2024年03月30日( 土 )

【豊洲市場訴訟】東京都が豊洲市場の鉄筋量不足41%を法廷で認めた!(5)

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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏

法廷での争いの焦点

 裁判長が都側に反論はないかと尋ね、都の代理人は「反論の必要などはない」という趣旨のことを述べていた。都側は、2回目の口頭弁論で裁判所が結審し、次回期日で棄却判決を言い渡す予定だと考えていたようである。しかし、原告は、裁判長から「即時抗告の判断を・・・」と 高裁に回っている即時抗告の扱いがどうなるのか、それを見極める時間が必要という趣旨の発言を引き出すことに成功した。この発言の後、裁判長は再度、都側に反論するのか否かを問うたところ都側代理人は「11月いっぱいで判断する。11月中に反論を出すのか、出さないのか。出す場合は11月中に反論の書面を書く」と答えた。

 原告側は都側の反論と即時抗告の動きを待って次の書面を出すことになる。いずれにしても、原告側は11月1日の結審策動を粉砕することに成功した。そして次の攻防へ進むこととなる。まだ入り口で議論している段階で、裁判所は 建築基準法違反の問題、鉄量が44%不足しているという問題、層間変形角の問題、杭の耐力不足、積載荷重の問題などについての技術的判断は一切行っていない。東京都の主張に技術的な自信があるならば、設計者である日建設計を証人として出頭させ、尋問に答弁させれば済むだけのことである。
 この核心の技術論争にもち込めるか否かが今後の裁判のポイントとなる。武内・藤田両弁護士が述べていたように、行政裁判は裁判の書面のやり取りだけでことが決することはないので、法廷での敵の矛盾、不当性を世に知らしめる法廷外での動きなども非常に重要になると思われる。

 すでに、豊洲新市場は稼働を始めた。築地に残り、営業を続けている宮原さんたち5名の行動に対して、世間では賛否両論の意見があるようだ。しかし、彼らが行動を止めれば、豊洲市場の建物は安全性を確認できない不完全な状態のまま、いつ発生するか分からない巨大地震に怯えながら操業しなくてはならない。市場の労働者や来場者が地震の被害にあった場合、その家族はやりきれないだろう。東京都が除却または是正措置を行えば、その危険性は解消できるのである。東京都や日建設計の体面を優先させている場合ではない。人命こそ最も優先すべきである。もし、このようなことが許されるのであれば、建築行政の破綻に直結することは火を見るよりも明らかである。

(了)

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