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2018年11月09日 07:02

【温泉と健康】日本が誇る温泉資源を健康増進に活用、入浴文化を世界に発信(後)

温泉家 北出 恭子 氏

 ――北出さんが代表を務めるスプリングラボでは、産学連携事業にも取り組んでいるとお聞きしましたが。

 北出 弊社と博報堂、東京都市大学、東海大学、(株)APCとの産学連携で「Yu-navi」プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトは、「入浴のシートベルト」を普及することです。交通事故による死者は年間4,000人を切りましたが、入浴死亡事故はそのおよそ5倍にあたる1万9,000人にも上ります。発生時期は冬場が多く、亡くなる方のほとんどが高齢者の方です。先日、救急救命のドクターと話す機会がありました。そのドクターの話では、浴槽での溺死事故は年々増える傾向にあり、このまま高齢化が進めば死亡事故はもっと増えるだろうとのことでした。ですからプロジェクトでは、「入浴事故死者ゼロを目指す」をスローガンに、安全な入浴の仕方を情報発信し、ナビゲートすることが目的なのです。

 具体的には、入浴方法と体調の変化の情報を収集して、得られたデータから適切な入浴方法をプログラムし、個々人に合わせた安全な入浴方法をアドバイスします。事故を防ぐだけでなく、目的に合わせて健康や美容に良い入浴方法を提案することもできます。

 たとえば、入浴するときにウエラブルウォッチなどを付けてもらい、生体データを読み取って分析すれば、適切な入浴方法をフィードバックすることが可能になります。「貴方の血圧はこのレベルにあるので今日の入浴は40℃以下にしてください」などと音声で警告することができるのです。日本には、入浴中または入浴前後で、どういう時が危険なのか、どういう入浴方法だと危ないのか、どういう方が亡くなるリスクが高いのか、といったデータやエビデンスがほとんどないのです。「Yu-navi」プロジェクトの目指すところは、血圧や脈拍などのバイタルデータを大量に集めながらデータ解析と分析を行い、“入浴のシートベルト”の構築を目指しています。自宅のお風呂と温泉での違いも明確になりますし、温泉の泉質による健康効果や美容効果もより科学的・医学的に解明されていくでしょう。

 温泉を利用する際は、その時のメンタル状態や体調に合った温泉を選ぶことも大切です。イライラしがちな方は海辺の温泉を、やる気や活力が欲しい方には山の温泉をおすすめします。高血圧の方は標高1,000m以上の温泉は控えたほうが良いですし、貧血気味や血のめぐりを良くしたい方には標高の高い温泉は最適です。このように体調と自然環境によっても選ぶ温泉は変わってきます。また、敏感肌の方は避けなければならない禁忌の泉質やアトピー性皮膚炎の方に効能が認められている泉質もあります。クスリやサプリメントを選ぶように温泉を選んでいくことが大切なのです。

 ――最後に温泉業界の今後の展望についてお聞かせください。

 北出 日本はこのままいけば人口がどんどん減っていくわけですから、インバウンドで外国人旅行者を取り込むコンテンツとしても、日本が誇る温泉資源をもっとうまく活用すべきではないでしょうか。それは、温泉に縁がなかった日本人にも、温泉の素晴らしさを認識してもらう絶好のチャンスだと思います。外国の方は裸のままで温泉に入ることに抵抗感がありタトゥーの問題もあります。あまり知られていませんが、実は日本も江戸時代のころまでは、マナーとして湯帷子(ゆかたびら)という衣類を着て温泉に入る習慣がありました。弊社では、インバウンドや乳がん術後の女性のために現代版の湯浴み着も制作中です。今、温泉業界にとって大きな変革期を迎えていると感じます。今後は日本の温泉文化を守り継承していくとともに新しい文化の創出が求められているのではないでしょうか。

(了)
【取材・文・構成:吉村 敏】

<プロフィール>
北出 恭子(きたで・きょうこ)

18歳からフリーランスで、数々のテレビ・ラジオ番組でMCに抜擢。CM出演やドラマ・映画出演、モデルやCMソングを歌うなど多方面で活躍。現在は東京を拠点に、温泉タレントとして各局でレギュラー出演中。その傍ら、日本や海外の温泉をめぐり、年間入湯数は300以上。温泉入浴指導員、温泉マイスター、水・温泉ORP評価アドバイザーなど、多数の温泉関連資格を有する。根っからの温泉好きで、その知識と経験を生かし、全国での温泉セミナー講師やイベント出演を始め、女性目線での温泉プロデューサーとして、温浴施設の監修や行政・自治体の地方創生をサポート。肩書きは「温泉家」であり、スプリングラボ合同会社CEOを務める。書籍「九州絶品温泉 ドコ行こ?」。
所属学会など/日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本温泉地域学会会員、日本ヘルスツーリズム振興機構会員、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)“Yu-navi”プロジェクトメンバー、九州温泉道選定委員、山口県観光審議委員など。

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