2022年06月29日( 水 )
by データ・マックス

正社員と契約社員の待遇格差に注意

岡本 成史 弁護士

 正社員(無期契約労働者)と契約社員(有期契約労働者)との間で、待遇に格差を設けて、契約社員を単に安い労働力として使っていないでしょうか。「労働契約法20条」は、正社員と契約社員との間で、不合理な労働条件の違いを禁止しています。格差の合理性については、(1)職務内容(業務の内容や責任の程度)、(2)職務内容や配置の変更の範囲、(3)そのほかの事情の3要素を考慮して判断することになります。

 物流会社「ハマキョウレックス」の契約社員(トラック運転手)が、正社員と同じ仕事内容であるにもかかわらず、手当の一部が支払われないのは不合理であるとして訴えた訴訟において、最高裁(2018年6月1日判決)は、正社員に支給される無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当の格差は、「不合理」とし、他方、「住宅手当」については、正社員は転居をともなう配転が予定されており、契約社員と比べて住宅にかかる費用が多額となるとして、「不合理とはいえない」と判断しました。

 マスコミなどでも大々的に報道されましたが、注意が必要なのは、正社員と契約社員とで待遇が同じである「均等待遇」を求められているのではなく、職務内容などの違いを考慮して、労働条件が「均衡のとれたもの」であることが求められている(均衡待遇)ということです。とはいうものの、正社員にのみ前記の各諸手当を支給することが不合理であり、違法とされたわけですから、今後の契約社員の労働条件について、改めて検討を要することになります。

 この判例に基づき、今後、どのような対応が必要になってくるでしょうか。
 まず取り組んでいただく必要があるのは、正社員と契約社員に適用される就業規則を別々に作成することです。同一の就業規則を適用することを前提に、規則の一部を契約社員には適用しないという運用にしておくと、労働契約法20条に違反して無効になった部分について、正社員に関して定めた規定が、そのまま契約社員にも適用される可能性があるからです。

 次に、正社員と契約社員との職務内容などの違いを明確にして、それを就業規則などに明記して、その違いがわかるようにしておく必要があります。それぞれに求められる役割を明記するほか、正社員と契約社員の上下関係を明確(「契約社員は、正社員の指示の下に・・・の業務に従事する」など)にし、契約社員には昇進などがないことや、転勤・出向などがないことを明記するなどの対応が必要です。

 さらに、趣旨が不明の手当が存在しないか、本当に必要な手当なのかなどの手当の見直しを行うとともに、正社員にのみ支給する手当については、「なぜ契約社員には払われないのか」という点を改めて検討し、説明ができるようにしていくことが求められます。従前は、「正社員だから」給料が高いということで通っていたものが、今後は、格差の説明ができなければならないということです。

 「改正パートタイム労働法」が2020年4月1日(中小企業は21年4月1日)から施行され、契約社員について前記(1)(2)が同じ場合の均等待遇規定が創設され、また均衡待遇が明確化されます。今後、法に反しない待遇をしていくためには、就業規則など各種規程の見直しが必要になりますので、労働法制に詳しい弁護士に、ぜひご相談ください。

<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士

1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建築紛争審査会会長、経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士/岡本綜合法律事務所 代表

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