2024年04月30日( 火 )

ウエルシアの次世代型シティDgS 進化する体験型店舗B.B.ON(1)

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 GMS、SM、DSなど他業種のフィールドを徐々に浸食しながら全国に出店を続けるドラッグストア(以下DgS)。価格競争にしのぎを削り、インバウンド顧客を狙うDgS業界で、ウエルシアHDが「体験型・高単価」という新しい業態で挑んだB.B.ONが開店から3年目を迎えた。郊外主体の出店を続けていた同社が都心の超一等地でどんな戦いを見せるか注目を集めていたが、今やたしかなリピーターをつかみ、新次元を切り拓くことに成功している。

国際色豊かな客層、成功を収めた新DgS

 ウエルシアHD傘下のウエルシア薬局が、都市型の次世代型シティDgSとして開設した「B.B.ON日本橋店」が3年目に入り、同業だけでなくコンビニ、スーパーなどの異業態からも注目を集めている。

 同店は、24時間営業・調剤併設・接遇重視の推奨販売など、専門性と利便性を融合した新しいかたちのヘルスケアストアだ。同店のコンセプトは、「働く女性のためのDgS」だが、都内日本橋という立地柄、近隣には大手ホテルや大手商社などがならび、顧客は日本人だけではなく外国人ビジネスマンも多い。向かいのビルには総合商社の丸紅(株)が入っており、そこに打ち合わせに訪れた海外顧客が来店するのだという。国際色豊かな客層を反映して、「20以上の国から来店、カード支払いが多い、高額商品がよく売れる」というのが、同店の大きな特徴だ。

 ウエルシアが目指す次世代型シティDgS、進化を続ける「体験店舗」として、貪欲に顧客創造に向け日々進化を続けるB.B.ON日本橋店の最新動向を紹介する。

24時間営業、処方箋は1カ月1万枚を超える

 B.B.ON日本橋店は、ウエルシア薬局グループの旗艦店として、処方箋の受け入れでもトップクラスに位置する。取り扱う処方箋は、1カ月1万枚を超える。物販の売上は毎月2ケタ%増で推移している。

 今でこそ同店は、同業だけでなくコンビニ、スーパー、バラエティショップなどの異業態からもその動向が注目されているが、開店当初の店舗開発は難産の連続だった。

 当時の様子について、池野隆光代表取締役会長はこう話す。
 「B.B.ONの出店場所の選定については、当初貸し手の柳屋ビルから『DgSは店舗や周囲が汚れてしまうので貸したくない』と入居を断られていた。そこで柳屋ビルの担当に『ただDgSをやるのではなく、新しい業態として美容、調剤などの機能を備え、今後ニューヨーク、パリ、ロンドンなどに若い人を送り出したいと考えている。そのための店舗開発をしたい。それをぜひ、応援してもらいたい』と、お願いした」。
 池野会長は、日本にはまだないDgSをつくり、教育をこの店でやりたいと、自身の思いを柳屋の担当者にぶつけた。

 B.B.ONの小川美恵代表取締役社長は開店当初、開店の告知とともに、同店を利用してもらうために、周辺のオフィスやホテルなどを訪問。顧客満足のために何が必要なのかを知るため、自らの足で営業に努めたという。

ネイルは男性エグゼクティブの身だしなみの1つ

 今、多くのDgS企業がB.B.ONと同様に「働く女性をサポートする」というコンセプトで店舗開発を行っているが、同店は商品ラインナップに化粧品を並べるだけでなく、ヘルスケア、食、入浴など働く女性の1日の生活シーンをトータルでサポート。ここがほかのDgSとの大きな違いだ。

 顧客の男女比は、男性が35%、女性が65%と、これはオープン時と変わらない。年齢層を見てみると、男性客は、30歳~40歳が最も多く、来客数が増えてもバランスは変わらない。女性客は28~30歳がボリュームゾーン。開店当初は、20~30代がメインだったが、今では40~50代も増えているという。

 「B.B.ONは『体験店舗』」と池野会長が話すように、サービスとして取り入れた、爪に優しいネイルサロン(ビビオンネイル)、歯のセルフホワイトニングなどが、働く女性に人気だ。セルフホワイトニングは、男性にも人気で、顧客の3割は男性が占める。

 とくにネイルは人気で、2週間先まで予約がいっぱいだという。ネイルは、国内の男性顧客の場合、女性と比べると来店頻度が高いとのこと。男性客のなかには、中東のドバイからファーストクラスで来日し、女性客に混ざってネイルを受けるという人も。「ネイルは、世界の男性エクゼクティブの潮流になっているのでは。身だしなみの1つになっているようです」と小川社長。ネイルに通ってくる顧客のなかには、CA(キャビンアテンダント)やハイクラスの顧客も目立つという。

(つづく)
【取材・文・構成:大川 善廣】

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