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2018年09月30日 07:01

2030年の世界 アルビン・トフラーの『未来の衝撃』から読み解く(4)

予測するのが難しい「タイミング」

 トフラー氏の名を世界に刻みつけた『未来の衝撃』は、発表されてからすでに半世紀もの時間を経ている。今読み返してみると、彼の予見能力の精度を図ることができ、トフラー夫妻が驚くべき正確さで未来を見通していたことには改めて驚かされる。

 同書のなかでトフラー氏は「核家族の崩壊、遺伝子革命、使い捨て社会、教育の最重要性、社会やビジネスにおける知識の重要性の拡大」を見事に予測していた。とくに注目すべきは「一時性」という価値観である。急速に変化する情報化社会ではモノに対してのみならず人間関係においても、そうした傾向が増大するのが未来社会の特徴だと看破。「この一時性の連続によって、すべての分野において“使い捨て”傾向が加速する」との指摘にはうなずかされる。結婚しかり、家族しかり、はたまた職場や生活の場所、そして身の回りのあらゆる商品にも当てはまるというわけだ。

 それらがもたらすストレスの増加は人間の肉体的、精神的苦痛をもたらし、社会の不安定化を増す。こうした変化を乗り越えるには経済的な対策では不十分であり、社会学、心理学、医学、生物学など関連領域を総動員する必要があることにも言及。また、「マス・マーケティングがニッチ・マーケティングやミクロ・マーケティングに道を譲り、大量生産が時とともにカスタム生産に取って代わられ、大企業が小さな自律的単位に分かれる」という時代の変化にも鋭い目を向けていた。

 さらには、政治や国家という概念でさえ、諸般の事情に精通するようになった個人の意識の高まりと、果てしないほどの情報技術の発展によってもたらされる「非大量化」の波に晒されるだろう、とトフラー氏は考えていた。そうした未来展望はことごとく的中しているといっても過言ではない。

 とはいえ、50年以上も前になされた未来予測のなかには間違った点もある。当然といえば当然であろう。トフラー氏曰く「予測するのが一番難しいのはタイミング」。「あることがいつ起こるのか予測することは一番難しい」とのこと。たとえば、彼らは1970年当時に「人類は動物のクローンをつくるだろう」と予測していた。これはすでに現実のこととなっている。

 実は、「人間のクローンも造られるだろう」とも予測していた。筆者とロサンゼルスで食事をしながら、語り合った今から20年前でも、なおその可能性はあると思っていたようだが、そのタイミングについては間違っていたと素直に認めていた。なぜなら、「それらが1985年までに起こるだろう」と述べていたからである。トフラー氏によれば、「1985年というのはノーベル賞を受賞した世界のトップレベルの生物学者の見解に基づき予測したのだが、たまたま彼が必要以上に楽観的に構えていたためだと思われる」。

 『未来の衝撃』のなかでは「使い捨て社会の到来」を予測しており、そのなかで、「やがて紙でできた衣服を身につけるようになる」との記述があるが、2018年の時点で現実にはそうはなっていない。とはいえ、そうした試みがファッション業界で日夜研究が続いていることは間違いなく、遅かれ早かれ、現実のものとなりそうだ。この一例に限らず、多くの予測のなかにはタイミングを逸したものや、まったく見当はずれだったものもある。しかし、2人はよく次のように言って、聴衆の笑いを誘うのが常であった。
 「私たち未来学者には魔法のボタンがある。予測の間違いを述べるような時には、『今のところはまだ』と付け加えておく」。免罪符ではないだろうが、いくら知の巨人とはいえ、森羅万象すべてを正確に予測することはできない話。ユーモアのセンスも未来学者には欠かせない才能に違いない。
 

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

前参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。

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