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2018年09月15日 07:05

シシリー島便り・日本人ガイド、神島えり奈氏の現地レポート~シシリーの街・村をめぐる(後)

▲ランダッツォに残る古い建物

 ランダッツォは土地が豊かで、古くから発展していた。中世の時代、王や、女王、侯爵、伯爵たちが生活をしていた古い建物が今でも残っている。窓枠から今にもカール5世が顔を出してきそうだ。見張りの塔、城の跡、城壁に門と、中世の世界に飛び込んだかのような雰囲気の街である。ランダッツォはラティフンディウム(大土地所有制)の廃止と、エトナ山の大噴火により、人々に深い打撃を与えた。
 周辺にはそれまで、栗、ブナ、カシ、柳の木々が生い茂り、ハチミツなどがつくられていたが、噴火により流れ込んできた溶岩で、それらすべてが奪われてしまった。見渡すと、黒い溶岩の塊が至るところにあり、当時の豊かさは消えてしまっている。そのため人々は、徐々にほかの街へと移り住んでいってしまった。

 夕方になり、エトナ山を降りながらイオニア海側へ出た。メッシーナ方面への高速道路と合流し、北へと走る。タオルミナを左方向に見ながら、サヴォカ村を目指す。山道を20分ほど上ると見晴らしのよい広場に着いた。この村は、2016年にイタリア公認組織委員会に「美しき小さな村百選」に指定された。小さな村には17の教会が残っている。坂が多い村だが、30分もあれば一回りできる。

 サヴォカ村を訪れる日本人観光客のほとんどは、この村が映画「ゴッドファーザー」のロケ地だったから訪れているのだと思う。この村で最初に入った店は、「ゴッドファーザー」の第一作に出てくるバールだ。注文するのは、氷と果物と砂糖だけでつくったグラニータで、おすすめは、GELSI(桑の実)味だ。現地の人は上に生クリームをのせ、食べるときにかき混ぜて食べる。一緒にブリオッシュ(甘くて柔らかいパン)を頼むのがシシリー風だ。ブリオッシュとグラニータを一緒に食べる。ジェラートと違い、あっさりしているし、かき氷のような、がりがりした粗い食感ではなく、クリーミーな滑らかな舌触りが、旅の疲れを忘れさせ、ほっと落ち着かせてくれる。

 ローマ時代に築かれたこの村は、ビザンツ、アラブ、ノルマンに支配された歴史をもつ。1600年代に造られたカプチーニ派の修道院には、1700年代のミイラが残っている。映画監督フランシス・コッポラは、なぜこの村を「ゴッドファーザー」のロケ地に選んだのだろう。それにはある人物が関わっていた。彼の名前はフランコ氏。フランコ氏がコッポラ監督をサヴォカ、フォルツァダグロ、イゾラベッラなどの小さな村々や海を案内した。その結果、映画の撮影を行うことになったという。このフランコ氏は、フィウメフレッドにある屋敷の持ち主だ。その屋敷はコルレオーネ一家が住んでいたお家、つまり、「ゴッドファーザー」全シリーズに登場する建物だ。

 この屋敷は、パレルモの有能な医者の屋敷だった。この医者が大地主を悪い病気から救い、大地主は、そのお礼にとこの医者に領土を与えたという。医者は、愛する妻と過ごすために別荘を造ったが、妻には愛人のタオルミナ伯がいた。ある時、海からトルコ海賊が攻めてきた。医者夫婦は海賊たちにさらわれてしまい、浜辺へと連れていかれているところ、タオルミナの見張りの塔の番人が、その様子をすぐ伯爵に報告した。伯爵は兵士を送り、その結果、海賊たちは追放され無事2人の命は助かった。屋敷の入口には2つのトルコ海賊の像が海の方面を見つめている。この伝説から、建物はcastello degli schiavi(奴隷の城)と呼ばれるようになったそうだ。
 映画「ゴッドファーザー」のおかげで、屋敷は一躍世界的に有名となり、訪問客の足は途絶えない。建物を見たいという観光客だけでなく、結婚式、披露宴会場としても使われており、500人ほどのパ-ティもできるそうだ。日本からも、屋敷の隣にある小さなチャペルで結婚式を挙げるカップルもいるそうだ。

 フランコ氏は嬉しそうに「年間およそ2,000人近い日本人がきてくれる」と語った。訪れるツーリストは世界中からで、その内80パーセントはロシア人だという。屋敷内には日本人にもらったお土産の数々が2階の部屋に飾ってあり、ひよこ饅頭や日本酒などがあった。フランコ氏に「中身が何か知っているか」と尋ねたところ「ひよこのかたちをした甘いお菓子でしょう」という答えが返ってきた。

 1700年代の屋敷は、重厚感にあふれ、さらに映画とシンクロされることで、いっそう趣が感じられた。外の庭は手入れが行き届き、きれいな花が飾られている。アル・パチーノ扮する、年老いたマイケル・コルレオーネが、亡くなる最後のシーンで座っていたイスも同じ場所に置いてある。ゴッドファーザーファンでなくても、大物俳優たちが、そこで演技をしていたことを想像するだけで、興奮した気持ちになる。映画ファンであればなおさらだろう。

 今回訪れた街や村は、いずれも1900年代後半から人口が減少していない。何らかの仕事に従事し、生活が潤っているシシリー東部の田舎の街や村は、西部に比べて豊かである。これからもシシリーの“財産”をずっと受け継いでいってほしいと願うばかりだ。

Mr. FRANCO▲

(了)

<プロフィール>
神島 えり奈(かみしま・えりな)
2000年上智大学外国語学部ポルトガル語学科を卒業後、東京の旅行会社に就職。約2年半勤めたのち同社を退職、単身イタリアへ。2003年7月、シシリー島パレルモの旅行会社に就職、現在に至る。

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