2024年04月20日( 土 )

注目される西中洲樋口建設グループの動向

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博多エステートビル
 博多エステートビル

 今年5月に廃業届を提出し、福岡市発注工事のJVから脱退した西中洲樋口建設(本社:福岡市中央区、樋口征男代表)。同社は廃業直後に社長を交代させ、新たな建設業許可を福岡県に申請しているが、仮に許可が下りても、これまで通り「西中洲樋口建設」の看板で大型公共工事を受注することはできない。そこで注目されているのが、同社の代表が事実上の「支配者」とみられる関連企業の動向である。

 福岡市博多区比恵町に1棟のオフィスビルがある。1階に井上貴博衆議院議員の事務所がある「博多エステートビル」は、2006年12月に西中洲樋口建設の樋口征男現代表が夫人との共同名義で、太田誠一元農林水産大臣から購入したもの。その後、樋口一族の資産管理会社とみられる「竹屋」が2014年5月に購入している。竹屋には樋口代表の息子で、廃業届提出の直前まで県議会議長を務めていた樋口明氏が取締役に就任していることがわかっている。

 同ビル2階の入居者が興味深い。樋口グループの「博栄建設」「大社建設」、元福岡市副市長が創業した「福岡ユース企画」と、いずれも樋口代表の息がかかった会社が並ぶ。福岡ユース企画の幹部は、「博多座」の元社員。樋口代表の指示を受け、市関係者のもとを訪れることもあるという。

 業界での信用を失ったかたちの西中洲樋口建設に代わり、市発注工事の受注を増やすと見られているのが前出の「博栄建設」と「大社建設」。このほか、西中洲樋口建設の本社ビルに入居している「筑糸建設」も、規模は小さいながら公共工事の受け皿だ。

 下は近年、西中洲樋口建設グループが福岡市などから受注した官庁工事のリストである。いずれも福岡市発注工事を毎年着実に受注しており、公共工事に強いグループだ。グループの軸となるのは博栄建設。17年9月期で売上高は約16億6,000万円で、株主や役員には地場の専門工事業者の代表が並んでいる。博栄建設はいわば、西中洲樋口建設グループの建設協力会で構成される会社。市発注の公共工事の施工体系図を見ると、博栄建設の株主・役員企業が各専門工事に配置されている。

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 西中洲樋口建設や博栄建設が元請受注した工事を、ほかの関連会社に下請発注する流れも確認できる。

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 福岡市の場合、建設業者は年初に指名願いの申請を行い、その年8月に業者名簿に登録される。西中洲樋口建設が5月に廃業届を出したことで、制度上来年7月末まで福岡市の業者名簿に載らない。そこで博栄建設を始めとするグループ企業の存在が、注目されるわけだ。

 6月25日、西中洲樋口建設の樋口現代表は協力業者に対し、次のように述べたという。
 「来年、博栄はAランク、筑糸はBランクにあがる。廃業届を出してからは博栄で請けている」――。

 ランクはあくまで市が決めるもので、一業者に決定権はないはずだが、なぜかこの自信。政治資金パーティーへの協力を通じて築いた高島宗一郎福岡市長との蜜月関係が、こうした発言につながっている可能性は否定できない。

 高島市政下で大型物件を次々に受注してきた西中洲樋口建設。福岡市の発注工事で順調に伸びてきた博栄建設と大社建設。グループの業績拡大の裏に、市長周辺の関与がなかったか否か、検証する必要がある。わかっているのは、市長の政務秘書が頻繁に樋口代表の部屋を訪れていたことだけだが……。
 

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