• このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年09月21日 13:18

新聞の凋落と再生の障壁 迷走を始める大手新聞社経営(前)

 通勤のラッシュアワーの光景はほんの10年で劇的に様変わりした。かつては、細長く折った新聞をめくるサラリーマンがひしめいたが、いまや一車両にせいぜい1人か2人。ほとんどの乗降客がスマートフォンの画面を凝視する。新聞の部数は急速に減少しており、このままでは事業の継続性に疑義が呈される。

公称と実売の乖離

 今年2月、1冊の本が業界を騒然とさせた。題して『新聞社崩壊』(新潮新書)。執筆した畑尾一知氏は元朝日新聞社の販売局部長。主に東京本社販売局に勤務し、流通開発部長や販売管理部長を務めた「販売のプロ」である。発売と同時に版を重ね、2万部を突破。新聞各社の販売担当者とOBたちに読まれたとみられる。

 同書によると、2005年に約5,000万人いた新聞読者は、15年に3,700万人に減少。さらに25年には約2,600万人になると推定している。およそ半分の読者が失われるというのだ。読者は50代以上が中心で、若い人はまったく読まない。しかも発行部数の3割程度もある「押し紙」の存在が、各販売店の経営を逼迫させている、という。

 たしかに畑尾氏の勤務先だった朝日新聞社の場合、公称800万部あった発行部数が最近では600万部を割り込むほど減少している。ただし、これはあくまでも「公称」の数字であって、「押し紙」という読者のいない新聞部数を差し引くと、実売は400万部台といわれる。朝日の場合、ほんの十数年で実売部数が半減したと考えられる。

 朝日は2000年代前半までは単体の売上高が4,000億円台をキープしていたが、リーマン・ショックのあった08年以降、まず広告収入がつるべ落としに落ち、ついで部数も急落していった。18年3月期の売上高は2,552億円と、往時の4割減に落ち込んでいる。それでも、10年3月期決算を除けば、かろうじて黒字を維持し続けている。そのからくりが、公称部数600万部と実売部数400万部の乖離(約200万部)にある。この乖離が、販売店に押し付けている「押し紙」なのだ。

増え続ける「押し紙」

 「押し紙」によって朝日は黒字を維持する一方、困るのは、売れ残りの在庫(押し紙)を抱える販売店の方である。朝日で「押し紙」が累増したのは、箱島信一社長(福岡県出身、九大卒)時代の1998年ごろ、新聞部数が減少する局面を迎えてからのことだった。「部数が減り始めるなかで、各販売店が本社から仕入れる部数を固定化する動きが現れた。実売が減っても仕入れ部数をそれに応じて変更できないため、仕入れても余る紙が増え始めた。これが押し紙です。箱島さんの時代に、部数減少が激しかった夕刊で、まず始まった」と、ある販売店主はいう。

 問題は、この「押し紙」が発行部数の3割程度にも達し、紙代や印刷費、運送費に莫大な無駄が生じているうえ、読者のいない新聞を引き取らされることによって、朝日の販売店が近年、軒並み赤字に陥っていることだ。これに対して、平均給与1,200万円という社員の賃金水準は大きく減らされておらず、約4,000人台という従業員数もそのままだ。売上が大きく減少しても、社員に痛みを強いる改革は先送りにし、販売店にツケを回したような恰好なのだ。「いまや新聞の販売網は危機的な状況にあります。多くの販売店主が『あと1、2年しかもたない』と言っています。ほとんどが赤字。辞めていく店主も多い。東京オリンピック終了後、一気に落ち込むでしょう」と、販売局OBは語る。

 一方、ライバルの毎日新聞も惨状は同じだ。毎日は2011年、スポーツニッポン新聞社と共同持株会社を設立したものの、以来6年連続で売上高は減少し続けている。毎日単体に至っては売上高1,066億円で、そろそろ1,000億円の大台を割り込みそう。

 公称300万部の発行部数だが、「ウチは朝日よりも押し紙が多いのは確実。関西では残紙率が5割を超える店があり、ほとんどやっていけない。販売店主が毎日本社を訴える裁判も起こされた」(毎日社会部OB)という。実売は150万部~180万部あたりだろう。依然として無借金の朝日と違って、毎日には長短期合わせて500億円強の負債がある。売上が減少し、期間損益もかろうじて黒字という低額なので、負債返済はかなりの重荷になっているはずだ。

(つづく)
【中村 博信】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年01月20日 19:00
NEW!

筑紫野市長選、藤田陽三氏が無投票で3選

   任期満了に伴う筑紫野市長選は20日に告示され、現職の藤田陽三氏(76)以外に届け出がなく、藤田氏が無投票で3選を果たした。藤田氏は前回(2015年)の市長選も...

事業を通じて資源の有効活用を提案、推進する(前)

  上内電気 (株) 景観環境を推進、高い企画提案力を有する老舗  上内電気(株)は、屋外照明灯、交通信号機事業、屋内照明事業の計画、設計、設置な...

2019年01月20日 07:01

モンゴル産機能性原料サプライヤーの老舗 新たにシーベリー原料供給開始

  日本三晶製薬(株) 設立から20年以上にわたり、機能性原料を供給している同社。確かなエビデンスや特許を取得した松の実原料を主体に、今年からさまざま...

2019年01月19日 07:05

対中強硬派のロバート・ライトハイザーUSTR代表の胸の内(前編)

  NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャン...

創業の心を伝承、地場建設業として福岡の発展に貢献する(後)

  照栄建設 (株) 次世代の人材育成に向けて リバレイン(福岡県糸島市)  これまで以上に高い志で挑む同社にとって大切な...

2019年01月19日 07:01

ドラッグストア業界が挑む「食と健康」市場創造戦略~製配販連携で10兆円産業目指す(後)

  新しいカテゴリーに新しい市場が創造される  2回目となる今回の実証実験は、19年2〜3月に行うが、前回の実証実験について、ここで振り返っておこう。 ...

2019年01月18日 17:40

ヴィーナスギャラリー清川店で暴行事件

   本日18日、福岡市中央区清川2丁目のパチンコホール「ヴィーナスギャラリー清川店」店舗内で、男が店員を殴る事件が発生した。  福岡県警察によると、事件が...

2019年01月18日 17:30

プロが選ぶ「日本の小宿」に九州から「唐津 網元の宿 汐湯凪の音」

   18日、東京都内で「第44回プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の表彰式が開催され、選考審査員特別賞「日本の小宿」10施設に九州からは唯一選出された、佐賀県...

2019年01月18日 17:26

国民民主党、福岡選挙区は女性弁護士

   国民民主党は今年の夏に行われる参議院選挙で福岡選挙区に公認候補を擁立することを決めた。党本部と連合の主導で選ばれたのは福岡市在住の女性弁護士。NHKで法律の解説...

2019年01月18日 16:06

(株)創栄(新潟)/回転寿司店経営

  事業停止 負債総額 約8億円  同社は15日、事業を停止し、事後処理を弁護士に一任した。  担当は中村崇弁護士ほか2名((弁)ユナイテッド法律...

pagetop