2022年06月29日( 水 )
by データ・マックス

最も重要な任務は九州の人々を「災害から守る」こと

国土交通省九州地方整備局長 伊勢田 敏 氏

 九州ではここ数年、熊本地震や福岡県北部豪雨、西日本豪雨などの大規模災害が相次ぎ、国民の生命、財産が脅かされ続けている。被災地の復旧復興は、被災自治体だけでなく、国家を挙げて取り組むべき最優先事項であることに異論はない。その一方で、もはや“いつ”“どこで”発生するかわからない「想定外」の災害に対する備えも、決して疎かにはできない。復旧復興、備えを進めるうえで、大きな意味をもつのが社会インフラだ。今年7月、国土交通省九州地方整備局のトップに伊勢田敏氏が就任。九州のインフラ整備のグランドデザイン、地域建設業のあり方などについて、同氏に話を聞いた。

復旧・復興はこれからが本番

 ――九州の印象、イメージはどのようなものでしょうか?九州管内での最重要課題を1つ挙げるとすれば、何でしょうか?

国土交通省九州地方整備局長
伊勢田 敏 氏

 伊勢田 九州は、豊かな自然、地域資源に恵まれており、アジアのゲートウェイとして、日本のなかでもとくに活力のある地域だと感じています。一方で九州は、2年前の熊本地震、昨年の九州北部豪雨、本年7月の西日本豪雨と、立て続けに災害に見舞われています。また、火山活動、南海トラフ巨大地震にともなう大津波など、地形、気象などの自然条件から、ほかの地域と比べて多様な災害リスクが存在しています。

 このため、九州地方整備局(以下、九地整)の最も重要な任務は、災害から九州の皆さまの生命と財産を守ることであり、そのために安全・安心を支える社会資本を構築し、しっかりと管理していくことが何よりも大事であると考えています。

 熊本地震や九州北部豪雨からの復旧・復興はこれからが本番です。現地には復興事務所や出張所を設置し、体制を整えてきております。今後も気を引き締めて、1日も早い復旧・復興が実現できるよう先頭に立って全力で取り組んでまいります。

 また、安全・安心の確保とともに、明日の九州をすばらしいものにするための基盤づくりを進めていくことも、九地整の大切な役割です。これからも社会資本の整備・活用などを通じて、九州の産業発展、観光振興に寄与できるよう努めてまいります。

縦貫系、横断系のミッシングリンクの早期解消へ

 ――インフラ整備での「守り」と「攻め」のバランスについて、どのように考えていますか?

 伊勢田 九州の高規格幹線道路は、約1,500kmのうち約80%は供用中ですが、残る240kmについて、ミッシングリンクが存在しています。とくに鹿児島県と宮崎県の縦貫系、九州中央部の横断系のミッシングにより、主要都市間を結ぶ広域道路ネットワークが途絶え、道路ストックの整備効果の浸透が限定的となっています。

 一方で、全国有数の観光地を多数有する九州では、国内観光客と合わせてアジア圏を中心とした外国人観光客の来往が著しく、昨年度は過去最高の外国人入国者数となっています。また、八代港では、「国際旅客船拠点形成港湾」に指定され、世界最大級のクルーズ船(22万t級)も受け入れ可能になりました。

 物流面においても、取扱貨物量が九州1位の博多港において、国際コンテナ取扱貨物量が2010年比で16年は約1.2倍に増加し、大分港では18年に大分~清水港のRORO船の就航が開始されるなど、港湾と高規格幹線道路のストレスない連携が求められています。

 産業面では、北部九州における自動車産業においては、九州各地の工場から調達される部品の安定した流通に高規格幹線道路が寄与しています。

 このように、九州における道路ストックの効果発現や、地域経済を促進する意味において、使いやすさや観光周遊・効率的な物流、産業支援の観点からも、有機的に連携した高規格幹線道路ネットワーク機能や拠点と空港、港、鉄道駅を結ぶ都市圏の円滑な交通のための幹線道路整備などの充実が今後も必要と考えています。

 また、17年7月の福岡、大分両県を襲った九州北部豪雨では、24時間雨量が約1,000mmに達するなど、近年は記録的な大雨が短時間に集中し、道路を始めとした社会インフラに甚大な被害をおよぼしています。また、今後発生が想定される南海トラフ巨大地震発生時には、震度6以上の揺れが九州の全市町村の約25%、東海岸を中心とした範囲で想定されていることから、切迫する気候変動や巨大地震などの影響により、頻発・激甚化が懸念される災害リスクを踏まえ、災害時にも広域的な迂回路として機能する広域道路ネットワークの形成が必要と考えています。

 一方、九地整では、道路延長約2,300kmのうち自動車専用道路約290kmを管理しており、主要な道路施設では約4,500の橋梁、155のトンネルを管理しています。両構造物とも供用年数50年を越えた箇所も多く、橋梁は20年後に60%強になる見込みであり、早期対策は必須の状況です。

 維持管理メンテナンスは、平常時はもちろんのこと、災害時にも機能するような耐災性・補完性を担保するために既存道路の健全性を維持するものであり、健全性の低下を防御しながら推進していく必要があると考えています。

 九地整におけるインフラ整備については、地域においても成長と分配の好循環を実感できるようストック効果を最大限に発揮するため、国土の信頼性の向上に向け、ミッシングリンクの早い解消を目指すと同時に、将来を見据えた維持管理メンテナンスの計画的な展開により、常に機能発揮できるネットワーク、いつでも使える信頼できる道路のサービス提供を目指してまいります。

長時間労働是正、週休2日強化で担い手確保を

 ――地域建設業では、若者の建設離れなどにより、人手不足が慢性化しています。今後の対応などは?

 伊勢田 働き方改革をいかに進めていくかが重要です。建設業の年間労働時間は、全産業平均と比較すると300時間以上の長時間労働となっており、他産業では一般的となっている週休2日も十分に確保されていないというのが現状です。若者を建設業界へ呼び込むためにも、長時間労働の是正や週休2日の導入など建設業の働き方改革を一段と強化する必要があります。

 直轄工事では、長時間労働是正の観点から、受発注者が協力しながら、積極的に週休2日など休日の拡大に取り組んでいます。この取り組みを自治体へと広げていくことが重要であり、平準化などの対策と併せて働きかけていきたいと考えております。公共工事において週休2日の取り組みが拡大することで、市場の6割を占める民間工事での取り組みが進むことを期待しております。

 また、担い手確保という観点から、改正品確法の精神に基づく、企業の適正な利潤の確保も重要です。改正品確法を始めとした担い手3法の取り組みを公共工事のすべての発注者と連携しながら、発注者の責務として実行していきたいと考えております。

【大石 恭正】

<プロフィール>
伊勢田 敏(いせだ さとし)

1962年生まれ、富山県出身。86年早稲田大学大学院理工学研究科修了後、同年建設省入省。道路局有料道路課課長補佐、奈良県土木部道路建設課長、関東地方整備局川崎国道工事事務所長、道路局有料道路課有料道路調整官、東日本高速道路(株)経営企画部次長・経営企画課長、近畿地方整備局道路部長、道路局高速道路課長などを経て、2018年7月より国土交通省九州地方整備局長。

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