WF再生へのキーポイント まちの賑わいをいかに取り戻すか―(後)
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2018年09月06日 07:03

WF再生へのキーポイント まちの賑わいをいかに取り戻すか―(後)

(株)アプル総合計画事務所
代表取締役 中野 恒明 氏(芝浦工業大学 名誉教授)

拡散した都市を再び中心部へ集積

 ――先日、神戸市のWFエリアである「神戸ハーバーランド」を見てきましたが、商業施設だけでなく住環境もきちんと整備され、日常的な人の賑わいが感じられました。

 中野 そうですね。もちろん神戸のWFにも課題はまだまだありますが、人の賑わいがありますよね。WFを市民に開放するという流れは、日本の都市のなかでは神戸や横浜などは率先して進められていると思います。
 もちろん臨海部であっても、コンテナふ頭などの物流機能に特化した場所に、無理に人を住まわせていく必要はありません。一方で、古い港町は中途半端な状態で物流機能を残すより、いっそのこと物流機能は別の新しい場所に移して人を住まわせる―生活街を取り戻す方向に切り替えるべきだと私は思っています。福岡・博多も、そういう意味では、今はまだ中途半端ですが、これから良くなっていくという期待はもっています。

 ――かつての高度経済成長期などの今の都市基盤が形成されていく過程で、都心部は働きに行くところで、人が住むのは郊外のベッドタウンといったように、「職」と「住」の場所が明確に分かれてしまったことが、今の地方都市の状況につながっているように感じます。

 中野 簡単にいえば、人の賑わいが分散してしまったわけですね。とくに、車社会が顕著な場所では、都市が拡散してしまいました。居住地を含めた都市全体のパイが広がってしまったため、都市の密度が薄くなり、その分、賑わいも薄くなってしまったのです。
 そうしたなかで、若者たちを中心に、郊外から都心部へという世界のトレンドがあるように感じます。たとえば日本でも、関東・首都圏などでは東日本大震災の発生時に帰宅困難者となった経験のある若者たちが、できるだけ近いところ―可能であれば歩いても帰れるような場所に住みたい、といったように、遠距離通勤を敬遠する志向が強くなってきています。

 ――「職住近接」という考え方にシフトしてきているのですね。

 中野 東京では湾岸開発が進んできていて、「多摩ニュータウン」などの、かつての団塊の世代の人たちが住んだ住宅地が、老人のまちになってしまっています。大阪でもそうです。そう考えると、1960年代から80年代にかけての郊外開発は何だったのか、といったような議論も出てきています。おそらく今後、郊外型の住宅地は、淘汰されてしまう時代が来るでしょう。福岡・博多でも今後は、わざわざ遠距離通勤しなければならない郊外に住むことを敬遠して、街中に住もうという志向がさらに強くなっていくかもしれません。そうなると、WFにも人が戻って来るでしょう。

 ――国交省のほうでも「立地適正化計画」などの取り組みがあります。古いまちというのは、昔から人が住んでいたなりの理由があって、そこに人を戻していくのは、非常に理に適っているように思います。

 中野 ただし、一口に人を戻すといっても、重要なのは「家族」です。とくに、女性と小さな子どもたちが暮らし、日常的に行き交うことで、まちに賑わいが生まれます。子育てができるまちこそ、まちの完成形だと思います。家族連れが「住みたい」と思うようなまち、それこそがまちづくりのなかで、本来達成されるべき姿ではないでしょうか。

 ――最後に、WFに関連してもう1つお聞きしますが、福岡ではWFエリアへのアクセス手段として、ロープウェーという話も出ています。これについてはいかがですか。

 中野 私は、そういうロープウェーなどの新交通ではなく、通すとすれば、LRT(次世代型路面電車システム)がいいのではないかと思いますよ。簡単にいえば、路面電車をもう一度復活させればいいのです。地下鉄があっても路面電車を走らせているまちは海外にはたくさんありますし、今の地下鉄の駅の半分くらいの間隔で停留所をつくれば、両方が十分に成り立ちます。とくに福岡の場合は、バス交通が非常に便利な半面、街中では多くのバスが数珠つなぎになって、交通渋滞を引き起こしている問題もあります。公共交通とバスとでうまくネットワークをつくって、街中くらいは路面電車に切り替えるようなシステムをうまくつくれればいいですね。そしてその路面電車がWFに伸びれば、アクセスの問題も解決するでしょう。

 あとは、臨海部を通っている都市高速の高架もどうにかしたいですね。百道浜のあたりでは景観的な配慮もあって地上付近を通していますが、それ以外の場所ではまちと海とを隔てるように高架が張りめぐらされていますからね。ただし、これに関しては喫緊の課題ではなく、おそらく道路の寿命がまだ数十年くらいはあると思いますので、老朽化して建替えの必要が出てきたときに、改めて考えていければいいかと思います。

 いろいろとお話させていただきましたが、これからアジアに目が向いていくなかでの社会的な状況を考えると、福岡・博多の置かれた日本海側の都市という立地条件は、極めて重要だと感じますし、恵まれていると思います。そのなかで、とくにWFエリアをどのような方向性で再生していくのか―。WFを含めた、今後の福岡・博多の発展に期待しています。

(了)

【坂田 憲治】

<プロフィール>
中野 恒明 (なかの・つねあき)

(株)アプル総合計画事務所・代表取締役/芝浦工業大学名誉教授
1951年、山口県宇部市出身。74年に東京大学工学部都市工学科を卒業後、槇総合計画事務所を経て、84年にアプル総合計画事務所設立。2005年から17 年まで、芝浦工業大学理工学部教授(環境システム学科)。専門は都市デザイン、都市計画から建築設計、景観設計まで幅広く実践活動を行う。代表的な作品・業務に、「門司港レトロ地区まちづくり」「皇居周辺道路景観整備」「新潟駅駅舎・駅前広場整備」「新宿モア街歩行者環境整備」「横浜みなとみらい21新港地区景観計画」など。

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