スマートヘルスケア市場の現状と課題(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
現在、世界的に高齢化が進んでいる。それと同時に医学技術の発達により、以前は治療ができなかった疾病治療が可能となり、各国で医療費が増大している。このような問題の解決策として、各国の政府は、医療費の増大を抑えるため、病気になってから治す治療から、病気になる前に自分の体を管理する予防へとパラダイムシフトさせている。
一方、モバイルの普及、IT技術の発達などで、最新のテクノロジーを活用した医療サービスであるスマートヘルスケアに注目が集まっている。ビッグデータ、IoT、人工知能などの4次産業革命の波は、医療産業にまで波及し、いつ、どこでもヘルスケアサービスを受けられる時代が到来しつつある。まさにIT技術と医療サービスが融合し、各個人向けのヘルスケア製品・サービスが日常生活に深く浸透しようとしている。
実際、韓国では高齢化が世界最速レベルのペースで進み、それによって高齢者の慢性疾患と罹患率が急激に上昇している。その結果、1人あたりのヘルスケア関連支出は大幅に増加する傾向にある。OECDの統計によると、韓国のヘルスケアの1人あたりの支出が1995年度は12万ウォンであったのに対し、2014年度には228万ウォンに増加している。
このような状況なので、韓国医療保険の支出は今後、大幅な伸びが予想され、韓国の国民健康組合は赤字に陥ると予想されている。赤字額は2020年には6兆3千億ウォン、2030年には28兆ウォンになると予測されている。
韓国はIT技術を活用したヘルスケアサービスを新しい成長分野として注目し、ヘルスケア分野に投資が集中している。ベンチャーキャピタルの投資額は年平均で37%ずつ増加し、2017年には7,500億ウォンの投資が実行された。市場の背景としては、スマホの普及、データ通信速度の増加、多様なウェアラブル機器の発売、データ分析技術の発達で、低いコストでもヘルスケアサービスを受けられるようになったことなどがあげられる。ヘルスケア市場にはアップル、Google、ナイキのようなグローバル企業はもちろん、既存の医療機器メーカーなども続々参入している。製品としては、時計、バンド、枕、ネックレス、オムツなど多様化している。機器は小型化、軽量化が進められ、普及とともに価格も下がっていくだろう。
スマートヘルスケア産業の市場規模は2007年1,431億ドル、2018年には2,987億ドルで、年平均33.7%の成長をすることが見込まれている。
現在のスマートヘルスケア機器は体重、体脂肪、心拍数、血糖などを測定している。最近になって、血液酸素濃度の測定、ホルモン分泌量の測定、薬物服用の可否、心臓疾患の診断など範囲が拡大されつつある。今後は測定したデータと病院のデータが連携していくことになるだろう。
それでは、スマートヘルスケアとは何だろうか。スマートヘルスケアとは、IT技術を活用して、病院まで行かなくても自由に利用できる医療および健康管理サービスのことを指す。これまでのように保健所などを訪問することなく、スマホのアプリを使って、ヘルスケアサービスが受けられる。アプリで毎日の運動、食事の情報などが医者や看護師などの専門家に提供され、異常があるときには連絡が来る。
(つづく)
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