2024年04月19日( 金 )

今、西安・楊凌が熱い!~「中国楊凌農業ハイテク成果博覧会」開幕

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楊凌片区管委会東京事務所 所長 劉 鋒 氏

 11月5日から9日にかけて、中国陝西省楊凌(ヤンリン)において第25回「中国楊凌農業ハイテク成果博覧会(CAF)2018」が開催される。中国農業科学技術分野での「オリンピックの祭典」と称せられるCAFにおいて、今回日本は初めて「主賓国」に決定、鳩山友紀夫元総理(AIIB国際顧問)(※)が開幕式でテープカットを行う。日本からは、鳩山友紀夫氏を団長とする総勢約50人の訪中団が組織され、その結団式が10月26日に東京・新宿で行われた。
 日本訪中団受入の中国側窓口となる中国(陝西)自由貿易試験区楊凌片区管委会東京事務所の劉鋒所長・(一社)アジア現代経済研究所理事長に聞いた。陪席・アドバイザーは訪中団副団長を務める名古屋市立大学22世紀研究所の中川十郎特任教授・楊凌片区管委会東京事務所顧問である。

4000年前の中華農耕文明発祥の地として知られる

 ――第25回「中国楊凌農業ハイテク成果博覧会(CAF)2018」の開催が迫りました。まずは、楊凌およびCAFについて教えていただけますか。

左から中川十郎氏と劉鋒氏(結団式会場にて)

 劉鋒氏(以下、劉) 楊凌(ヤンリン)は日本人の多くの方が、遣隋使や遣唐使でよくご存じの、陝西省都・西安(隋・唐の都であった長安)から西へ80kmのところにあります。高速バスやタクシーで約1時間です。楊凌は、隋の初代皇帝である楊堅のお墓(凌)や、4000年前まで遡りますが、中国史上初の「農官」(農林大臣)後稷氏が農業の開拓・普及を始めた「中華農耕文明発祥の地」として知られています。また、楊凌には、中国でNo.2の名門農業大学「西北農林科技大学」があります。

農業ビジネスにおける新たな市場開拓のチャンス

 劉 「中国楊凌農業ハイテク成果博覧会」(CAF)は1993年から始まり今年で25回を迎えます。当初の目的は、中国国内農業の近代化のためでした。すなわち、中国の三農「農村、農業、農民」に外国との交流の道を拓き、世界の先進農業を学ばせ、事業の推進・発展を考えました。
 その後、楊凌は、1997年に、農業に重点を置いた唯一の「国家ハイテク産業開発区」(国内54カ所)になり、2016年からは、楊凌自由貿易区(中国唯一の農業試験特区)として、その役割も大幅に拡大しました。並行してCAFの役割も拡大、今では農業ビジネスにおける新たな市場開拓のチャンスとされています。これまで、2,200万人以上のビジネンスマンが参加、投資額と貿易額の累計は5,400億人民元(約8兆6,000億円)以上になっています。

2005年には、村山富市首相と平松守彦知事が来場

 ――これまで、日本と同CAFとの関係はどうなっているのでしょうか。

 劉 日本と西安とは文化交流も含めて深い関係にあります。日中関係が良好だった2005年のCAFでは、「一村一品運動」(※)に関する国際シンポジウムが開かれ、当時の中国国家副主席の曽慶紅氏とともに当時の大分県知事・平松守彦氏と村山富市首相が来場されました。

 同シンポジウムには、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカなどの国や地域から335名の政府関係者、学者、経済機構などの代表が参加しました。しかし、2011年から、日中関係が冷え込み、ここしばらく、活発な活動ができていませんでした。

50カ国以上、1,800社以上、2,000を超えるブース

 ――第25回CAFはどのような内容になっていますか。今年は日本が「主賓国」になりました。

 劉 第25回CAFのテーマは「新時代・新駆動・新農業」です。また、今年の博覧会は
 「国際農業合作交流」に加えて、「楊凌国際農業科学技術フォーラム」「特色ある農業展示」「農産物のブランド基準及び成果情報の発表会」「三農(農村、農業、農民)サービスの諮問・教育訓練」「商業誘致及び技術取引」「アワード」の7つのセクターが同時開催します。展示規模は50カ国以上から、1,800社以上が参加、2,000を超えるブースを構えます。また、主賓国日本には「日本現代農業ハイテック技術成果展」も設けられます。入場予定者は180万人以上(昨年実績180万人)を見込んでいます。私は昨日中国から戻りましたが、現地では「主賓国」日本への歓迎ムードがいっぱいでした。

鳩山元総理を団長とする、総勢約50人の訪中団

 ――今回日本が「主賓国」になり鳩山友紀夫元総理が参加、訪中団も組織されました。

 中川十郎氏 鳩山友紀夫元総理を団長とする、総勢約50人の訪中団を組織できたことを嬉しく思っています。西安は先ほどのお話のように、日本と深い関係にあることはもちろん、同時に西安は中国の習近平政権が2013年以来、力を注いでいる21世紀の広域経済圏構想「一帯一路」(※)の“陸のシルクロード”の西への出発点でもあります。

 今年は「日中平和友好条約締結40周年」という節目の年です。5月には中国の李克強首相が日本を8年ぶりに公式訪問、10月には日本の安倍晋三首相が中国を7年ぶりに公式訪問し、今、日中両国の関係が急速に、深化、強化されつつあります。

 訪中団には、農業関連先端技術を紹介する20社に加えて、農業の食の安全・安心、エネルギー、医療・介護関係など多くの専門家が含まれています。私たち訪中団も、「一帯一路」を念頭において、食をもちろん、健康・医療などにおいても、民間ベースで、日中の提携強化の一翼を担いたいと思っております。

【金木 亮憲】

2013年に”由紀夫”から”友紀夫”に改名

※一村一品運動
1980年から大分県の全市町村で始められた地域振興運動。1979年に当時の大分県知事である平松守彦氏が提唱、各市町村がそれぞれ1つの特産品を育てることにより、地域の活性化を図ることを目的とした。

※一帯一路
2013年に中国の習近平国家主席が提唱した経済圏構想。中国西部と中央アジア・欧州を結ぶ「シルクロード経済帯」(一帯)と、中国沿岸部と東南アジア・インド・アラビア半島・アフリカ東を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)という、陸と海の2つの地域でインフラ整備および経済・貿易関係を促進するというもの。

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