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2018年09月20日 14:00

種子法廃止の恐怖~国民は巨大種子企業のモルモットに?(4)

種の自家採取禁じる種苗法改正

 種子法廃止が種子価格の高騰や多国籍企業による支配をもたらす危険性を述べたが、自家採取を禁止する動きもある。自家採取とは、他人から種子や苗を買ったりもらったりして育て収穫した作物から種を取って育てることを指す。昔から、人類が普通にやってきたことである。

 アジア・アフリカ地域の国々では、2010年代に入って「モンサント法」と呼ばれる自家採取禁止法案が次々と出されている。中南米のチリやコロンビアでは農民の暴動が起きて、事実上中止に追い込まれた。

 原因は、UPOV条約を批准したことにある。これは1972年に大企業が品種の知的所有権を主張してつくった条約で、種子の登録制度を設けてその種子を無断で採取し、流通させることを禁止することを狙っている。現在、欧米ではこの条約によって、登録された種子の自家採取は原則禁止されている。
違反した場合は刑罰に処せられ、2017年にはスペインの農家が逮捕されている。アフリカでは、政府がフォーマルな種子として配布したものが、実はモンサントの遺伝子組み換え(GM)の種子だったなどの騒動が後を絶たない。アジアでも、ベトナムが批准してGM農産物を栽培し始めている。

 これは我が国にとって、対岸の火事ではない。実は、日本は1991年にUPOV条約を締結。1998年には、種苗法を大幅改定している。同法21条は次のように書かれている。

(育成者権の効力が及ばない範囲)
 第21条 育成者権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。(略)
2 農業を営む者で政令で定めるものが、最初に育成者権者、専用利用権者又は通常利用権者により譲渡された登録品種、登録品種と特性により明確に区別されない品種(…中略…)の種苗を用いて収穫物を得、その収穫物を自己の農業経営において更に種苗として用いる場合には、育成者権の効力は、その更に用いた種苗、これを用いて得た収穫物及びその収穫物に係る加工品には及ばない。ただし、契約で別段の定めをした場合は、この限りではない。
3 前項の規定は、農林水産省令で定める栄養繁殖をする植物に属する品種の種苗を用いる場合は、適用しない。

 条文を素直に読む限り、育種登録種子についても、それを自家採取(種苗法では自家増殖)してさらに翌年その種子をまいて栽培することに何の問題もない。ただし、3項を読むと、個別の契約がなくても、省令すなわち運用規則によって例外を作り、自家採取を禁止できる。

 大幅改定した1998年、バラやカーネーションなど23種類の自家採取を禁止する省令を出した。2006年には82種類の例外が認められている。

 2009年に農水相を務めた山田正彦氏は、「このような大切なことをまったく知らなかった。週に一度の省議でも一切議題に上らなかった」と吐露している。これほど重要な事項が、国会で審議されることもなく、ひっそりと決められているのは問題ではないか。

 2017年以降、その数は増え続け、2018年3月末には357種で自家採取禁止となった。そのなかには、キャベツやブロッコリー、ナス、トマト、キュウリ、ダイコン、ニンジンなどのメジャーな野菜が含まれている。

 この省令乱発も、2016年に政府がTPP協定を批准したことが背景にあると山田氏は指摘する。同協定の第18章「知的財産権」の内容に沿っているからだ。

 自家採取禁止は、種苗法に例外を設けることで拡大してきたが、ここにきて原則禁止にする動きがある。2016年12月の農業資材審議会(第16回)の種苗分科会の議事録に、「主に欧州各国では、基本的に自家増殖が原則禁止で、一部自家増殖が認められている。日本の現状は反対の方向にある」。2018年5月15日、日本農業新聞が一面で、「種苗法の自家増殖 『原則禁止』へ転換」を報じた。

 種苗法21条に違反した場合、懲役10年以下、一千万円以下の罰金に処せられる。懲役と罰金の併科を許しており、刑法の窃盗罪よりも重い罰則である。しかも、共謀罪の対象になっていて、種の交換会に参加した人は全員処罰されることになる。準備行為も含まれるので、話に参加した人や種子を準備した人などもすべて逮捕・処罰されることになる。

(つづく)

<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)

1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。ローカル新聞記者、公益法人職員などを経て、2005年から反ジャーナリスト。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)。YouTubeで「高橋清隆のニュース解説」を配信中。

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