2024年04月27日( 土 )

鹿児島経済の「顔」たる資格はあるか?(後)~苦境に立ついわさきグループ

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「インターローカル」の先に

 いわさきグループの置かれている状況は、決して同グループだけに限った話ではない。周知の通り、全国的に地方交通産業は赤字経営が多く、とくに離島航路では、島人口の減少と燃料費の高騰で公的補助がなければ運営できないという話も珍しくはない。観光産業では、インバウンドの活況にわくなか、老朽化や耐震性不足による施設の建替えに直面し、費用を捻出できない老舗業者が、資本力のあるグループ会社に承継(売却)するケースが増えてきた。

 いわさきグループは、韓国・現代自動車のバス・トラックの販売など、新事業も始めている。しかし、グループ全体で利益を確保している交通関連の他社グループと比べると、物流や不動産開発といった交通部門の損失を補って余りある稼ぎ頭の事業を見出だせていない。

 グループが置かれている社会の状況について3代目・芳太郎氏は、「東京一極集中による首都圏および東海圏の1人勝ちとは裏腹に、地方は長引く経済の低迷に加えて地方産業の衰退、民営化や財政難などでの地方切捨てのダメージも大きく、文化・経済の両面で地域の自立性と独自性が見失われ、将来の展望を見出せない状況にあります」(同グループ関連サイトより)と分析している。

 弊誌の過去のインタビューでは、官僚や大手企業の「民寮」と地方が対立する構造的問題であると指摘し、「常に蚊帳の外にいるのは地方の民間人です。正確にいうと、昔はそのなかでも我々が何とか格好をつけていたのは、政治を通じてそこに対抗しえていたからです。その象徴が田中角栄であり、新幹線や高速道路です」と語っていた。

 芳太郎氏は、状況を打破するために地域社会が国家や行政の枠を越えたネットワークを構築する必要性を説き、執筆活動を通じても地方企業の経営者に檄を飛ばしていた。13年11月の鹿児島商工会議所の会頭就任以来、鹿児島経済のリーダーとして発言力を強め、政治力に頼ることも辞さず、事業環境の改善に取り組む姿勢も見受けられる。

鹿児島商工会議所を私物化

 ただし、“なりふり構わず”という姿勢には疑問を抱かざるを得ない。独自の調査報道でスクープを報じるニュースサイト「HUNTER」は6月19日、今年7月30日に開催を予定している三反園訓鹿児島県知事の政治資金パーティー(会費2万円)をめぐり、鹿児島商工会議所が商工会議所法の規定に抵触する政治活動を行っていた事実を報じた。

 内容は、「政治資金パーティー実行委員会の連絡先として事務所内に会議所系政治団体『鹿児島県商連政治連盟』の活動拠点を設け、会議所の代表電話とFAXを、政治活動に使っていた」というもの。芳太郎氏は、鹿児島県商連政治連盟の会長を務めており、この政治資金パーティーの発起人会の委員長として2,000名の参加を目標に、多数の参加を呼びかけている。

 案内文の書き出しは、前出の芳太郎氏の持論だ。「我が国の経済は、大都市と地方都市、大企業と中小企業の間に大きな格差が生じており、地方の中小企業は、市場競争の激化や人材確保の困難化など、極めて厳しい経営環境に晒されております」(政治資金パーティー案内文より)。三反園知事の政治活動に自分の想いを重ねている様子がうかがえる。

 バスやフェリーなど交通産業を担ういわさきグループは、行政庁との利害関係を否定できない存在でもある。芳太郎氏は、三反園知事が初当選した16年7月の知事選では、その対立候補であった伊藤祐一郎前知事を支援しており、節操のなさも目につく。

 しかし、芳太郎氏が、中央一極集中を切り崩す地方のリーダーとして期待を寄せる知事は、「就任から2年を迎えようとしている三反園訓鹿児島知事の夫人を、見たことのある(鹿児島)県民は一人もいない」(「HUNTER」18年6月29日)という人物。報われない応援活動の末に家業が傾くという結果にならなければいいが・・・。

(了)
【山下 康太】

▼関連記事
・鹿児島商工会議所に法令違反の疑い 三反園知事資金パーティーで政治活動(ニュースサイト「HUNTER」)

<COMPANY INFORMATION>
岩崎産業(株)

代 表:岩崎芳太郎ほか2名
所在地:鹿児島市山下町9-5
設 立:1928年4月
資本金:8,000万円
売上高:(17/3)180億600万円

いわさきコーポレーション(株)
代 表:岩崎芳太郎ほか1名
所在地:鹿児島市山下町9-5
設 立:1943年4月
資本金:8,000万円
売上高:(17/3)55億1,800万円
※グループ全体の年商:(17/3)約450億円
 

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