【18年W杯】明日なき日本、涙の敗退 日本2-3ベルギー

健闘およばず、日本代表ベスト16で敗退

 ベルギーMFシャドリが逆転のゴールを決め、直後に審判が試合終了を告げるホイッスルを吹くと、ひざからがっくりと崩れ落ちたDF昌子源は両手で何度もピッチを叩いた。試合後、インタビューに応じた選手たちの多くは、眼のふちを赤く染めていた。
 後半、MF原口元気とMF乾貴士の息をのむようなスーパーゴールで、誰もが想像だにしなかった2点のリードを得た日本。しかしDFフェルトンゲンの折り返し気味のヘディングがGK川島永嗣の頭上を越えてゴールネットに吸い込まれ、交代で入った巨漢MFフェライニはセットプレーでMF長谷部誠を悠々と圧倒して同じくヘディングシュートを叩きこむ。試合は後半大きく動いたが、同点以降は自力で勝るベルギーが終始日本を圧倒する展開だった。
 最後はアディショナルタイム。CKをキャッチしたGKクルトワが素早いスローイングでボールを前線に送り、数的優位の状態で日本守備陣の選択肢を奪い、教科書通りの決勝ゴールを奪った。

「次の4年」のためのステップ

 FIFAランキング3位のベルギーに対し、61位の日本はよく戦った、感動をありがとう……という姿勢の論評を見かけるが、しかしサッカーは続く。W杯は4年に1度だが、4年間、いやそれ以上の積み重ねと継続がその国のサッカーの強さをつくるのだ。不当に解任されたバヒド・ハリルホジッチ監督は「次の4年」へのバトンタッチまでを意識した選手選考と起用を行っていたが、監督解任後に発表された今回のW杯代表選手陣にはベテランが勢ぞろい。今回、圧倒的な存在感を見せ、お茶の間の皆さまにもしっかり覚えられたMF柴崎岳は4年後のカタールW杯では30歳。合計2ゴールを決めた乾は34歳と、年齢的にはそれぞれ今回のW杯が選手としての絶頂期であろう。今回ピッチに立った日本選手たちのなかで「次」に挑めるのは柴崎、昌子(25歳)、ベテラン枠でDF酒井宏樹(28歳)というところではないだろうか。ベルギーがベンチにMFティーレマンス(21歳)、FWヤヌザイ(23歳)、FWバチュアイ(24歳)を残していたことと比べると、暗澹たる思いになる。

 西野朗代表監督のここまでの尽力に敬意を表すべきなのは当然だが、「準備期間の短いなかで」という論調にはハッキリ異を唱えたい。大型選手投入など相手の変化に対応できない柔軟性を欠く戦術、ポーランド戦での機能しないスターティングメンバーの起用など、采配面でも疑問は残る。しかし最大のポイントとして、本番2カ月前のハリルホジッチ監督解任には、田嶋幸三会長はもちろん西野氏にも技術委員長として多大な責任があるのだ。そもそも、解任の責の一端を担う立場の西野氏がハリルホジッチ監督を追うかたちで代表監督の席に就くこと自体大きな問題があった。この大きな問題を清算することは今後の日本サッカー界を考えるうえで必須だ。

 ハリルホジッチ監督解任の経緯については、「1円」の損害賠償を日本サッカー協会に求めたハリルホジッチ監督の裁判の途上で明らかになることもあるだろう。すでに今日の新聞には、「次期監督は○○氏か」と有名外国人監督の名前が躍っている。メディアを利用しようとする日本サッカー協会とそれに易々と乗るメディアの馴れ合いが、早くもスタートしているわけだ。

 「こんなときに、無粋なことをいうな」という声もあろう。しかし「結果オーライ、都合の悪いことにはフタをする」という日本的な、なあなあで「丸く収める」やり方では問題は何も解決しない。W杯の結果は結果として、検証すべきことはしっかり検証する。それが次の4年へのスタートであり、日本にサッカー文化が根付くための大きな一歩である。

【深水 央】

 

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