【徹底追及】国会議員秘書と金塊密輸犯を結ぶ、点と線（中）

　政界の名門一族「鳩山家」に付き従う議員秘書が、国税庁幹部に圧力をかけたとされる疑惑。じつはこの疑惑には、まだ続きがあった。大手メディアでは報道されることのなかった事実について取材を進めると、東京―福島―北海道を結ぶ、闇の勢力との関係をうかがわせる不可思議な「点と線」が明らかになった（前編）。

存在しない？宝石の流れ

　国税庁がつかんでいる宝石の流れはこうだ。まず、宝石売買の最上流、もともと宝石を持っていたとされるのが北海道に本社を置く「創造」。創造から宝石を仕入れたのが、金塊密輸事件で逮捕されたXが代表者のAQUA。国際東日ジュエリー（東日）はAQUAから宝石を仕入れ、最下流である免税店運営会社4社に宝石を卸した。免税店運営会社4社の名は、クラウン・ジェイ、信宇、インターナショナルビジネスネットワーク、パプリカ・エージェンシー。IBNをのぞいてすべて中国系、あるいは韓国系と思われる名前が法人代表として登記されている。

創造とAQUA

　データ・マックスでは東日を中心とする宝石売買グループすべてについて、現地取材を行った。その結果、ほとんどの企業が実態のない事実上のペーパーカンパニーであることがわかった。以下に掲載するのは、国税庁が架空取引とみる宝石の流れについて、関係各所への取材で判明した事実だ。

建設業「（株）創造」

　問題の宝石を仕入れ、AQUAに卸したとされる「創造」の登記上本社は北海道札幌市にある。本社が入るとされる建物は古びた3階建て。2、3階はアパートとおぼしきドアが並ぶが、郵便ポストに創造の名前はなかった。1階に入るトランクルームオフィスの従業員に話を聞くも、「何もわからない」と繰り返した。また、代表の自宅とされる札幌市内の住所には、違う名前の表札がかかっており、呼び鈴を押しても反応はなかった。
　創造のHP上にかつて記載されていた札幌市内の住所2カ所は、地元でも有名な高級マンション。いずれも住居使用が主で、ポストなどに会社名はなかった。

　その後の取材で、創造が福島県相馬市へ移転していることが判明している。創造の代表電話とされる番号にかけたところ、まったく違う法人の代表とつながった。法人代表は、かつて創造の代表を「間借り」させていたことを認めたものの、仕事上のトラブルで退去したと証言している。取材の趣旨を伝えると、「創造の代表に（記者の）連絡先を伝える」と話していたが、出稿までに連絡はなかった。

宝飾品卸「AQUA（株）」

　創造から宝石を仕入れ、国際東日ジュエリーに卸したとされる宝飾品卸「AQUA（株）」。登記上の本社は新宿区歌舞伎町に立つビルにある。1階にコンビニエンスストア、地下に韓国カラオケ店の入る7階建ての雑居ビルだ。郵便ポストにAQUAの名前はなく、各階すべてのドアなどを確認するもAQUAの表札や看板はなかった。築年数の進んだ古びたビルで、韓国語教室や韓国語DVD店などが入っている。韓国語教室の従業員などにAQUAについての話を聞くが、「わからない」と話していた。

　代表者の自宅とされる札幌市の住所には、一戸建の住居が建つ。登記上は会社の旧住所とされるが、代表者の表札とともにまだAQUAのプレートがかかっていた。何度か呼び鈴を押すが、応答はなかった。近隣住民は、「接触がないので、住んでいるかどうかもわからない」と話している。

（つづく）
【特別取材班】