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2018年11月25日 07:02

欧州の一流ワイナリーと並ぶ蔵目指し 若き蔵人たちと厳しくも楽しく酒造り(前) 時代を紡ぐ企業110社 

(株)喜多屋

世界的な日本酒ブームで出荷は好調

 2013年、イギリス・ロンドンで開催された世界最大級のワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」のサケ部門で喜多屋の「大吟醸 極醸 喜多屋」が最優秀賞「チャンピオン・サケ」に輝き、日本酒業界にセンセーションを巻き起こした。江戸時代末期の文政年間、福岡県八女という地で創業された老舗地方蔵が世界の蔵として大きく羽ばたいた年だったが、その後も吟醸酒や純米酒などの特定名称酒は需要が伸長。国内・海外輸出ともに好調が続いている。

 そこへさらに嬉しいニュースが加わった。経済産業省の17年度「地域未来牽引企業」に選ばれたのだ。これは地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域経済成長を強く牽引し、その事業を積極的に展開することが期待される企業を選定するもの。全国で2,148社が選ばれたが、喜多屋はIWCで「チャンピオン・サケ」を獲得したことや、それに安住することなく品質向上を追求し続ける企業姿勢が高く評価され、その栄誉に浴した。

 「弊社の取り組みが国に認められ、大変嬉しく誇らしいですね」と木下宏太郎社長。「弊社の技が生きた文字通り極上の酒で最高峰を取りましたが、賞とはその年の酒に対して与えられただけ。ほかの酒も世界一を獲れるよう、日々研鑽を積んでいます。そうしたひたむきさと、好調な売上で地域経済に貢献している点などが考慮されたようです。ただ、酒造りにゴールはありません。『大吟醸 極醸 喜多屋』を超える酒として『燦燦』という糸島産山田錦を33%まで磨いた純米大吟醸を醸すなど、もっと上を目指して酒を造っています」と、情熱をたぎらせる。そんな勢いのある蔵も悩みはある。それは人材をいかに獲得するかという問題だ。

伝統ある蔵でも人材獲得にはひと苦労

 喜多屋の蔵人は、木下社長とベテランの西尾杜氏以外は30歳前後が中心。こうした若い世代が世界をうならせる酒を醸すことができるのは、醸造に関する数値を徹底してデータ化し、技術を共有するというこの蔵の先進的な取り組みがあるからだ。今、現場を支えているのは地元の福岡県立八女工業高校出身者が多いが、そういう取り組みのもとで長年にわたり鍛え上げて醸造部門の中核に育ってきた。

 ところが、工業高校出身者の採用がここ数年、急激に難しくなってきた。背景には景気の回復とともに業種を問わず、さまざまな企業で人手不足が続いている、ということがある。なかでも優秀な県立工業高校出身者は引く手あまただ。喜多屋のような規模の、いわゆる中小企業には来てくれなくなった。大学の新卒も同様。そこで、第二新卒といわれるいったん卒業し、一度どこかに就職したものの、離職して新しい職場を探している若手に狙いを定めているという。

 「今期は第二新卒者を5名採用できました。そのうち2名が女性ですが、バイオ系の専攻で修士号を取っている者もいます。酒造業に期待しているといって入社してくれました。ただ、うちは本来、男女や学歴に関係なく、やる気がある人を採用しています。それでも休日数など福利厚生をもっと充実させないと、なかなか来てくれませんね」。

 酒造業には「発酵」という生物を使った工程があるため休日は少なく、同社も昨年まで年間休日数は95日だった。それを今年は105日に増やし、ゆくゆくは111日にする予定だ。これは今後、定年退職者が続くため、毎年3名程度を採用する必要が出てくるための対策でもある。

 しかし、当面はそれだけ休日が増えるわけではなく休日出勤でカバーせざるを得ない。本当に休めるためには、今の担当工程に加えてもう1つ同じレベルで受け持てる工程を学んで欲しいと伝えたところ、各人のモチベーションがさらに上がって蔵は今、活気づいているという。「お互いをカバーできるように能力を高めていくと、仕事のフィールドは当然広がります。それがやりがいに通じているようです」と木下社長は喜ぶ。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:木下 宏太郎
所在地:福岡県八女市本町374
設 立:1951年1月
資本金:2,000万円
TEL:0943-23-2154
URL:http://www.kitaya.co.jp

<プロフィール>
木下 宏太郎(きのした・こうたろう)

 1962年、福岡県生まれ。東京大学農学部卒業後、宝酒造に入社し営業と製造を担当。92年、(株)喜多屋に入社。99年、代表取締役社長に就任した。小さいころから祖父に連れられて蔵に出入り、祖父や父の背中を見て育つ。二女の父。趣味は写真とゴルフ。

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