2024年03月29日( 金 )

WFエリアの賑わいは神戸に軍配 都市比較~神戸×福岡

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 2015年10月の国勢調査の結果、福岡市は神戸市を抜き、政令指定都市で5番目に人口の多い都市となった。今年8月1日時点では、福岡市157万7,973人に対して神戸市152万8,458人と、福岡市のほうが多いものの、ほぼ同じ人口規模の政令市であることや古くからの港町であることなど、両市に共通する部分は多い。だが、双方のウォーターフロント(WF)エリアを比べてみると、そこには大きな違いがあった。

人で賑わう神戸WF

 神戸市のWFとして知られるのが、中央区の「神戸ハーバーランド」や「メリケンパーク」などからなるエリアだ。このうちハーバーランドは、旧国鉄の湊川貨物駅のほか、川崎製鉄や川崎重工業などの沿岸一帯の工場跡地を再開発し、1992年9月に街びらきとなった市街地エリアで、かつては工場や倉庫などの港湾施設で占拠されて一般市民が近づけなかった臨海部を、WFとして市民に開放するという目的で開発された。商業施設やオフィス、住宅などが混在する複合都市として開発されたことから、「NORTH MALL」「SOUTH MALL」「MOSAIC」の3棟から構成される複合商業施設「umie」(ウミエ)のほか、兵庫県神戸ハーバーランド庁舎などの入る「神戸クリスタルタワー」を始め多くのオフィスビル、さらには高層マンションなどが立ち並んでいる。また、街区は大きなブロックごとに整然と整備されており、都心にありながらも郊外的な雰囲気を漂わせている。

 一方のメリケンパークは、主に観光施設を中心とした施設が集中しており、神戸港のシンボルとして知られる「神戸ポートタワー」や「神戸海洋博物館」のほか、「ホテルオークラ神戸」「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」などが立ち並んでいる。また、両エリアに挟まれた付け根の部分には「神戸港中突堤中央ターミナル」があり、港町・神戸の海の玄関口としての役割も担っている。

 7月中旬、ハーバーランドおよびメリケンパーク周辺を実際に訪れてみた。平日の昼間だけあって、主に観光施設が立ち並ぶメリケンパーク周辺ではそれほど多くの人通りは見られなかったが、歩いてすぐの対岸にあたるハーバーランド周辺では、商業施設を中心に多くの人―とくに小さい子どもを連れた家族などで賑わっていた。ハーバーランドとメリケンパークは水辺を挟んでほど近い対岸にあり、それぞれの行き来も徒歩で容易に可能。海側に目をやると、遠景に人工島「ポートアイランド」の姿も見えるほか、クルーズ船や貨物船などのさまざまな船が往来しており、臨海部が市民に開放されながら利活用されているという印象を受けた。

MICE特化の福岡WF

 一方の福岡市のWFは、「中央ふ頭」と「博多ふ頭」、さらにはMICE施設などが集積する「福岡コンベンションセンター」からなるエリア。このうち中央ふ頭は、都心に近い高度な物流拠点としての機能を有しているほか、福岡・博多の海の玄関口といえる「博多港国際ターミナル」や、インバウンド客を乗せた大型クルーズ船が接岸する「中央ふ頭クルーズセンター」などが立地するエリアで、物流および人流の拠点としての役割を担っている。博多ふ頭は、博多港のシンボルといえる「博多ポートタワー」のほか、旅客ターミナルや海産物市場、飲食店などを併設した「ベイサイドプレイス博多」などが立地し、どちらかというと観光的な要素が強いエリア。また、両ふ頭を結ぶ付け根の部分には、「福岡国際会議場」「マリンメッセ福岡」「福岡国際センター」「福岡サンパレス」の4施設からなる九州最大規模の複合コンベンションゾーンがあり、WF全体としては、主にイベント開催時などの集客に特化したエリアという印象だ。

 現在、このエリアでは市主導の「ウォーターフロントネクスト」というプロジェクトが進行しており、港湾やMICE機能などのエリアの強みをさらに伸ばすとともに、賑わいある都心の新たな拠点の創出を目指している。だが現状では、アクセス面の問題に加え、イベント開催時と非開催時とで集客変動が激しいことなど、いまだ多くの課題を抱えており、今後の開発動向が注目されている。

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 福岡と神戸のWFエリアでは、市中心部からの距離的な位置関係や、すぐ横を都市高速の高架が通っていること、旅客ターミナルなどの港湾機能を備えている点、印象的なタワーを有している点など、条件的に似通っている部分は多い。だが、それぞれの現地を歩いた印象では、ことWFの生かし方については、福岡よりも神戸の方に軍配が上がって然りだろう。前項の中野恒明氏の話にあったように、「まちの活力=日常的な人の賑わい」であるのなら、両者の明暗を分けたのは、まさにエリア内における住環境がきちんと整備されているか否か。それこそが、福岡のWFエリアの敗因である。

【坂田 憲治】

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