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2018年09月21日 09:59

なぜ、文科省は自発的「植民地化」に邁進するのか!(7)

国際教育総合文化研究所 所長 寺島 隆吉 氏
朝日大学経営学部 教授 寺島美紀子 氏

日本語で説明してもわからない生徒に、英語で教える

 ――文科省が「話すこと」を重視した英語教育に転換して約30年になります。しかし、さしたる成果は出ていません。識者のなかには、これほど、国民の血税、時間、エネルギーを使って効果が出ないのであれば、改革の手法に誤りがあるのではないか、という意見も聞かれます。

 寺島 政府・文科省は、今回の改革を進める理由を「今までは日本語で授業をしたからダメなのだ。英語だけで授業をすべきである」としています。一方で、英語教員の側からは、「日本語で説明しても分からない生徒に、どうやって英語だけで教えるのか」「英語だけで授業をしたら内容がまったく深まらない」という困惑した声が聞こえています。 

 先述のように、これは深刻な事態です。「なぜ、政府・文科省がこのような愚策を強行するのか。教育とは関係のない、何か別の意図があるのではないか」という疑問さえ湧いてきます。

 そもそも「英語学習は母国語を使わずに英語だけで行うべきだ」「したがって外国語の母語話者が授業するのが最も効果的だ」という主張に科学的根拠は何1つありません。そんなことが正しいのであれば、NHKの外国語講座はずっと以前から日本人が教えずに外国人だけで行われていたはずです。実は、こうした主張は、1961年にウガンダのマケレレで開かれた「英語教育をめぐるイギリス連邦会議」で提起された、いわゆる「マケレレ5原則」をそのまま鵜呑みにしたものです。

 この原則は、旧植民地をいかにして英国の属国として維持するかを念頭においたものでした。そのためには、当該国を「文明化し、民主化する」という口実で、「英語という商品(もの)」と「英語話者という商品(ひと)」を当該国に輸出するのが一番好都合だったのです。敗戦国日本も、まんまと、その罠にはまったというべきでしょう。

 かつて日本は、植民地の朝鮮・台湾や中国の傀儡国家「満州国」などで日本語学習を強制し、その母語話者である日本人を教師として押しつけましたが、いまの状況はそれと酷似しています。違うのはただ1つ、自ら望んで英語大国の属国・植民地になる道を歩んでいる、という点でしょう。TPPという国家の運命を左右する条約に、「正文」としての日本語版が存在せず、政府がもっているのは英文版のみだったという事態が、まさにこのことを象徴的に示しています。

(つづく)
【聞き手・文・構成:金木 亮憲】

<プロフィール>
寺島 隆吉 (てらしま・たかよし)

国際教育総合文化研究所所長。元岐阜大学教育学部教授。1944年生まれ。東京大学教養学部教養学科を卒業。石川県公立高校の英語教諭を経て岐阜大学教養部および教育学部に奉職。岐阜大学在職中にコロンビア大学、カリフォルニア大学バークリー校などの客員研究員。すべての英語学習者をアクティブにする驚異の「寺島メソッド」考案者。英語学、英語教授法などに関する専門書は数十冊におよぶ。また美紀子氏との共訳『アメリカンドリームの終わり―富と権力を集中させる10の原理』『衝突を超えて―9.11後の世界秩序』(日本図書館協会選定図書2003年度)をはじめとして多数の翻訳書がある。

<プロフィール>
寺島 美紀子 (てらしま・みきこ)

朝日大学経営学部教授。津田塾大学学芸学部国際関係論学科卒業。東京大学客員研究員、イーロンカレッジ客員研究員(アメリカ、ノースカロライナ州)を歴任。著書として『ロックで読むアメリカ‐翻訳ロック歌詞はこのままでよいか?』(近代文芸社)『Story Of  Songの授業』、『英語学力への挑戦‐走り出したら止まらない生徒たち』、『英語授業への挑戦‐見えない学力・見える学力・人間の発達』(以上、三友社出版)『英語「直読理解」への挑戦』(あすなろ社)、ほかにノーム・チョムスキーに関する共訳書など、隆吉氏との共著が多数ある。

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