わらび座ミュージカル「ジパング青春記」特設ページ
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2018年11月13日 09:15

【シシリー島便り】聖女ルチアの日

 12月13日は「聖女ルチアの日」だ。ルチアはシラクーサ生まれで304年にシラクーサで亡くなった。

 病気の母をもつ彼女は、ディオクレティアヌ帝の時代、隠れキリシタンだった。それを皇帝に告げ口され、人々の前に引き出される。ルチアは脅迫されても、改宗する気はまったくなかった。10人の大男の兵士たちが彼女の体をもち上げようとするも、突然石のように体が重くなり、一歩たりとも動かない。両目をくりぬかれてもまったく動じない。宗教画によく出てくるシーンでは、器に目玉がのっているものが多い。また喉を切り裂かれている様子なども描かれている。

 ラテン語のlux、 luceはluciaルチアの語源だ。殉教した彼女は、キリスト教、ギリシア正教の、光、また目を守る守護聖女として崇められている。カプリ島で青の洞窟に入る際や、ベネチアのゴンドラで、船乗りが歌ってくれるカンツォーネの「サンタ・ルチア」は有名だ。航海が無事に終わるように、光で照らしてもらう、守ってもらうためにルチアに祈るのだ。カラヴァッジョが描いた“ルチアの殉教”はまさにシラクーサにある。横たわるルチアの周りを取り囲む人々。皆嘆いている。罪に問われ、逃亡生活をしていたカラヴァッジョは当時の自身の生活をシンクロさせていたのかもしれず、繊細なタッチが浮き上がっている。オリジナルは、やはり迫力が違う。撮影は一切禁止だが、ぜひ立ち寄ってほしい場所だ。

 シラクーサでは1646年に大飢饉があった。人々は飢えに苦しみ、たくさんの人が亡くなった。ある日、大聖堂でミサを行っていると、ふいに鳥が入ってきて、祭壇の上を飛び回り、まるで何か合図しているようだった。人々が急いで外へでてみると、海の彼方に灯りが見えた。その灯りが少しずつこちらへ近づいてくる。それは、大きな船の上に積まれた大量の穀物だった。そして船の先端には聖女ルチアが立っていたという。ちょうど彼女が亡くなったとされる12月13日の出来事だった。この穀物のおかげで人々は飢えから救われた。そこから、シラクーサでは毎年、ルチアに感謝を込めて、ルチアの祭りが行われる。

 12月13日、パレルモでは朝からバールのショーケースに、大量のアランチーノが並ぶ。アランチーノとは、シチリア名物のライスコロッケのことである。サフランライスの周りに衣をつけて揚げ、外はサクッと、中身はクリーミーでおいしいストリートフードの1つでもある。中身の具も様々で、クラシックなものは、お肉のミンチが入っているか、ハムとチーズの2種類だが、最近ではサーモンやマグロ、ほうれん草、豆類、さらに甘いチョコレートが入っているものなどもあり種類が豊富だ。また、呼び名やかたちもシチリア島のなかでも街によって異なる。パレルモとカターニアの対立はここでも見られるのだ。

 パレルモではアランチーノという男性系の呼び名なのに対して、カターニアではアランチーナという女性系の呼び名になる。だから、バールで注文する際、どちらの言葉を使うかによって、パレルモ人なのか、カターニア人なのか判断される。形もシチリア西側では、ほとんどが大きく丸いかたちをしているのに対して、東側では三角形をしている。エトナ山を表しているという声も聞く。

 オレンジのことをイタリア語でアランチャというが、大きな丸いかたちをしていることから、まるでオレンジのような、という意味でその名前がついたといわれる。起源はイスラム支配下だとされている。シチリア島に米をもち込んだのはアラブ人である。またノルマンの王たちも戦の際にアランチーノをお弁当代わりにもって行ったという。

 パレルモ人が聖女ルチアの日を待ち遠しく思うのは、朝から晩までアランチーノが食べられるからだ。何しろ一日中食べるので、家庭でもバールでも半端ではない量をつくる。家庭では少し小さめに食べやすいようにつくる。味付けも家庭によって異なり、「自分の家のアランチーノが一番おいしい」と言うのはシチリア人として当然の感想だろう。また、その日はパンやパスタなどの小麦類は一切食べないという習慣もある。また、アランチーノ以外にもこの日食べられるものがある。それはクチアという麦を鍋で茹でたシンプルなおやつだ。チョコレートと一緒に食べたり、リコッタクリームと和えたり、こちらもそれぞれの街の習慣、伝統がある。

 カルタニセッタでは、甘いお菓子としてではなく、ひよこ豆をこしたものにオリーブ、塩、胡椒で味付けし、食べる。クチアは12月13日の朝に食べる習慣があるので、前日の夜に下ごしらえをしておく必要がある。

 先日、洪水によりシシリー島は甚大な被害を被った。今年もルチアに祈らなければならないだろう。

<プロフィール>
神島 えりな(かみしま・えりな)

2000年上智大学外国語学部ポルトガル語学科を卒業後、東京の旅行会社に就職。約2年半勤めたのち同社を退職、単身イタリアへ。2003年7月、シシリー島パレルモの旅行会社に就職、現在に至る。

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