鑑定評価には、「取引事例比較法」「収益還元法」「原価法」「開発法」といった手法がある。収益還元法は、将来的に得られる収益を基に不動産の価値を評価する方法であり、賃貸マンションであれば賃料、ホテルであれば宿泊料から経費を差し引いた純収益を基に価格を算出する。ただし、とくに「正常な価格」の評価においては、こうした手法は反映に時間を要する傾向があるという。
天神ビッグバンや博多コネクティッドの進展により、福岡市内中心部では多くの大型オフィスビルが竣工を迎えている。三鬼商事(株)によれば、今年9月時点の福岡ビジネス地区の空室率は4.87%で、3カ月連続で低下しているほか、前年同月比でも改善している。これを「新築オフィスビルの床が順調に消化されている」と判断するのは早計だろう。
新ビルへの移転需要は高まっているものの、移転先におけるB工事(内装や設備工事など)の手配に時間を要する傾向があるためだ。福岡のテナント仲介会社によれば、「現時点では、再開発にともなう二次空室の発生は限定的」なのだという。
また、コロナ禍以降に活発化したホテル開発に関しても、実際に稼働を開始したホテルはまだ少ない。宿泊市場も好調で、既存ホテルへの影響はまだまだ限定的だろう。今後、オフィスの二次空室が本格的に顕在化し、新築ホテル、とくに大型ホテルが開業し始めた際には、どのような影響が現れるのか注視したい。
【永上隼人】

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