2024年04月25日( 木 )

毎年2ケタ伸ばす仲介会社 躍進の秘訣は「多能」営業

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(株)S-FIT 代表取締役社長 紫原 友規 氏

 東京都内や神奈川県内で個人向け仲介店舗「お部屋探しCAFE ヘヤギメ!」10店、関東1都3県、大阪府、兵庫県、愛知県、福岡県に法人営業部11店を展開し、不動産仲介を中心に開発や介護を手がけ、毎期2ケタ増の売上伸び率を誇るS-FITグループ。不動産仲介で業績を伸ばす同社の紫原友規社長に話を聞いた。


賃貸仲介から介護まで

 ――1店舗あたりの仲介件数は全国的にトップクラスを誇る御社ですが、仲介を含めた事業セグメントをお聞かせください。

 紫原 不動産賃貸・売買仲介事業、不動産管理事業、不動産開発事業、リノベーション事業、シニア事業に大きく分けられます。基幹事業は、不動産賃貸・売買などの仲介事業です。

【賃貸】
 賃貸事業は、弊社のすべての事業の基盤です。一般向けに「お部屋探しCAFE ヘヤギメ!」を都内中心に10店舗を展開しているほか、2005年から社宅サービスを手がける法人事業をスタートしています。社宅規定の改善や福利厚生のご提案、さらに従業員の転勤による留守宅の問題や、遊休土地、社有寮の有効活用などの相談を受ける機会が多くなったことから、法人事業では全国展開を始めました。東京本社の企業が転勤する際の社宅紹介や、法人営業部の各拠点に本社を置く企業の従業員向けに社宅を紹介しています。

【売買】
 売買仲介は賃貸仲介で集めた地域の情報を活用し、現在は「ヘヤギメ!」の各店舗で展開しています。創業当初は賃貸仲介だけを扱っていましたが、売買仲介のニーズが増えてきたことで、各店舗の店長は売買仲介もできるようにしています。

【管理】
 管理事業は、弊社不動産ビジネスの基盤となる重要な事業セグメントです。売買件数や開発プロジェクトの増加により管理戸数も年々増加しており、18年6月末時点の管理戸数は5,899戸となりました。

▲アバンテ勝どき

【開発】
 開発事業は、賃貸マンションのほか収益不動産の開発をメインに、アパートのリノベーションなどによるバリューアップ、戸建の開発を手がけています。賃貸マンションは、自社ブランド「AVANTE(アバンテ)」シリーズを供給しています。17年3月に完成した「アバンテ勝どき」は東京メトロ大江戸線「勝どき」駅から徒歩2分の立地を生かし、1階部分を飲食店向け、2階以上を住居とする7階建てのマンションです。周囲にレストランやカフェが少ないことから、計画当初より1階は飲食店向けを予定しており、排煙設備を屋上に設けるなどして飲食店からの煙や臭いの影響が住居にないように配慮しました。また、立地を生かして1階部分は飲食店向けとすることで、マンションの収益力を上げることに成功しました。ファミリー向けが多い勝どきエリアで、単身・DINKS向けを供給したのも差別化の一環でした。戸建、賃貸マンション、ホテルなど、立地によって柔軟に計画を組めるのは弊社の強みです。

 勝どき・晴海エリアはオリンピックに向けて再開発が着々と進められており、選手村予定地は2020年以降も、賑わいを受け継いだまちづくりが行われることになっています。アバンテ勝どきの立地はアクセスも良く、近隣には臨海副都心を結ぶ新しい交通システムも整備される予定で、今後も発展が見込まれるエリアです。

 外国人観光客が増加している京都では、9棟の宿泊施設を開発しています。オペレーションは外部のプロにお願いしていますが、すでに5棟は昨年完成しています。マンション、ホテル、リノベーションと選択肢が増えたことで、お客さまへの提案の幅も広がりました。

▲狛江レジデンス

【リノベーション】
 リノベーション事業は、マンションやアパートなど建物の改修によるバリューアップが中心です。「狛江レジデンス」(東京都狛江市)は、弊社で取得してリノベーションしたマンションですが、取得に際し不動産会社5社が競合しました。この物件は築30年以上が経過しているのですが、弊社を除く4社はすべて建物を解体する前提での買い取り価格—いわゆる更地価格を提示したのですが、弊社では建物を含んだ買い取り価格を提示しました。「築古」「駅から徒歩14分」という不利な条件ながら、建物も評価できると判断したのです。評価の理由は間取りの良さです。一部の住設機器などは更新しましたが、基本的に内装は変えていません。その分、外構や外壁は大きく変更しました。外構部分にはウッドデッキを貼って、1階住居の専用部分としました。ベランダのように活用したり、夏にはプールを置いてもいいでしょう。そのほかにもインターネット無料、駐輪場やゴミ置き場の整備、外壁改修などを行いましたが、これにより付加価値が生まれ、少ない投資で通常は賃料を下げざるを得ない1階部分の賃料を下げることなく、満室稼働させることができました。

【シニア】
 シニア事業では、先々を見越した「介護賃貸」という不動産活用の提案をしています。賃貸仲介で培ったマーケティング力を生かして、不動産オーナーと介護事業者を結び、オーナーには安定した賃貸経営を、介護事業者には開業支援などを行っています。たとえば、土地活用として1階に介護事業所、2階に住居を設けたアパートを提案しています。弊社で借り上げて、介護事業者や居住者に賃貸するというサブリース事業も行っています。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅のご紹介も弊社では行っていますが、転居した方からのご相談で、それまで住んでいた自宅の売却や、アパートへの建替えなどで実績があります。

2020年に「ヘヤギメ!」30店へ

 ――シニア事業では、「介護賃貸」以外にもデイサービスなどの介護事業も手がけていますね。

▲(株)S-FIT 紫原 友規 代表取締役社長

 紫原 関連会社の(株)S-FITケアで、都内3カ所にデイサービス事業所を営業しています。ありがたいことに利用者の方々からは好評をいただいており、介護事業を通じて不動産の相談も増えてきました。介護事業は単体で大きく伸びる事業ではありませんが、ほかの事業とうまくシナジー効果を発揮しており、今では弊社に不可欠な事業となりました。

 このように、「ヘヤギメ!」の店舗出店や介護、開発などの新規事業が好調に推移していることから、業績は上昇傾向で推移しています。13年6月期に32億円だった売上高は、18年6月期には102億円まで伸ばすことができました。17年6月にオープンした「S-FIT CARE 西品川店」の稼働率が上がってきたこともあり、今期(19年6月期)は介護事業単体の収益も黒字化する予定です。

 ――「ヘヤギメ!」の店舗数も伸びているようですが、今後の出店計画を教えてください。

 紫原 来期(20年6月期)中には「ヘヤギメ!」を30店舗、法人営業部を20店舗にまで拡大させる予定です。「ヘヤギメ!」の出店候補地は、都内の主要駅から近く、十分な面積が確保できるところで検討しています。今後、すべての店舗には、賃貸仲介と売買仲介を兼任できる人材を配置していきます。

AIに淘汰されない「仲介」

 ――不動産仲介は、AI(人工知能)やコンピューターによって取って代わられる職業といわれていますが、時代の変化に対応するためにどのような取り組みをされていますか。また、好調な業績の背景に、1人あたりの収益増加があるようにみられます。御社の人材教育についてもお聞かせください。

 紫原 まずは、テクノロジーを活用すること。追客など営業面の自動化のほかは、社内の管理システムを構築するなどして省力化を図っています。とくに、PM(プロパティマネジメント)部門では、帳票の作成などを自動化してコスト削減を図っています。店舗数が多くなればなるほど、効果が出る仕組みです。

 AIやコンピューターに取って代わられないためにも、役割を分担するのではなく、何でも完結できる人材になることが重要だと考え、実践しています。賃貸仲介だけでなく売買仲介もできるようにする、介護保険制度についてもわかるようにする、といったように、「できる人がいる」状態から「できる」状態にもっていくことが、1人あたりの営業力、ひいては収益を最大化するために必要なことです。これができれば、AIにもコンピューターにも負けません。

 弊社の採用は新卒が中心で今年は35名、来年は50名が入社する予定です。入社直後に行う5日間の合宿で、弊社の理念や社会人として自立するために必要なマインドセットを図ります。同期の存在は、成長の大きなドライブになります。それぞれ設定した目標に達するために、相談したり悩みを話したりと、支え合っているようです。それぞれが切磋琢磨することで1人あたりの営業力を高められることが、組織の良さであり、不動産仲介としての価値を最大化するためにも必要なことです。

 シニア事業では介護事業所の紹介をしながら、所有する不動産の査定も行い、リノベーションや売却など活用方法についても提案できる人材が育ちつつあります。店舗にも多能な人材を配置できるようにしていければ、まだまだ生産性を上げられる余地は十分にあります。商圏が広いことから、「ヘヤギメ!渋谷店」を売買仲介専門店にする予定です。賃貸仲介業務を長くやっているとスキルに飢えてくるため、売買仲介を新たに覚えることは、成長のモチベーションアップにもなります。1店舗あたりの収益性や成約率で「不動産仲介日本一を目指そう」というのが、今の弊社のスローガンです。成約数を来店数で割った成約率は、業界平均は50%程度といわれていますが、弊社では目標として「成約率70%」を掲げており、収益とサービスで日本一を目指します。それぞれが成長へのモチベーションをもち続けるために、業績を伸ばし、社内外に成長のチャンスをつくっていきたいですね。

【永上 隼人】

<COMPANY INFORMATION>
(株)S-FIT

代表:紫原 友規
所在地:東京都港区六本木1-6-1 泉ガーデンタワー14階
設 立:2003年6月19日
資本金:1億2,750万円
売上高:(18/6連結)102億円
TEL:03-5797-7030
FAX:03-5797-7031
URL : http://www.sfit.co.jp

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