• このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年07月27日 10:19

小中学校エアコン設置率の格差は教育方針の違い?~長崎市「暑さに耐えることも教育」

設置率第2位は香川県97.7%

 ※クリックで拡大

 文部科学省の調査によって、都道府県によって格差があることが明らかになっている公立小中学校のエアコン設置率。とくに設置率が低い自治体では、エアコン設置をめぐる議論が活発になり、設置を進める自治体も少なくはない。

 文科省は今年4月、学校環境衛生基準を一部改正。学習環境として望ましい教室の温度を、「10℃以上30℃以下」から「17℃以上28℃以下」にした。7月17日、愛知県豊田市で小学1年生の男児が熱中症で死亡する痛ましい事故が発生し、低設置率の自治体では、保護者を中心に危機感が強まっている。

 文科省のデータによると、比較的涼しい北海道・東北などを除けば、夏場(7月)の平均気温や最高気温にはさほど差がなく、設置率に影響しているようには思えない。また、自治体の規模も関係なく、公立小中学校の普通教室におけるエアコン設置率は、第1位の東京都99.9%に僅差で続く第2位は香川県97.7%となっている。

 この結果について香川県教育委員会は「2010年の猛暑を受けて、県内の各自治体でエアコンの設置が進んだ」と説明。県庁所在地である高松市の教育委員会は、「(10年の猛暑の後)県西部の自治体で設置が進み、現市長(大西秀人市長)が全小中学校・全教室へのエアコン設置をマニフェストに盛り込み、12年から14年末にかけて整備が進んだ。それまでは普通教室にまったく入っていなかった」と話す。同マニフェストは、エアコン設置について「次代を担う子どもたちがしっかりとした学力を身につけるとともに、夢や希望をはぐくみ、強い心と優しい心を養えるため、ハード、教育環境の整備の一環」としている。

 一方、近年の異常ともいわれる暑さについて違った捉え方をする自治体もある。南国・九州で唯一の設置率1ケタ台であり、夏場の平均気温が低い北海道・東北の道県がひしめくなか、エアコン設置率ワースト10に入った長崎県(8.6%)。そのうち、設置率が『小学校4.0%、中学校1.7%』の長崎市では「暑さに耐えることも教育」との考え方に基づき、図書室や職員室、保健室といった特別教室の一部にのみエアコンを設置。長時間、児童が勉学する普通教室には壁掛け式扇風機を設置している。同市教育長・馬場豊子氏の市議会における以下の答弁は、エアコンを設置しないことは、決して予算の問題ではなく、市の教育方針であることを強調したものだ。

 「エアコンの設置については費用の問題ではなく、季節にともなう自然の変化のなかで、暑さや寒さを感じ、体内の環境を一定に保つ適応能力を高めることが必要」

 全国の自治体で設置率に格差が生じている背景には、近年、毎年のように問題となっている夏場の気温上昇を受けて、『大人たちが、子どもたちの学習環境をどのように考えていたか』が影響しているようである。たしかに第3位は、教育に力を入れることで有名な福井県(86.5%)だ。

エアコンよりもMICE施設?

※クリックで拡大
 ※クリックで拡大

 もちろん、長崎市の大人たちが皆、馬場教育長のように「暑さに耐えることも教育」と考えているわけではない。長崎市議会では、何人もの市議が、市民を代表してエアコン設置を要請。市民の間でも設置を求める声が広がっている。これに対し、市は、5月に温度・湿度を計測する熱中症計を全教室分配布し、「詳細な調査を実施したうえで、エアコンの設置について判断」(市教育長)するとした。

 エアコン設置を訴える市議の1人、平野剛市議は、市内小中学校107校、全教室2,239教室へのエアコン設置費用を1台単価190万円として、高圧受変電設備の増設を含めて約60~70億円と試算。「もはや、扇風機で対応できるような暑さになっていません。教室での授業中に死者が出るというような悲劇も、想定して考える暑さに突入しているように思えます」として、SNS上でも設置への賛同を呼びかけている。

 エアコン設置をめぐる議論が行われた6月議会では、現市長・田上富久氏(3期目)が宿願とするMICE施設の整備費を含む補正予算案約72億8,000万円が可決された。「エアコン設置に回す金がない」といえば、いまだ多くの市民が懐疑的に見るMICE施設への批判が再燃するだろう。MICE施設の後には、新市庁舎の建設が控えている。

 交流人口の増加による経済効果をねらった公共施設の建設計画だが、その一方で、子どもに冷たい施策が、子育て世代を始め、人口減少の要因となっていないか。長崎市は、2015年の国勢調査で、人口減少全国ワースト2位である。前回調査(10年)から1万4,258人減っていた。

 自治体によっては当たり前のように設置されている小中学校のエアコン。子どもたちの学習環境におけるインフラと考え、最優先で整備すべきではないだろうか。

【山下 康太】

▼関連リンク
・「設置ゼロ」の長崎市で小中学校エアコン設置論争~「暑さに耐えることも教育」

キーワードタグ:長崎  ※記事へのご意見はこちら
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年07月09日 10:12

「芸術は道楽か?」NEW!

 福岡を拠点に、絵画や演劇など幅広い芸術活動を行う芸術家・中島淳一氏。同氏による日本と欧州の芸術に対する姿勢についての論評を以下に紹介する...

2020年07月09日 07:00

「プラネスト」シリーズを核に、求められる企業へ~トラストライフ(株)NEW!

 トラストライフ(株)は、大牟田市を拠点に、幅広い地域で自社オリジナルブランドマンション「プラネスト」シリーズを供給している...

2020年07月09日 07:00

住宅需要は福間駅周辺がダントツ 福岡都市圏北部のJR沿線(前)NEW!

 JR福間駅の周辺は、近年とくに人気が高いエリアだ。もともと駅周辺では、駅北側から県道97号にかけてのエリアで商業地と住宅地が混在するほか、JR線路沿いの光陽台などで...

2020年07月09日 07:00

働く場所への脱皮を図る唐津市~「唐津コスメティック構想」実現に向けて(後)NEW!

 唐津市は、仏コスメティックバレーの在り方を学ぶにあたり、コスメティックバレーの設立時から運営に携わるアルバン・ミュラー氏を招聘...

2020年07月09日 07:00

変貌しつつある大阪港~アフターコロナ時代の万博を 実現できるか?(2)NEW!

 大阪港には、夢洲のほか、舞洲、咲洲などの人工島がある。面積約220haの舞洲には、スポーツアイランド、障がい者スポーツセンター、ごみ焼却工場などが立地している...

2020年07月09日 07:00

【PR/子育てのまちに住む】みやき町で分譲開始 福岡技建工業NEW!

 福岡技建工業(本社:福岡市博多区、迫野譲二社長)が、佐賀県三養基郡みやき町で分譲地の販売を開始した。JR長崎本線「中原駅」から徒歩13分、学区は中原小学校・中原中学...

2020年07月08日 17:06

(株)ウィンコーポレーション(東京)/フードプロバイダー

 同社は7月3日、東京地裁より破産手続開始決定を受けた。

2020年07月08日 16:54

球磨川水害現地から 前代未聞の降水量~(株)味岡社長・味岡和國氏が水害と地域の本質を語る

 九州豪雨による死者が7日の時点で56名に達した。熊本県の球磨川およびその支流域で被害が深刻であり、人吉市18名、球磨村17名、芦北町10名、八代市4名、津奈木町1名...

2020年07月08日 16:44

【コロナ禍】文化芸術こそ「社会と生存の必需品」~劇団わらび座・山川社長大いに吠える

 新型コロナウイルスの感染がなかなか収束に向かわないなか、「劇団わらび座」が依然として苦境に立たされている。代表取締役・山川龍巳氏からメッセージ転載する...

2020年07月08日 15:54

久留米市、避難勧告を解除

 久留米市は8日、午後1時45分に洪水警報が解除され、河川氾濫の可能性が低くなったため...

pagetop