2024年04月26日( 金 )

「猫の虐待」被害相次ぐ福岡

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 福岡県で猫を標的とする虐待被害が相次いで報告されている。
 10月24日にTNCテレビ西日本が「毒エサ」により猫が死亡したと報道。身近な動物として親しまれている猫が被害にあった痛ましい事件だが、猫への被害は昨年から報告されていた。

残虐な犯行の数々

 6月1日、福岡市南区で3匹の猫の死骸が発見された。1体は胴体に刺し傷、2体は首が切断されていた。同月21日には早良区において、首が切断されるなどした複数の猫の死骸を発見、7月12日にも早良区で首が切断された1体の猫の市街が発見されていた。いずれも犯人は不明である。
 猫への虐待事件はこれにとどまらない。いったい何匹の猫が犠牲になったのか、その全貌は誰も把握できていない。この異常事態に警鐘を鳴らし続けている団体がある。猫の保護活動などを行っている(一社)福岡ねこともの会(以下、ねこともの会)だ。

投げ込まれていた包丁の刃

 ねこともの会では、猫の殺処分を減らすことを目標に、地域猫活動を始めとする保護猫の譲渡活動や、動物愛護の啓発活動などを行っている。長年の活動を通して感じた「猫の幸せは、飼い主とともにいること」という思いを胸に、猫1匹1匹に愛情を注いできた。
 しかし昨年9月頃、早良区に住む会員から相談が寄せられた。「猫が死んでいる」と。猫は、ひと月に1回ほどのペースで命を落としていた。川に浮いていた、腹部に大きな傷があった、餌場に包丁の刀が投げ込まれていた――。事態を警察に相談したものの、その反応は良いものではなかったという。「たかが猫でしょ、と思われているように感じた」と、ねこともの会代表の城さんは悔し気に語っていた。
 会はこの事件をきっかけに、Facebookを通じて情報発信を開始、投稿には生々しい現場写真が添えられていた。

監視カメラと不審な人物

 筆者は城さんに誘われ、10月28日に舞鶴公園で開催された「どうぶつ愛護フェスティバル in ふくおか」 に参加した。晴天に恵まれた会場は、ペットを連れた人たちで賑わいをみせていた。幸せそうに飼い主に甘えるペットや、「STAFF」の首輪をつけた犬がお利口に店先でお座りしている様子など、その場にいるだけで心癒される気分になる。しかし、ブースを見ていくと、「殺処分」「虐待」「動物愛護」など、「可愛い」だけではない動物たちの現状を訴える言葉が並んでいた。

 「命を軽視している。たかが猫ではなく、1つの命と考えてほしい」。城さんは真剣なまなざしで訴える。「猫は、喜びも悲しみもわかる生き物なんです。感情ある命を人が奪ってはいけない。命を粗末すると、自分に返ってくると思っています」。動物をストレスのはけ口とする人がいる現実、命が失われても社会の関心は薄いままだった。

 被害を受けて、餌場に監視カメラを設置するなど会員たちは警戒を強めていた。そのなかで、カメラに不審な人物の姿が映されていたというが、実際に犯行におよぶ姿ではないことから、警察側は証拠にはならないと見ているという。
 「被害にあった猫は、人懐っこいいい子ばかりなんです。その子たちがどんな思いで死んでいったのかと考えると…」と、話を聞きながら、あまりの内容に筆者も憤りを感じざるを得なかった。

新たな飼い主を待つ子猫
ブースでは様々なグッズが販売されていた

「小さな命を守る社会になってほしい」

カレンダーの表紙を飾る海くんは、首から下が動かない

 動物の幸せとはなんだろうか?少なくとも、痛み苦しみながら生を終えることではないはずだ。

 取材後、ねこともの会が販売しているというチャリティカレンダーをいただいた。表紙を飾る猫はとても愛らしく、虐待を受け、首から下の自由を奪われてしまった猫だとは誰も思わないだろう。カレンダーの印刷・発送は障がいのある方々に依頼しているといい、「猫助けと人助け両方をしてます」と城さんは笑う。売上は去勢手術費用などに充てられるとのこと。せめて何かできればと、カレンダー代金を募金させていただいた。

 「小さな命を見守ってくれる優しい社会になってほしい」。切実な願いが届く日はいつだろうか?動物を取り巻く厳しい現実は今も続いている。

※クリックで拡大

■(一社) 福岡ねこともの会
URL:http://qwer.jp/fnekotomonokai/index.html
チャリティカレンダー販売:http://qwer.jp/fnekotomonokai/calendar.html
 

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