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2018年11月20日 07:00

「私たちは、患者さんご家族を援助します」の精神で 安心して頼られる精神科(後) 時代を紡ぐ企業110社 

(医)井口野間病院

抱え込まない精神医療への挑戦

徳山病院(山口県周南市)

 冒頭の高山理事長の言葉は、精神科医療の難しさを象徴している。治療そのものよりも、患者が安心して暮らせる場所を探すことのほうが難しいという現状は、諸外国と比して突出して長い精神科の入院期間にも表れている。

 満足感を抱かせる入院生活と、社会復帰。同院の基本方針にある2大目標をどう実現していくのか、地域医療構想に貢献する徳山病院のこれからも含めて、高山理事長に聞いた。

 ――専門の外科と精神科では、違う部分も多いのでは。

 高山 私が精神科医療に取り組み始めたのは約2年前です。もともとは、がん専門の外科医でしたから、最初に感じたのは精神科医療の閉鎖性だったんです。たとえば、なにか身体に違和感があったら、町のクリニックで診てもらって、必要であれば紹介を受けて大きな病院にいくのが普通です。救急システム1つをとっても、ある程度以上の手術については別の病院に送りますからね。しかし精神科にはそんなシステムがないんです。一言で表現すれば、患者さんを「抱え込まざるを得ない」ということです。精神疾患でも軽症から重症までさまざまで、本来なら公的病院や大病院が重症の患者を担うべきなのですが、そんなシステムがない。だから、あまり実力のない病院でも、受診した患者さんが、たとえ手に負えないとわかっても次につなげられないという状況なんです。当院はこれまで慢性期医療を担ってきましたので、急性期に対するノウハウがあまりなかったんです。それが、現院長の杉原弘治先生と出会ったことがきっかけで、医療面についてはかなり改革が進んできたと思います。

 日本の精神科の入院日数は飛び抜けて長く、当院もかつては1000日程度でしたが、今は慢性期も含めて約200日になりました。急性期については90日以内の退院が可能です。これが実現できて驚いたのは、実は私たちのほうで、「ちゃんと退院させてあげられるんだ」ということです(笑)。

 ――入院日数を短くするためには、地域の受け入れ態勢が必要ですね。

 高山 地域の受け入れ態勢については、1年前から勉強会に参加しています。インフラも含めてどこでどんな取り組みしているのかわかるようになってから、加速度的に地域連携が進んできたと思います。

 福岡市の精神科医療で一番論点になっているのは、18歳までの小児と成人の間に隙間があることなんです。行政では小児を児童福祉課が担当しますが、成人すれば障がい福祉や生活保護などが関係しがちです。市ではこういった問題をセンター化することで一括して診る仕組みを模索しています。

 ――徳山病院は、地域医療の拠点として知られています。

 高山 徳山病院は地域医療構想のなかで動いています。つまり、急性期病院に入院して手術などを受ける基本的な在院日数は14日前後で、その後のリハビリを兼ねる回復期を経て地域にすみやかに返すのが「地域医療」になるのだと思います。

 徳山病院は78床しかありませんが、基本的に入院数は常時55人ほどで、ひと月で患者さんが入れ替わる状態です。患者さんの平均年齢は82歳です。かつては、80代の患者さんであれば3カ月間入院することも普通でしたが、徳山病院では入院時点で退院までのスケジュールを聞き取ります。自宅に戻るのであれば、必要な行政サービスを確保することも含めて、病院が患者さんの窓口になって動く。これが在院日数の短さにつながっているのでしょう。

 今、徳山病院は、いかにして患者さんにおいしい食事を摂ってもらうかについて栄養部を中心に取り組んでいます。同院は来年10月に新たな病院として生まれ変わりますが、それを機に病院外の方にも病院レストランを利用していただき、健康を維持できる食事について広報したいと思います。トレーニングジムも併設しますので、高齢者にとっての筋トレの大切さについても情報発信したいですね。栄養と運動、それぞれ違う場所で管理するより、情報共有することでできることは多いんです。筋トレについては専門家ですから(笑)、徹底的にできると思いますよ。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
理事長:高山 成吉
所在地:福岡市南区寺塚1-3-47
    山口県周南市新宿通1-16(徳山病院)
設 立:1995年11月(井口野間病院)
TEL:092-551-5301
URL:http://www.inokuchinoma.com

<プロフィール>
高山 成吉(たかやま・なりよし)

 北九州市出身。外科専門医、がん治療認定医、乳腺外科専門医、医学博士。緩和ケアや老人医療も専門に、地域密着型医療を提供。(医)周友会徳山病院理事長、(一財)高雄病院理事長など、兼務多数。ボディービルダーとしても数々の大会に参加している。

 

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