山口県下関市の地域医療機能推進機構が運営する下関医療センターの山下智省院長は21日、今月7日に使用予定だった点滴袋2個に針で刺したような穴が開き、うち1個には消毒液などに含まれる界面活性剤が混入していたと発表した。下関医療センターは下関にある総合病院の1つで315床。
事故の経緯について

◆栄養分と水分を投与する点滴袋2個は7月6日午後7時ごろ、センター内の薬剤科から病棟に送られ、ナースステーションに隣接する処置室の保管庫に入れていたという。
◆7日午前2時ごろ、病棟7階のナースステーションで、栄養補給などのために投与予定の点滴袋を開封した際、輸液が漏れているのを看護師が見つけ、使用せずに別の点滴袋と交換。
◆また同日午前9時10分ごろにも、同じ病棟で看護師2人が別の入院患者に輸液を点滴しようとセットした際、液が漏れているのに気付き、調べたところ、針で刺したような穴を確認。
◆同じ日に二度続けて針を刺したような液漏れが発生したことから、単なる破損事故ではないとして、同日、下関署に届け出た。17日に県警から、うち1つの袋から界面活性剤の成分が検出されたとの連絡があったという。
界面活性剤が検出された点滴袋は、7日午前8時半過ぎに日勤の看護師2人が鍵のかかっていた薬品保管庫から取り出し、外袋から出して準備したが、その際には異常は無かったという。異常に気付いたのはその約40分後で、その間はナースステーション内にある処置室に置かれていたが、処置室は施錠していなかったという。
山口県警は、何者かが意図的に袋に穴を開けて輸液に界面活性剤を混入した可能性があるとして、威力業務妨害などの疑いで捜査している。
山下院長の談話
◆「2つの点滴袋は患者には投与されていないし、また当時入院していた患者に想定外の病状の変化はなく、実際に患者に異物が投与されたとは考えていない。今後の再発防止策として、監視カメラを設置し、処置室や薬品保管庫の施錠を義務付けた」とし、また「職員からの聴取など内部調査を進めている」という。
◆「入院や通院している患者さんを始め、関係者の方に不安な思いをさせ申し訳なく、責任を感じている。警察の捜査に協力するとともに施錠の徹底など再発防止に取り組みます」と話した。
<界面活性剤について>
横浜市の旧大口病院(現在は横浜はじめ病院)で2016年9月、入院患者らが相次いで中毒死した事件は、神奈川県警に殺人容疑で今年7月28日に再逮捕された元看護師、久保木愛弓容疑者(31)が、点滴袋に界面活性剤(ヂアミトール)を混入させた犯行だった。事件前の7~9月の82日間で48人の患者が死亡したといわれる。
【データ・マックス取材班】