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2018年11月08日 07:03

【温泉と健康】日本が誇る温泉資源を健康増進に活用、入浴文化を世界に発信(中)

温泉家 北出 恭子 氏

 ――日本では、レジャー感覚で温泉に行く人が多い一方で、海外ではメディカルスパといわれるように健康増進施設として利用する人が多いと聞いていますが。

温泉家 北出 恭子 氏

 北出 10月20日から9日間、ドイツとオーストリアを視察して、温泉資源をどのように生かしているかを研究してきました。今回は、主に塩の坑道を利用した岩塩坑道療法やラドン坑道療法病院で療法を体験し、その他さまざまな健康保養地で温泉保養・療法を学んできました。

 日本とは違ってドイツの温泉療法は、基本的にドクターの処方せんがなければ入れません。ドクターはその人の症状を診て、適切な温泉地を選び、治療プログラムまで指示します。日本での温泉はまだまだレジャー感覚ですが、大分県の長湯温泉では温泉や自然環境を活用した健康増進プログラムや健康増進施設の整備などを先駆けて取り組んでいます。日本は世界有数の温泉大国ですし、長い入浴文化の歴史をもつ国ですから、娯楽に終わらせずに、もっと健康増進に活用すべきでしょう。

 昔と違って今は、湯治目的で温泉に長期滞在する人は少なくなりましたし、人口減少の影響から温泉に行く人も減っています。環境省の調査によれば、温泉旅館の宿泊者数は、1992年をピークに減り続けていますので、温泉地の旅館は厳しい経営状況を余儀なくされています。後継者や働き手の人材不足も大きな問題です。

 ――良い温泉はどのようにして見極めれば良いのでしょうか?

 北出 基本は泉質です。温泉にはかけ流し式と、循環式の2つがあります。源泉かけ流しは家のお風呂と同じで、浴槽の下に栓をして、注がれた源泉が浴槽を満たして溢れ出ている状態です。循環式は浴槽の下などからお湯を抜いて、フィルターで髪の毛や垢を取り除き、さらに塩素剤を入れて殺菌したお湯を浴槽に戻し再利用する方法です。清掃状態や湯量と入浴人数のバランスによっては不衛生となるため、循環式のほうが衛生を保てるといった場合もあり一概に源泉かけ流しだから良いともいえません。理想は、湯温が適温で源泉が空気に触れずそのまま浴槽に温泉が注がれ、新湯注入量が多く、きちんと清掃状態が保たれているのがベストですね。私の選ぶ基準は、なるべく添加物がなく鮮度の良い“オーガニック”な温泉を選ぶようにしています。食品や化粧品を選ぶ時には、多種多様な商品や情報のなかからなるべく体やお肌に良いものを選ぶ方が多いのではないでしょうか。

 温泉に関してはそこまで気にされていない方がほとんどだと思います。旅館の施設が充実しているかとか、値段が安いなど、なんとなく良さそうだというイメージ、雰囲気で選んでいるのではないでしょうか。もちろん、温泉へ行って気持ち良く娯楽として楽しめるのが一番なのですが、自分自身や家族のために千差万別な泉質や情報のなかから安心安全な温泉を選んでほしいと思います。ちなみに私は化粧品を選ぶように温泉を選び、スキンケアやエステとして利用しています。

 また、温泉旅館で出される食べ物も大事ですね。昔ながらの仕来りのまま画一化された豪華な会席料理のままでは、全国どこの旅館に行っても代わり映えのない食事になってしまいます。山奥の秘湯で冷凍マグロは食べたくないですし、漁師町の旅館でステーキが出されるとガッカリします。やはり、その土地で採れた新鮮で旬の食材や伝統的な郷土料理など、そこでしか味わうことのできない体験をしたいのです。

 ――温泉は日本各地にあることから、観光目的だけでなく地域の健康増進、疾病予防に活用することが期待されています。今後は北出さんの活躍の場が広がりそうですね。

 北出 雨が降って地中に滲み込んだ水が温泉になるまでに平均で50年から100年かかると言われています。温泉は天の恵みであり、循環水なのです。昔は祀りごとの禊に使われたり、聖なる水として病を治したり、戦国武将が傷を癒す湯治に使ったりと、入浴以外にも温泉は私たちの生活になくてはならないありがたい存在として利用されていました。

 今では自然資源である温泉に人間の手が入り、娯楽やビジネスの手段になっていますが、最近では、これをまた昔の温泉のあるべき姿に戻そうという動きもあります。環境省も「新湯治」という言葉を使ってヘルスツーリズム、温泉を健康増進、疾病予防に活用する方向にシフトしています。温泉水の価値が見直され、昔の時代に戻っているのです。こんなに身近な温泉のことを日本人である私たちは知らなすぎるので、もう一度原点回帰し温泉の本質を理解して、楽しみながら活用してほしいですね。そのためには温泉を核とし周辺の自然環境を生かし、地産地消の食、運動、交流、長期滞在させるためのアクティビティなど総合的なプログラム開発や設備も必要になってきます。

(つづく)
【取材・文・構成:吉村 敏】

<プロフィール>
北出 恭子(きたで・きょうこ)

18歳からフリーランスで、数々のテレビ・ラジオ番組でMCに抜擢。CM出演やドラマ・映画出演、モデルやCMソングを歌うなど多方面で活躍。現在は東京を拠点に、温泉タレントとして各局でレギュラー出演中。その傍ら、日本や海外の温泉をめぐり、年間入湯数は300以上。温泉入浴指導員、温泉マイスター、水・温泉ORP評価アドバイザーなど、多数の温泉関連資格を有する。根っからの温泉好きで、その知識と経験を生かし、全国での温泉セミナー講師やイベント出演を始め、女性目線での温泉プロデューサーとして、温浴施設の監修や行政・自治体の地方創生をサポート。肩書きは「温泉家」であり、スプリングラボ合同会社CEOを務める。書籍「九州絶品温泉 ドコ行こ?」。
所属学会など/日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本温泉地域学会会員、日本ヘルスツーリズム振興機構会員、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)“Yu-navi”プロジェクトメンバー、九州温泉道選定委員、山口県観光審議委員など。

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